第4話「ご苦労様です! 本日の検挙目標、残り二件となります」
やがて、一方的に暴行を働いていた警官たちも満足したようだ。手を止めるとハァハァと息を荒げた。
『今回は初犯ですので、このくらいで保釈致しましょう。ご苦労様です! 本日の検挙目標、残り二件となります』
お面警官たちは一列に並ぶと、マコたちに向かって姿勢を正して敬礼をする。
──バタンッ!
外側から扉が開き、制服警官たちはスタスタと部屋の外へと出て行ってしまう。
「あ……!」
此処から逃げ出すにはチャンスかもしれない。開け放たれた扉に向かって、何人かの同期生が駆け出した。
ところが外側からヌッと手が伸びてきたかと思えば、ドアノブをしっかりと掴んで扉をガチャリと閉めてしまう。扉に辿り着いた同期生が何とか扉を開けられないものかと乱暴に体当たりをするが、既に鍵は締められておりビクともしなかった。
しーんと、部屋の中が静まり返り、重苦しい空気が流れた──。
「足達教官!」
ハッと我に返ったマコは、全身をボコボコに殴られて腫れ上がった足達に駆け寄った。
「う……うぅ……」
「ま、まだ息がある……!」
足達は微かに呼吸をしていた。──しかし、虫の息である。
「だ、誰か! 手を貸して!」
部屋の中に同期生たちに向かって叫ぶが、誰もその場から動こうとしない。
「え……? どうして……?」
マコが困惑していると、同期生の一人がその疑問に答えてくれた。
「教官を手当して、次に奴らの矛先がこちらに向いても困るからね。今は様子を見て、関わり合いにならないのが一番だと思うがね」
「そ、そんな……。それじゃあ、足達教官が死んじゃうわ!」
「お……おい!」
同期生たちはマコの手を止めたかったらしい。それで制服警官の機嫌を損ねることで、自分たちに危害が及ぶのが嫌だったからだ。
ところが、同期生たちの制止を振り切って、マコは足達の介抱を始めた。誰かが「余計なことを」と舌打ちをしたが生命を救うため、マコはそれを無視して応急処置を施すのであった──。
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