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 そこで目が覚めた。

 布団から顔を出すと、小綺麗なドミトリーの、二段ベッドの柵が目に入る。どこか遠くから、いびつなピアノの音が聞こえる。そういえば、一階のアイリッシュパブの片隅に小柄なアップライトピアノがあったなと思い出す。流れてくるピアノの音色はパーカッシブで極端に強弱のつけられた独特のフレーズで、アドリブはいびつなテーマに回帰していた。私は自分の左手があるのを確かめる。久しぶりにギターを弾きたいな、と思い、私はベッドから降りて、あいも変わらず、非ピアノ的で、そのくせやっぱり、妙に私の体液を揺らす振動の源へ足を向ける。私はもう一度自分の左手があるのを確かめ、右手の親指で、人差し指の先の硬さを確かめる。

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