現世での再会
勝利だギューちゃん
第1話
夢
寝ている時に見る夢の事だが・・・
それが、夢であると自覚することの出来る夢を、明晰夢と言う。
夢とは、現実世界を離れ、遊ぶことの出来る場所でもある。
でも、所詮は幻、
目覚めれば、儚く消える。
夢の世界で、出会った少女も幻なのだ。
この少女を、僕は知らない。
現実では会ったことがない。
誰かが言ってた。
『夢で知らない人が出てきたら、その人とは前世で会っている』と・・・
その言葉が頭をよぎる。
ある日、現実では出会ったことのない、少女が夢に出る。
まだ、あどけなさが残る年ごろ。
妙に、気になる。
だが、僕は今、同棲をしている。
少しだけ、お姉さん。
でも、来月には正式に籍を入れる。
つまり、婚約者。
楽しみだ。
その昼に、ドアをノックする音がする。
誰だろうと思い、ドアを開ける。
そこには、あの夢の少女が立っていた。
立っていた。
いた。
「えっ、君は?」
「これ、忘れて行ったよ。」
そうして、差し出されるのは、スマホ。
そういや、無かったな。
「生まれ変わっても、そそっかしいね、たっくん」
「たっくん?」
僕の名前は、相田泰道(あいだやすみち)。
どうもじっても、たっくんにはならない。
「あっ、そうだね。今はもう、違っていたね」
「あのう・・・君は?」
「私は、篠原里美。前世で、あなたの恋人だった人です」
何を言うんだ?
この子は・・・
「今の時代は、こうなっているんだね。私たちが恋人だった頃は、考えられなかったね」
わけが、わからない。
「そっか・・・わからなくて、当然だよね。ごめん・・・」
頭を下げられる。
どういうことだろう?
「私と、たっくんは、この時代から50年前に起きた列車事故で、命を落としたの」
「僕と、君だけ?」
「ううん。死者50人は超えたかな・・・」
そういえば、昔そんな大惨事があったと聞く。
「当時、私と君は、まだ高校生だった。しかし・・・」
「しかし?」
「今の、女子高生はハレンチだね」
確かに否めない。
「私たちは共にあの世へ行ったの」
「うん」
「君を含めて、他の人は転生を願った。でも・・・」
「でも?」
「私は、願わなかった。自分でなくなるのは嫌だったから」
「そうなんだ・・・」
ややこしい話だ。
「でも、君の事は見ていたよ、たっくん。転生しても、変わらないんだね」
「もしかしなくても、褒めてないよね?」
「うん。でも、安心しているよ。転生しても、たっくんは、たっくんだって」
もしかして、どっきりか?
そうだよな。
そうあってほしい。
しかし・・・
50年前で、二人称が君だなんて、ある意味ではこの子も、今風だ。
「でも、君を見ていて思ったよ。そろそろ、私を卒業してもいいかなって」
「で?」
「たっくん・・・いいや、泰道さんは婚約者がいるでしょ?」
「まあ」
その瞬間、篠原さんの体が浮く。
「私、泰道さんの子供として、生まれてくるから。」
「えっ?」
「もち、女の子。名前は里美でよろしくね」
消えた。
「なんなんだ?」
そこへ、彼女が来る。
「泰道くん、今、女の子がいたみたいだけど、知り合い?」
「いや、忘れ物届けてくれたんだ」
「親切な子だね。それより出来てたよ」
「まさか・・・」
「うん」
こうのとりさんは、結婚前に赤ちゃんを運んで来てくれた。
そして、8か月後。
正式に結婚した僕たちに、娘が生まれた。
「名前、考えてくれた?」
わが子を抱く、妻となった女性に聞かれる。
「一応・・・」
「何?」
僕は、その名前を言った。
「里美」
現世での再会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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