伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その拾肆
仁和は頭の回転が異常に早いせいか、刀の扱い方も二時間から三時間くらいで上達してきた。俺なんか、二年くらいでやっとまともに刀が扱えるようになったんだけど、悔しいな。
「よし。これで俺が教えることはなくなったぞ」
「ありがとうございます」
俺は城内に戻ると、一休みするために部屋に入って床に腰を下ろした。今日は
体の疲れを回復させるにしても、今は眠くはない。だったら、遊んでみよう。と言っても、戦国時代の遊びは限られている。カルタとかは飽きちゃったから、久々に将棋でも指すか。じゃあ、小十郎を──。
「そうか、神辺は......」
俺は景頼と成実と愛姫を呼んで、将棋の対局を始めた。俺は愛姫と対局だ。
愛姫もある程度は将棋の駒の動き方を理解したようだ。駒の動き方が書かれた紙を見ずとも将棋が指せるようになった。
「愛姫もなかなかうまくなったな」
「政宗様が以前から将棋を教えてくださったからです」
「将棋のやり方とかは教えたけど、やっぱり勝ち抜く力を磨くには詰め将棋が一番なんだけど」
「政宗様、詰め将棋とは何ですか?」
俺は成実に聞こえないように声を潜めた。「詰め将棋は江戸時代の初期に現れたから、この時代にはないんだ。詰め将棋ってのは、簡単に言えば将棋のパズルだ」
「私、詰め将棋やってみたいです!」
この時代に詰め将棋はないから、景頼なら詰め将棋の本を持ってるかな。
「詰め将棋か。景頼は詰め将棋の本とか持ってるか?」
「いや、蔵書は全て燃えてしまったので......」
本もないし、詰め将棋を知っている者もいない。なら、何個か詰め将棋を作ってみるか。
「愛姫、ちょっと待ってろ。詰め将棋の問題を持ってくるから」
前世でも詰め将棋を作ったことはある。簡単な詰め将棋しか作れないけど、愛姫のために一個とか二個くらいは作ろう。
まずは愛姫は初心者だから、三手詰めとかは良いな。それと五手詰めも。
俺は筆の先を墨に
「ほら、愛姫。これが詰め将棋だ。連続王手で、最短で相手方を詰ませるんだ。ルールは将棋とほとんど変わらない」
「これが詰め将棋ですか」
「まずは三手詰めから解いてみたらいい」
下のが三手詰めの配置だ。結構簡単だから、諸君も解いてみるといい。
■配置/玉方
2一角、4四歩、6一金、6二玉、7一金、7三歩、7四銀
■配置/攻方
3一飛、3二銀、5五桂、6五桂、6六香、7二角、7五金、8一銀
■配置/持ち駒
無し
「難しいですね......」
「三手詰めだから、簡単な方だよ。そうやって力をつければ将棋ももっとうまくなるぞ」
愛姫はかなり悩んでいた。頭を抱えて、低く
「最後が違うな。4三銀成だと、
「なるほど、そういうことですか! 面白いですね」
三手詰めは作るのも簡単だし、愛姫は嬉しそうな顔をするから次も作ってあげよう。
「もう一問ある。五手詰めだ。初手が気付きにくいが、それ以外はすごく簡単だ」
「わかりました、やってみます」
五手詰めの配置は下。初手以外は実に簡単になっている。
■配置/玉方
3一金、3二金、4一銀、5一玉、6三銀、7一桂、7二銀
■配置/攻方
2二飛、3四角、5三金
■配置/持ち駒
桂馬
愛姫はまた悩み始めた。すると、対局が終わった成実と景頼が近づいてきて詰め将棋の問題を眺めた。
成実は三手詰めの書かれた紙を持ちあげた。「何ですか、これは?」
「成実は興味あるのか? 将棋パズルみたいなものだ。連続王手で玉方を詰ませるゲーム」
「これは若様が考えた新しい将棋ゲームですね! さすが若様!」
成実は未来人じゃないから仕方がないか。
「まあ、俺が作ったと言えば作った。成実もやるか?」
「はい。私も混ぜてもらいます」
成実は三手詰めをじっくりと観察して、問題を解き始めた。愛姫同様、成実も数分の時間を要してから答えを導き出した。
「5三桂成、同玉、4三桂成ですね」
「おぉ、すごいぞ成実。正解だ」
景頼も真剣に三手詰めを解いていたが、
そうこうしている内に、愛姫は二問目の五手詰めを解いた。
「政宗様、この五手詰めは4三桂打、6一玉、3一桂成、5一玉、6二金打ですよね!」
「正解だ。初手と三手目は王手を掛けつつ、玉将にとどめを刺す金将を補給するためなんだ」
「私、将棋がうまくなった気がします」
三手詰めと五手詰めを解いただけで将棋がうまくなるわけはないが、将棋を指す相手がいない時の暇つぶしに最適だ。俺が暇な時にするゲームなどの中に、詰め将棋も追加しておこう。暇な時は二時間も三時間もやっていられそうだな。
「若様!」
「どうした成実」
「もっと詰め将棋とやらの問題が欲しいです!」
マジですか!? 面倒なんだけど、どうすれば良いんだ!? やだよ? 二桁の手数の詰め将棋なんか作らないからね? ちょ、成実! 許してくれ!
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