幸せを願うみんなの味方、美少女天使ハッピーエンジェル

地水火風

第1話 美少女天使ハッピーエンジェル

 墓の前で一人の若い男が泣いていた。




「おお、ジュリエットよ、何で死んでしまったんだ。君が居なくてはもう私は生きていけない」




 そう男は嘆くと、懐に持っていた毒薬を飲もうとする。




「ストーップ!」




 静かな墓場に、若い女性の大きな声が響き渡る。




「心配しないで、ジュリエットは死んではいないわ」




 ロミオが声のした方を見ると、女性がいた。


 若い、まだ少女と言ってもいい可愛らしいその女性は、体のラインがはっきりと分かる上着に、ひざ丈のフリルの多用されたスカートと、破廉恥ともいえる恰好をして、胸を張って男の前に立っていた。




「しかし・・・」




 そう男が言うも、ギロリと少女が睨むと余りの迫力に言葉が詰まってしまった。そうしている間に墓石がずれて、中から女性が現れる。




「ジュリエット!」




 男が叫ぶと




「ロミオ!あなたはロミオなの」




 そう女も叫び、男女は涙を流して抱き合う。




「これでもう大丈夫ね。早く逃げて!」




 と謎の少女が言う。




「しかし、自分達が逃げたら両家の争いが」




 ロミオがそこまで言ったところで、少女にドスの効いた声で遮られる。




「うじうじしてんじゃねえよ!おめーがそんなだから、女が苦労するんじゃねえか。黙って逃げりゃあ良いんだよ!あんたらの替え玉の死体ぐらい用意してやるよ」




 そう言って、創造クリエイト、と言うと男女に瓜二つの死体が現れる。




「土塊で創った人形だが、バレるこたあねえ。これで表面上は悲劇の完成だ。それとほら金だ」




 そう言って少女が放り投げた袋の中には金貨がギッシリ詰まっていた。




「あ、あなたはいったい」




 そうジュリエットが聞くと、




「バッドエンドは許さない!美少女天使ハッピーエンジェルよ」




 さっきまでの声とうって変わって、可愛らしい声で言うと、クルリと周り光の粒子となって消えていった。








 とある決闘場で男が死にかけていた。男のそばには親友と思われる男がいる。




「これが、今までの真実だ、これを皆に語ってくれ、頼む、ホレイショー」




 そういうと男は息絶える。




「死ぬな!ハムレット!」




 ホレイショーはそう叫ぶ。しかし、親友はその手の中で毒が回り死んでしまった。




「大丈夫よ!」




 ホレイショーが声のした方を見ると、女性がいた。


 若い、まだ少女と言ってもいい可愛らしいその女性は、体のラインがはっきりと分かる上着に、ひざ丈のフリルの多用されたスカートと、破廉恥ともいえる恰好をして、胸を張って男の前に立っていた。




「みんなまとめて、大蘇生グレートリザレクション」




 そう唱えると、死んだはずのハムレットが生き返り、それどころか王妃、王、その他の死んだはずの者が全員そろっていた。みんな戸惑っている。


 パーンと乾いた音がする。少女の腕に見慣れない黒い金属の塊が握られており、筒状にあった先端から煙が出ている。その先は、先ほど死んでまた生き返った、クローディアス王の方を向いていた。そのクローディアス王の頭には穴が開いていおり、そこから血を吹き出し倒れる。




「事情は知っている人から聞いてね。取りあえず悪はほろんだから。物語も後で人が生き返らなかったとは書いてないから大丈夫よ」




「事情と言ってもどこから説明したらいいんだ」




 戸惑ったハムレットが、少女に聞く




「ああ!寝ぼけたこと言ってんじゃねえぞてめえ。おめえも色々やらかしてるんだろうがよ。命を助けてやったんだ。自分のケツぐらい自分で拭きやがれ!ごたごた抜かしてるともう一度ぶっ殺すぞ!」


 少女がドスの効いた声で言う。




「あ、あなたはいったい」




 そうホレイショーが聞くと、




「バッドエンドは許さない!美少女天使ハッピーエンジェルよ」




 さっきまでの声とうって変わって、可愛らしい声で言うと、クルリと周り光の粒子となって消えていった。








 「僕が馬鹿だった、デズデモーナ」




 そう言って男は自分が殺した女性に口づけをし、自殺をしようとする。




 「ストーップ!」




 若い女性の大きな声が響き渡る。


 男が声のした方を見ると、女性がいた。


 若い、まだ少女と言ってもいい可愛らしいその女性は、体のラインがはっきりと分かる上着に、ひざ丈のフリルの多用されたスカートと、破廉恥ともいえる恰好をして、胸を張って男の前に立っていた。




