伊達政宗、側近の看病は伊達じゃない その漆
「でも、まさか僕が戦国時代に慣れようとしてこっそりやっていた化粧が鉛で出来ていて、それで中毒になっていたとは......」
「俺も、お前が未来人だってわからなければ推理出来なかったよ」
昔の
戦国時代、男が戦に出向く際には顔に白粉をしたりするのが一般的だった。戦で白粉を顔に使った理由は、首を取られて生首にされても、綺麗に見えるようにということらしい。
小十郎は、その戦国の世に適応出来るようにと、こっそり化粧をして馴染んでいくように努力していた。それが返って悪い事態を招いてしまったのだ。俺は小十郎に、今後はあまり白粉を使うことがないように言った。結果、小十郎の体の異常が完治。万事解決した。
四ヶ月後、天正7(1579)年10月。
田村清顕は
愛姫は
成実は俺の祖父で輝宗の父である
何より、愛姫は俺のタイプにドストライクだ。前世でも結婚はしたことがなかったし、少し心臓がバクバク唸っている。可愛い。鼻筋が高く、髪はつやつやの黒色。目や輪郭も整っていて、肌には張りがある。身長は低く、守りたくなる美しさだ。
「愛姫。私が伊達政宗だ」
「私は、愛姫です。よろしくお願いします」
美声だ。高く透き通る声で、聞いていると優しく包み込まれるようだ。彼女に何か用意したいな。宝石とかはいいな、と思う。結婚指輪っぽいし......。渡したことはないのだが。
まずは、小十郎を呼んで二人で会議を始めてみた。
「神辺。まず、一つ尋ねたいことがある」
「な、どうした?」
「愛姫が可愛すぎて、あいつには嘘がつけそうにない。だから、俺と神辺が未来人だって伝えていいか?」
「正気なのか? 秘密を共有する人数は少ない方がいいぞ」
「頼む! このとおりだ!」
俺は小十郎に頭を下げた。平伏し、何度も頼み込んだ。
「......愛姫は見た目からして、江渡弥平とは繫がっていなさそうだし、大丈夫かな」
「いいのか!?」
「ま、仲間が二人だけってのもつまんなくない?」
「ありがとう!」
俺は小十郎とともに、愛姫の前に戻った。
「愛姫。実は俺、未来人なんだ」
「......?」
愛姫は首を傾げていた。
「前世で死んで、伊達政宗として逆行転生したんだ。それは小十郎も同じなんだ」
「未来人、ですか? 失礼ながら、疑うわけではございませんが証拠などはあるでしょうか?」
証拠か。多分、少し先の未来に起こる出来事を言えば信じてもらえるはずだ。少し先か。今は1580年。あれでいいかな。
「8月頃に、織田信長公が重臣・
愛姫は少し腕を組んで考えた。「突飛なことですが、信じましょう。それで、政宗様と小十郎殿は今から何年後の人物なのですか?」
「400年くらい先かな。西暦2000年代から来た。その間に人類ははるかに進歩したよ」
「素晴らしい! 一から百までくわしく聞きたいわ!」
「機会があったら、話そうか」
「二人の前世の名前はなに?」
愛姫ってこう見えて話題をコロコロ変えてくるじゃないか! 意外!
「俺は名坂横久」
「僕は、か、神辺勉と......言います」
愛姫はかなり好奇心
そして、タイムマシンを作り上げて時間旅行をする江渡弥平ら歴史改ざん集団についても話した。奴らの危険性をわからせるため、それは苦労した。
「私もタイムマシンに乗って未来に行きたい!」
「実は、江渡弥平の仲間の牛丸という奴が使っていたタイムマシンならある」
「本当!? 見たい!」
「神辺。いいよな?」
「大丈夫だろ」
俺は牛丸のタイムマシンを保管している場所まで向かって、愛姫に披露した。
「時間旅行の肝は、素粒子より小さい物質だ。素粒子を分解したあとどうするのかまでは、設計図を読むことは出来なかったのが悔しい。時間の実体化とかも、不明瞭な点がかなり多い。タイムマシンの核である太陽の一部は、何らかの方法で太陽を切り出して凝固させている。その技術もわからないし、そもそも太陽に行くのに、21世紀の技術では無理だ。地球との距離は1億4960万キロメートルだ。アポロ11号が辿り着いた月は地球から約38万キロメートしか離れていないが4日程度の日数を要した。だから太陽へは行けないし、近づく前に熱さで死ぬ」
「素粒子って何なの?」
「あ、素粒子は1900年代に明らかになった物質だったか。素粒子ってのは、世界で最小の物質と言われていたものだ。だが、その上を行く小ささの物質がある可能性がある。興奮しないか?」
「それってすごいの?」
数時間説明を重ね、愛姫には江渡弥平の恐ろしさを知らしめることが出来た。今日は結構疲れた。
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