勇者断罪物語

#10 2話「優秀な部下ほど、メガネ属性」Part2.5 各地の拠点 ～人類界の海底：フレッシュアワー海峡/第二戦略室～～

【第二戦闘団 / 団長室】の扉には、外出中と札がかかっていた。

常駐幹部兼第二戦闘団の団長を務める彼女は、共有スペース（リラックスルーム）で、勇者産の西洋風家具に座って、優雅に紅茶を啜っている。

青く長い髪は、照明の当たり具合によって、色彩の濃さが変化していき、肩の青い鱗が光を反射する。鱗がある肩を露出した白色のワンピースは、彼女が最も多く着こなすスタイルだ。

理由は単純明快である。・・・好いている男に褒められたからだ。

そんな、ティータイムを満喫している彼女の元へ、秘書が駆け足で寄ってきた。

ゼェゼェと肩で呼吸している。

「騒がしいわね。どうしましたの？」と部下に、紅茶を入れたカップを差し出した。

「ありがとうございます」と秘書は、差し出された紅茶を一気に飲み干した。

ほんのりと、塩を感じる紅茶。

これは、近場の港町で、限定販売されている大変高価な商品である。

‘‘海を楽しめる紅茶‘‘と評価が高い。その製法は、海風をふんだんに浴びて育てるという単純な方法であるが、海風に耐え、無事に店先に並べるのは全体の40％といわれている。

（もっと・・・味わいなさいよ）と一気飲みした秘書に視線を向ける彼女。

「で？要件は何ですの？」

「はぁはぁ、端末に重要！と記載された情報がっ！！僭越ながら、お読みいたします！」

なるほど、それでか・・・と思った彼女は、秘書の報告に聞き耳をたてる。

「・・・・これで、以上です」と秘書が報告を終えた。

「そう・・・・分かりましたわ」とティーカップ内の紅茶を飲み干し、机に置いた。

「皆さんをお呼びしてくれないかしら？」と秘書に指示を出す。

「皆さんとは・・・上級以上の方々でよろしいですか？」と指示の確認を行う秘書。

「ええ・・・・その範囲で十分でしょう。部屋はあなたが用意しなさい？待っているわ」と追加の指示も出す女王様。

秘書は、（あっ、仕事増えた）と聞き返す前の自分に戻りたいと思うのであった。

◇

秘書が退席した為、共有スペース（リラックスルーム）に静けさが戻ってくる。魔鋼壁越しの海底の景色を眺めながら、紅茶を入れ直したティーカップを口へと運んだ。

「そう・・・・。始まるのね」と呟いた言葉が、共有スペースに響くのであった。