伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その伍玖
その日私は教祖様から暴食の二つ名を賜り、魔女教の中でも最高幹部と言われる''七人の大罪人''のうちの一人である暴食の罪人となる。
ただし魔女教最高幹部・七人の大罪人の中でも当然序列があり、上から
付け加えるならば、七人の大罪人が最高幹部と言ってもさらに上に位置する幹部達もいる。それは''罪人''より格上の''魔女''の格を持つ幹部だ。それが三大原初の魔女と呼ばれる生命の魔女、未来視の魔女、魅惑の魔女である。
罪人格の役職が司教や大司教(大司教は嫉妬の罪人のみ)なのに対し、魔女格の幹部三人はそれぞれ特別な役職を与えられている。魅惑の魔女の役職である統括などがそれだ。
統括とは教祖様が定めた役職で、魔女教の風紀を取り締まって統括するのが役目。人々を魅了させる魅惑の魔女・セシリア様にはぴったりの役職なのだ。適材適所とはこのことである。
また、私のように罪人格の何人かはいずれかの魔女格とともに行動している。それが師弟関係の場合もあれば、両者の仲が険悪だが教祖様の命によって渋々、などの諸事情による場合も存在する。私の場合は師弟関係のそれに近い......と思う。
以前から私はセシリア様の研究を手伝ったり、セシリア様が作った薬を食べたこともあるし、師弟と言えるはずだ。と焦りつつも、セシリア様との会話で印象に残っていることを思い返してみる。
あれはまだセシリア様と知り合ってすぐの頃だった。セシリア様の作る薬の材料を知らなかった当時の私は、セシリア様の研究室の机に置かれていた薬を手に取った。袋から出すと、私は好奇心から薬を食べてしまったのだ。
「あー、我の作った薬を!」
「す、すみません!」
セシリア様はため息をもらし、額に手を当てる。「構わん構わん。カルミラは首斬り役をやっていたのだろう? だからその薬に興味があっても仕方ない」
「へ?」
「何だ? その薬を知らんのか?」
「はい」私は首を横に振った。「知りません」
「首斬り役ならば知っていると思ったが、まさか知らないとは。その薬は
「!?」
「その驚き方からすると、本当に知らなかったんだな。死体を使った薬は日本だけでなく欧州の方でも普通に売られていたから、誰でも知っていると思ったが......悪いことをした。一応カルミラが食べた人丹には甘い味付けをしてあるが、口直しのものを持ってこようか?」
「セシリア様! お気遣いありがたいのですが、その口直しのものも死体を使ってはいないでしょうか!?」
「疑り深い奴だ、まったく。まあ待っとれ」
セシリア様は棚を手探りで漁り、目的のものを見つけて
「セシリア様、その食べ物は何です?」
「これは
私はチョコレートなるものを口に放り込んでみた。確かに甘いが、口の中の水分がなくなって喉が渇いてしまう。及第点というのも納得だ。
「どうだ、微妙な感じだろ? もそもそしているからな」
「わかっていて食べさせたんですか?」
「いや、そうじゃない。チョコレートはそもそも飲み薬だから、本来想定されるべき用途で作ったものも用意しようと思ったんだ。固形チョコレートは失敗作として食べさせたに過ぎん」
そうしてセシリア様は、温めた液体のチョコレートを容器に入れて運んできた。後にホットココアなどと呼ばれるものである。
私はチョコレートを啜る。「固形の時と違い、これならばおいしく口に出来ますね」
「チョコレートは食べ物より飲み物としての形の方が向いているということだ。調理過程をもっと工夫すれば固形のチョコレートもおいしくなるだろうが、それだとコストパフォーマンスが悪すぎる」
「こすとぱふぉーまんす?」
「『コストパフォーマンス』は『費用』みたいな意味の単語だ。これでも我は異人だからな、つい使い慣れた言葉を使う時がある」
「な、なるほど」
このようなことがあり、私は
ちなみに地の文が出しゃばって補足させてもらうと、チョコレートが日本に伝わったのは江戸時代からのようだ。そして、戦国時代にチョコレートを固形菓子にするために試行錯誤する人物は極めて珍しいだろう。当時、チョコレートは飲み物として普及していたから当たり前だ。
セシリアのような者が他にもいるとは考えられないが、彼女は断じて転生者や転移者の類いでは断じてない。研究意欲の
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