伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その陸玖
俺が刀一本で魔女教へ突撃すると、仁和はフードの男の攻撃の原理を探るために後方へ下がり、フードの男の観察を始めた。
それを尻目に、俺は強そうな雰囲気を発していた黒髪長髪の、見た目十二歳前後で幼さが残る顔の少女に斬り掛かる。
「なあ君」日本人と思われるその少女は、俺の攻撃を刀で
「俺の一撃をあっさりと相殺した幼女にそんなこと言われたくないんだが!?」
俺はその少女の刀を払いのけ、離れてから相手の出方を窺う。もちろん、エコーロケーションで俺の死角もカバーしている。
「フフフ、面白いな、その
こいつにはエコーロケーションのことがバレているようだ。
衝撃に襲われる。セレナとかいう少女は外見通りの年齢だろうが、口調が男勝りである。俺の攻撃も容易く防いだし、年齢にそぐわない強さを持っている。
それにエリアスの説明が正しいならば、彼女は魔女教最高幹部の序列三位。強そうだから攻撃したが、ここまで強いとは......。
「失礼した。我こそは伊達氏当代の主・伊達政宗なり! 貴殿の強さに敬意を払い、戦いに望ませてもらう!」
「ほお、君が失踪していた当主君か。今までどこに隠れていた?」
「気付いたら洞窟の中にいたんだよ」
すると背後から音もなく短刀が振り下ろされたのをエコーロケーションで察知し、右に
「おかしいな、ちゃんと静かに近づいて殺そうとしたんだけど......。政宗の剥製を作るのが遠のいちゃったな」
カルミラめ。こいつマジで頭狂ってる。発言がやばいだろ。モテるのは男
「仁和! 僧兵に密集隊形で槍を構えさせたらどうだ? そうしたら戦闘が幾分マシになると思うが」
「なるほど、ファランクスの陣形ですか。しかし寺が協力的ではないので、その作戦には無理があると思います!」
「やはりか。俺を拉致したのは寺の奴らだから、協力的ではないだろうな。ならば鎧を用意してくれ。装着している余裕があるかはわからんが!」
「わかりました。政宗殿はそれまで時間を稼いでいてください」
「了解っ!」
空気を読まずに245番の放ってきた球体を刀の側面で受け止める。しかしエリアスでも骨が砕ける可能性があるほどの威力の球体を、刀の側面で完全に受け止められるはずがない。
「マジかよ......」
既視感である。刀の刃は真っ二つに折れた。俺は仕方なく刀を捨て、仁和に新たな刀の用意を付け加えてから、拳を握ってカルミラに狙いを付けた。
「嬉しいわ、私を狙ってくれるなんて。一緒に殺し合いましょう!」
「死んでも御免だ! それよりもテメェの短刀を寄越しやがれっ!」
「あら、私の身体が目当てだったの?」
「テメェの武器が目当てだ、こん畜生!」
カルミラの短刀を奪ってやろうと右腕に力を込めるが、セレナが横から斬り込んできた。それを避けて息を整え、地面に落ちていた石を拾って投擲する。
「当主君、なぜ俺ではなくカルミラに攻撃するんだい? 俺を攻撃してくれよ」
「逆に聞くが、なぜお前を俺が攻撃しなければならない?」
「合理的に考えれば、か弱い者から順に倒すのが定石ではなかろうか?」
「お前がか弱いならば俺は何なんだよ」
頭を抱えそうになる。そうしていると245番は両手で同時に球体を弾いてくるようになり、避ける余裕がなくなってきた。そろそろ一時的に戦線を離脱しようと考えていると、エリアスが俺の前に現れてセレナの攻撃を防ぐ。
「お屋形様の盾は私の役目です!」
「おいエリアス、腕が!」
「すみません、お屋形様。痛覚を麻痺させる薬を打つのに時間が掛かってしまい、参戦するのに遅くなってしまいました。腕は鎧ごと斬られましたが、骨を貫かれていないので致命傷ではありません!」
「ああ、助かる。引き続き防御していてくれ」
「はいっ! それと仁和様から預かった鎧一式と刀をお受け取りください」
エリアスから仁和が用意したと思われる鎧や刀を受け取り、それを装備。俺が鎧を装着するために無防備になるが、その間はエリアスが攻撃を防ぐ。そして刀を鞘から抜くと、エリアスとともに再びセレナやカルミラと斬り合う。
その様子を見ながら、黒いマントを羽織った男は口元を歪めた。そしてマント男は動き出し、245番とともにセレナやカルミラの攻撃の援護を行う。
俺達は圧倒され、エリアスを抱えて背後に飛んだ。セレナ、カルミラ、245番、マント男が徐々に俺達を追い詰めていることに、エヴァやセシリア、そして今回襲撃してきた魔女教の中で唯一何もしていない
エヴァやセシリアは魔女教の中で最高幹部より上の立場らしい。その二人と同じように俺達の戦いを
ということは、魔女教は俺達を倒すために主戦力である魔女三人と最高幹部二人、エヴァの秘蔵っ子実験体一人、正体不明のマント男の計七人が襲撃して来ているということだ。どう見ても過剰戦力だ。何と理不尽な!
脳内で現実逃避をしていると、正体がまだわかっていなかった(エリアスの情報網にもない)マント男がセレナら三人に攻撃を一旦中止するように手で制した。
「まだ自己の紹介を済ませていないのが自分とイザベル様だけになっていたので、
エヴァ様に名乗るように言われている肩書きは確か......魔女教大司教、
そうして0番のマントが広がり、何度か上下に動く。口元からは牙が顔を覗かせている。今までマントだと思っていたのは羽だったのだ。
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