#3 1話「え?勇者を何とかしろって?嫌です」Part3

「ありがとうございます。では、最後の三つ・・・・」



「まて。先ほどの二つ目に関してだが、孤児院と言ったか?その施設は、国の制御下にない教育機関の名称ではないか。お前が・・・・指導者か?」



ラガルガは、この国においての基本認識を話している。




この国では教育遵守主義が浸透している。教育と名の付く事柄では、そのルールが尊重され、優先される。


したがって、教育が重宝されており、学校は9割が国運営で1割が民間だ。民間に関しては、年一回の監査によって指導許可証を発行&更新していかなければならない。


つまりは・・・学習機関は国の監視下にあるということだ。




孤児院は、国の監視下にない教育機関である。一般国民は孤児院という施設が存在することを知らない。


いや、国が知らしていない。なぜなら、孤児院で教育を受けているのは、異種族の戦災孤児であるからだ。


4年前の戦争以来、亜人国家群と人類至上主義連盟は対立している。


連盟加盟国であるグリモア王国は、未だ戦争の爪痕が残っている数少ない人類国家だ。異種族への偏見も根強い。



で・・・だ。


最初に戻るが、孤児院とは・・・人類の生息区域から逃げ遅れた異種族に対して、居場所と教育を提供している非承認機関であるということだ。




「もう一度聞く。お前は・・・・孤児院に関わっているのか?」




これは賭けだ。沈黙しているサイトは博打に興じている自分に対して、「ここが、勝負所だ!」と言い聞かせる。




いつまでも、日陰で過ごすことはできない。これを機に国の援助という表舞台への第一歩を踏み出そうと考えたのだ。目の前には、軍の一角を担い貴族の中でも高い階級に位置するブレグジット家の当主。この二つ目の提案には、あるプランが捻じ込まれている。それは、ラガルガの孤児院に対する反応を見ることだ。




スルーするならするで、提案を飲ませれば援助の確約を得られる。問いただされるようであれば、次の反応に期待を込める。正の反応・負の反応どちらに振り切れるか・・・。




概ね、賭けに勝ったと思っていいだろう。ラガルガの口調や言葉の強弱、表情から負の反応は読み取れない。滲み出てもいない。・・・・この問に対する答えが最も重要だ。




「孤児院の指導者は私です」




これでいい。この一言が最も強い。さて・・・どう出る?




「そうか・・・・。君が指導者か」



「どうします?ここで、逮捕でもしますか?」



サイトはそう言うと、両手首を接触した状態で腕を前に差し出す。




「俺を試しているな?安心しろ。そんな権限はない。また、あったとしても実行する必要はない」


確実に賭けに勝利した瞬間である。ラガルガは、正の反応を示した。

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