外交交渉
日本国 首相官邸
「…。では、こちらにサインを。」外交官、天田はサマワ王国外交使節団団長、兼全権大使のリジーに促す。
「分かりました。」リジーは言われた通りサインする。
「これにより、日本とサマワ王国は正式に国交を有することとなります。」天田は言う。
「それでは、早速貿易に関して詰めていきましょう。まず、サマワ王国の地下資源については合同で調査したいと考えております。日本は貴国より、食糧を大量に輸入したいと考えています。そのため、日本はまず肥料、農機具を貴国へ輸出します。そして港湾、交通システム、発電、送電システムを整備致します。」
「整備が終わった後は、何でお支払になるのですか?」リジーは聞く。
「先日ご説明した、家電や自動車を輸出するつもりです。」
「サマワ王国は武器を輸入したいと考えています。許可していただけますでしょうか。」懲罰攻撃に逢い、これからもアンゴラス帝国と敵対していくであろうサマワ王国にとって、日本の優秀な兵器は喉から手が出るほど欲しい。
「それは難しいでしょう。」天田が答える。
「型遅れの物でもかまいません。どうにかなりませんか?自衛隊の駐留は嬉しいですが、我が国は独立国です。自分達の身はある程度自分で守れるようになりたいと考えております。」
「武器は先進技術の塊ですから、不可能です。」
「お願いします。我が国は技術に満ちた武器どころか、剣の製法すら失われているんです。」しばらくやり取りは続き、射程距離500mほどの滑車つきの弓、コンパウンドボウを輸出する事で同意に至った。
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サマワ王国 トランスト港
かつてのアンゴラス帝国軍の軍港は、日本により突貫工事が行われている最中だ。
沖には、建築資材を満載した貨物船、クレーン船がひしめきあっている。サマワ王国の人々は、その様子を眺めている。
「あんなに巨船がいるぜ。どんなものが出来るんだろうな。」男は言う。
「あの物を持ち上げる船なんて、すごいよな。」
「今度、鉄道という物もできるらしい。」
「なんだそりゃ?」
「鉄の長い馬車の様な物だとさ。」
「想像がつかんな。」
「俺もだ。」
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アンゴラス帝国 首都キャルツ 王城
「それでは、二週間後ベラルーシェ教国で開かれる国際会議で調整をした後、大陸軍を動員するということでよろしいですね。」外務相、ケニスは確認する。
「そうだ。他列強を睨んだ動きでないことを、野蛮人に苦戦していることを悟られぬよう伝えてくれ。お前の働きに期待する。」国王は激励する。
「勿体無い御言葉です。必ずや良い結果をお持ち致します。」ケニスは自信ありげな顔で頷く。
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首都キャルツより南200km 港湾都市 デザイル
首都と同じく灰色のレンガでできたこの港湾都市には、帝国の主力たる、大陸軍第一艦隊が駐屯しており、この街の名物である。1000を越える船は帝国の権威を示す。
その内の一つ、最新鋭戦列艦ローレンスにケニスは乗り込む。
「外務相、ケニス様ですね。わたしがこの艦の艦長、そして外務相護衛艦隊の司令を兼任いたしますヒューゴです。よろしくお願いします。」筋骨隆々の男が話しかけてくる。
「ああ、よろしく頼む。」
「見てください、このローレンスの威容を!両弦合わせて150門の砲!この巨体!それに対空魔道砲!他列強国の外交官はこれにびびるに違いありませんな。ハッハッハ…」男は快活に笑うが、ケニスの表情は暗い。
「それは期待せん方がいい。」一部例外はあるものの、基本的に帝国は鎖国政策を執っている。アンゴラス帝国国民の魔力保有量が他国より多いので、優秀な魔導師の血を薄めないためというのが表向きの理由だ。この国の外の現実を知るものは少ない。
「船長、出港用意完了しました。」航海長が報告に来る。
「よし、全艦風魔法の出力を上げろ。出港!」外交相護衛艦隊20隻は、世界一の大国、ベラルーシェ教国に向け大海原を往くのであった。
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