伊達政宗、殺生をするのは伊達じゃない その漆
「小十郎! 江渡弥平の元に行く。景頼も着いてくるように呼びに行け!」
「わかりました!」
現代人なら、戦国時代にはない知識を持っているはずだ。武装して行かなくては、こちらが全滅する恐れがある。火縄銃を三丁ほど用意しよう。足軽なども使った方がいいか? いや、転生者・転移者の情報は大人数に知られてはならない。俺、小十郎、景頼の三人以外には口外不可だと二人にも強く説教しなくてはいけないか。
火縄銃は輝宗に準備してもらうが、見返りに何か必要だな。それは後で考えるとして、早速輝宗に会いに行こう。本丸御殿に向かって走った。
「父上!」
「どうした、政宗」
「凶悪犯罪者の可能性がある人物を発見いたしました。少人数での方がよろしいので、私と小十郎、景頼の三人で戦います。なので、三丁の火縄銃を用意していただけませんか? お礼としては、後日火縄銃の強化版を作ってお見せしましょう」
「火縄銃の強化版だと?」
「はい」
現代の知識を多少は持つ俺だ。現代のピストルくらいなら作れるはずだ。
「強化版とはどんなものだ?」
「作ってからのお楽しみです」
「......わかった。火縄銃三丁を至急用意させる」
「ありがとうございます」
火縄銃の扱い方は覚えている。鉄砲を構えて江渡弥平の家に突っ込んだら、江渡弥平を引っ捕らえればすむな。
輝宗が用意した火縄銃を三丁受け取り、俺は小十郎、景頼と合流。それぞれが火縄銃を一丁持った。火縄銃を背中に掛けると、馬にまたがって城下町に降りた。
江渡弥平の家は、地図で何回も確認した。城下町のはずれに位置している。馬を走らせて進むと、やがて江渡弥平の家が見えてきた。200メートル前で馬を降りると、忍び足で江渡弥平の家に近づいた。俺が手を上げて二人に合図し、一斉に扉を破って家に侵入した。
「手を上げろ!」
俺の声に反応して顔を出してきた人物がいた。
「ど、どのようなご用件で?」
「貴様が江渡弥平か?」
「そうですが......」
「米沢城城主・伊達輝宗公の嫡男、伊達政宗だ! 大人しく投降しろ!」
江渡弥平は手を上げた。
「江渡弥平に聞く! 貴様は未来から来たのか?」
「未来? 何を言っているのですか?」
「江渡弥平! 貴様はいつの時代から来た? 転生者か? 転移者か?」
「まったく身に覚えがないのですが、私が何かしたのでしょうか?」
「とぼけるな! とぼけるのだったら、貴様を連行する!」
「私が何かしたのですか?」
「貴様!」
江渡弥平と十分程度口論を続けた。何も進まないし、段々イライラしてきたな。イラつくから火縄銃をつい発砲してしまった。江渡弥平は飛び上がって奥の部屋へと逃げていった。俺はため息をもらして奥の部屋に踏み込んだ。すると、江渡弥平は椅子に座った。その横にあるボタンを押すと、急に江渡弥平の周囲が薄くなった。
「いいことを教えてやる、伊達政宗。俺は西暦1980年生まれ。未来人だ。未来の方では技術が発達していてな、タイムマシンを作ることに成功した。いつか力を蓄えて、戦国の世を俺が治める!」
江渡弥平は煙のごとく消え去っていった。ってか、1980年生まれなら俺より若いし!
江渡弥平の正体はわかった。転移者と言ってもいいだろう。だが、違うところは自分の意志で時代を行き来出来ることだ。強敵になりそうだ。以後、注意しておこう。
輝宗にはちゃんと、凶悪犯罪者を取り逃がしたことと俺が一任した事件を解決したことを報告しなくてはならない。
「失礼いたします」
「政宗。凶悪犯罪者は捕まえられたか?」
「あと一歩のところで逃げられました」
「そうか......」
「一任された事件は解決出来ました」
「どのような真相だ?」
ここで蛇酒のことを言ってしまえば、部屋を掃除した奴のやったことが無意味なことになる。だから、それは伏せておこう。「蛇が噛んだのです。蛇の持っていた毒で
「そうなのか......」
本丸御殿を出ると、どうやって火縄銃の強化版を作ろうか困ってしまった。鉄砲の知識はまったくない。その場のノリで言ってしまったが、どうしようか。
頑張れば出来る! いっちょ頑張るか! まずは火縄銃の構造が知りたい。小十郎を呼ぼう。
「小十郎! いるか!?」
「お呼びですか、若様」
「火縄銃を構造を知ってから、その強化版を作りたい」
「火縄銃の構造ですか?」
小十郎が集めた鍛治屋にくわしく話しを聞いた俺は、現代のピストルがかなり高度な技術で出来ていることがわかった。だが、再現出来ないわけではない。まあ、現代のピストルほどレベルは上げないつもりだ。そんな高性能なピストルを量産されたら歴史が変わってしまうからな。
「ほー。銃身より長い
「さようです。それだけではなく、かずらも巻き付けてより硬く丈夫にするのです」
「なるほど。面白い仕組みだ。実に参考になるな」
鍛治屋は俺に丁寧に教えてくれた。かなりうまい具合で、俺の頭にも着想が浮かんできた。それからというもの、筆を片手に毎晩設計図を書いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます