カンタレラ王国戦

カンタレラ王国 王都 ルータラス


海に面した都の建物は1つを除き全て、白い壁、青い屋根で統一されており、幻想的な風景を作る。そびえ立つ黒い塔が無ければ、都はより美しくなることだろう。


ルータラス王国駐留軍司令部


「港が寂しくなったものだな。」司令アーネストが言う。


「全くです。」司令は、塔の最上階より、空きが目立つ桟橋を見下ろす。


「50隻あった船が今や30隻しかない。白竜など半減している。あちこちから戦力を抽出させておいて蛮族相手に負けて帰ってくるとは。本国も無能な指揮官を寄越したものだな。」


「司令が指揮を執っておられれば勝てたでしょうに。」


「嬉しいことを言ってくれるじゃないか。」アーネストは快活に笑う。


司令はふと海を見やる。いつもと変わらず穏やかな海。海鳥がのんびりと空を飛んでいる。駐留軍に出向させられると聞いたときは、発狂寸前だったが、過酷な出世競争に明け暮れるより一国一城の主として過ごすのも悪くはない。


「ただ、嗜好品が粗悪なのが惜しいな。」本国から支給される軍用タバコに軍用紅茶、軍用コーヒー。軍用と名が付くだけで品質は信じられないほど落ちる。だからといって、まともな店など辺境にない。


「さて、昼食でも摂りに行こう。」この国の料理は海鮮関係ならそこそこ美味しい。捕れる魚の種類も豊富なのでなかなか飽きない。アーネストは長い階段を降り始めようとするが、それは叶わなかった。


「ドゴォーン」爆音が木霊する。


「何事だ!」アーネストが叫ぶ。


「司令、船が!」副官は港を指差す。


司令は窓を覗き込み、信じられない物を目にする。燃え盛る戦列艦。そして、混乱する友軍。


「なっ、何が起こっているのだ!とりあえず白竜を発艦させ…ぬぁっ!」再び爆音に襲われ、司令は腰を抜かす。


「司令!竜母が!」司令はなんとか立ち上がり、再び窓を覗く。


もう友軍は半数以上が沈んでいる。


「なぜだ、我が国の軍は最強ではなかったのか!」アーネストは呟く。


「あれほどの威力の攻撃を受ければ、基地が崩壊します。司令、兵を後退させ市街戦に持ち込みましょう。」副官が提案する。


「あり得ない。我々は選ばれし民族なのだ。我々が負けるなどあっては…」


「司令、しっかりしてください!」副官はアーネストの肩を揺さぶる。


「すまない。何だったか。」


「市街戦に持ち込むのはどうでしょうかと言ったのです。」副官は少し呆れながら言う。


「いい案じゃないか。よしっ!早速兵に…」しかし、決断を下すには遅すぎた。アーネストは基地に籠っていた大半の兵と共にこの世を去った。港で作業をしていた兵は艦砲射撃を受け壊滅。アンゴラス帝国残存部隊は、上陸した戦車隊に降伏した。海上自衛隊第三艦隊群第七艦隊を前に、アンゴラス帝国駐留軍は壊滅したのだった。


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