研鑽のショートショート。

かとうなおき

未練

アオキは死を恐れていた。

死ぬ時よりも、死んだあとのことを考える時。

永遠の無の世界。想像すらできない孤独に怯えていた。


そして、至った結論は

「未練を残して死ぬことで、幽霊になって永遠にこの世を彷徨う」

という、誰も真に受けないオカルトじみた答えだった


が、彼は本気だった。

まず、未練を残すための方法を考えた。

未練とは、死んでも死にきれない、というもの。

つまり、「夢」 だ

「夢」を叶えずに死んでしまったら、それは「未練」に変わる。

アオキの夢は幽霊になることだが、他にも憧れているものはある。

まず全校生徒が憧れている先輩の高崎さんに告白する。

もちろん、大玉砕。

これを重く受け止め自分の無力さを呪いながら死ねば幽霊になれる。


「高崎さん!ずっと前から好きでした!付き合ってください!」

「うん、いいよ。」

「はあ?」

嬉しいのやら嬉しくないのやら、その前になぜオッケーなのか。

アオキの頭は混乱した。

「私、年下がタイプなんだよね。」

思いも寄らない計画の破綻。

「よろしくね、アオキくん!」

だが悪くはない、そう思った。


次は自分と親の金も全部使って宝くじを買うことにした。

これで家族は終わり、「当たっていれば、、」、という未練を残して死んでいける。


当たってしまった。

5億円。

流石にこれは嬉しい。

未練のことなんて吹き飛んで喜んだ。

憧れの人と巨万の富。

最高の人生だ。





その日の夜。

宝くじの噂を聞きつけた強盗によってアオキは殺された。

彼は死に際に思った、

「もっと生きていたかった。」

その未練から彼は幽霊になり永遠とこの世をさまようことになった。

夢は叶った、未練を残して死ぬことができたのだ。

生きたい。という叶わぬ未練を負いながら

永遠の世界で、、、ただ一人、、、。


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