「蘇生リザレクション」




 そう女性が唱えると、デズデモーナが生き返っていた。




「他の不幸な人たちもちゃんと生き返ったから大丈夫よ」




「イアーゴーはどうなったんだ」




 戸惑いながら男が聞く




「捕まりましたよ」




 少女が答える。




「俺は イアーゴーに騙されたんだ。あいつを殺してやりたい」




 と男が言うと




「ごちゃごちゃうるせえなあ、てめえたしかオセロだったよな。そもそもおめえが騙されなきゃよかったんだろう。殺すなりなんなり自分で後は好きにしろや」




 少女がドスの効いた声で言う。




「あ、あなたはいったい」




 そうデズデモーナが聞くと、




「バッドエンドは許さない!美少女天使ハッピーエンジェルよ」




 さっきまでの声とうって変わって、可愛らしい声で言うと、クルリと周り光の粒子となって消えていった。








 獄中で娘と思われる死体を掲げた老人が悲嘆に暮れている。




「コーディリアよ、わしが馬鹿だった・・・」




「大丈夫よ!」




 老人がが声のした方を見ると、女性がいた。


 若い、まだ少女と言ってもいい可愛らしいその女性は、体のラインがはっきりと分かる上着に、ひざ丈のフリルの多用されたスカートと、破廉恥ともいえる恰好をして、胸を張って男の前に立っていた。




「蘇生リザレクション」




 そう女性が唱えると、コーディリアが生き返っていた。




「私は殺されたはず・・・。まあ父上」




「おお、コーディリア、まだ父と呼んでくれるか」




 二人は抱きしめあう。




「いいところを邪魔して悪いんだけど、姉2人は無事だから、戦争をやり直すよ」




 サラっととんでもないことを言う少女。




 抱きしめあっていた女性と老人の視界がふと変わると、フランス軍の国旗を掲げた軍の中にいた。フランス人たちは、俺たち死んだんじゃなかったけ、と小声で話しているものもいる。ちなみに奇妙な格好をした少女も隣にいる。




 目の前には屈辱の敗戦をしたブリテン軍が構えていて、その中に自分の長女ゴネリルとリーガンがいる




 「良く逃げ出せたものね。でも前より少ない兵でどう勝つつもりなのかしら。今度は間違いなく殺してあげる。」




 ゴネリルがそう挑発する


 そう、フランス軍は生き返った兵で構成されているため数が少ないのだ。




「大丈夫よ!ハッピーガトリングガン!」




 そう少女が唱えると、とても少女が持てるとも思えない、筒のたくさんついた円筒状の金属の塊が、少女の両手に現れる。


 ブーンという聞きなれない大きな音が、少女の両手の鉄の塊から発せられ、回転する筒から光の球が飛んでいく。


 ふと我に帰った時に老人が見たものは、無残に死に絶えたブリテン兵の屍の山だった。




 呆然としてる老人の耳元に少女は口を近づける。




「おい、リア王、分かってんだろうな。お前が耳障りの良い事ばかり信じるからこうなったんだぜ。今回はコーディリアの免じて助けてやったが、二度目無ねえぞ。しっかり見張っているからな。肝に銘じるか、それが耐え切れないなら死ね」




 少女がドスの効いた声で言う。




「あ、あなたはいったい」




 そうコーディリアが聞くと、




「バッドエンドは許さない!美少女天使ハッピーエンジェルよ」




 さっきまでの声とうって変わって、可愛らしい声で言うと、クルリと周り光の粒子となって消えていった。








 一人の若い女性が火刑に処せられようとしていた。女性の名はジャンヌ・ダルク。神の声を聞き、フランスを救おうとした。だが今は敵に捕らえられ魔女として処刑されようとしてる。


 ジャンヌの足元に山のように積まれている薪に、火がともされる




(おお!神よ)




 そうジャンヌが思った瞬間




「大丈夫よ!」




 ジャンヌが声のした方を見ると、女性がいた。


 若い、まだ少女と言ってもいい可愛らしいその女性は、体のラインがはっきりと分かる上着に、ひざ丈のフリルの多用されたスカートと、破廉恥ともいえる恰好をして、胸を張って男の前に立っていた。




 そして十字架にかけられたジャンヌを救い出す。周りを見るとジャンヌを殺そうとした者皆がへらへらと笑っていた。




「いったいこれは」




 女性は戸惑い尋ねる。




「ちょっと、薪の中に煙りを吸うと、とってもハッピーになる葉っぱを入れただけよ。このまま逃げてちょうだい。もうフランスには近寄らない方が良いと思うわ」




 そう少女が告げる。そしてなぜか1人だけ正気でいる司祭に向かう。




「いいか。わざとお前だけ正気にしてやってるんだからよーく聞けよ。てめえが金目当てに変な気起こすから、こんなことになるんだよ。今度変なことしてみろ、ケツの穴から槍突っ込んで、串刺しにしてやるからな」




 少女がドスの効いた声で言う。




「あ、あなたはいったい」




 そうジャンヌが聞くと、




「バッドエンドは許さない!美少女天使ハッピーエンジェルよ」




 さっきまでの声とうって変わって、可愛らしい声で言うと、クルリと周り光の粒子となって消えていった。






 悲劇と思っていた物語がいつの間にかハッピーエンドになっていた。バッドエンドで終わったのに続きが出てハッピーエンドになった。続編が出て前のバッドエンドがなかったことになった。歴史の新解釈が出て悲劇の人物が、実は幸せな人生を送っていた。


 そこには、美少女天使ハッピーエンジェルの活躍があるのかもしれません。彼女は時空や物理、魔法などあらゆる法則を無視して、人々にハッピーエンドを届ける天使なのですから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る