Swipers
K助
第1話 私立探偵、速見優介
シャー、ジャッ! ジャッ! シャアアアー
前後に軸支された二つの細い車輪が、乗り手の脚力を確実に路面に伝える。
まばらに歩く学生や通勤の人々の傍らを、一台のスポーツ自転車が、気に止まらない速さで走り抜けていく。
青さひしめく空の下、ソメイヨシノの並木道に朝の肌寒さが漂う。誘われるようにときおり見上げる視線。その先に佇む白い群が、すんとした空気を醸しながら、鈴なりの開花を謳歌し始めている。
(やっぱり、今日は自転車にして正解だったな)
黒のスーツに黒のバックパックを背負い、身をかがめながらほぼ一定のピッチでペダルを踏み込む青年。細身の体と、ダークグリーンのヘルメットの流線的なフォルムとが、そのスピードをさらに際立たせる。
青年の名前は速見優介という。
ペダルを漕ぐ両足に自然と力がこもる。自転車がさらに加速する。
(よしっ! この調子なら、あと10分もすれば警察署だ)
自宅のテレビで流れていた今朝のニュースが、速見の心と身体に刷新的な力を与えていた。
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