サマワ王国 空中戦 中

サマワ王国より北300km 飛鳥Ⅱ スイートルーム


「おおっ、なんとうまい食事だ。船内食とは思えん。」ルタが料理を誉め讃える。


「この肉の柔らかさがたまらん。王とご相伴に預かった時ですらこんな肉は食べられんかった。」


「ありがとうございます。喜んでいただけて幸いです。」乗組員が礼を言う。そして、食器を片付け出ていく。


ルタは窓の外に目を向ける。


「しかし、この船も灰色の軍艦も巨大なのになんと速いものだ。」魔法なしでこれだけの物を作れる技術力。なんと頼もしく羨ましいものか。


「んっ?」護衛のはずの灰色の船が突然進路を変え始め客船から離れていく。目的地に着いたのかと思いもしたが、まだ陸地は見えない。


「何かあったんだろうか?」疑問に思ったルタは部屋に備え付けられた魔信ではないが魔信のようなもので外交官である天田に問い合わせるのだった。




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サマワ王国 王都


日本よりアンゴラス帝国による攻撃の報がもたらされ、直ちに住民は避難を始めることとなった。しかし、何万といる住民の避難は遅々として進まない。


「陛下、王の間に秘密通路が在ることはご存じのはずです。脱出してください。」宰相が言う。


「肝心な時に逃げて何が王だ!余はここに残る。」死への恐怖など感じさせない毅然とした表情で王、サマワ・ラマタワは言う。


「陛下、こんな時に王を失えばこの国は終わりです。考え直しください。」


「いや、自分で言うのもなんだが、余はこの国の象徴だ。王がアンゴラス帝国に殺されたとなれば必ず仇を討ってくれる。」


「陛下…」


「余は歴代の中で最低の王よの。国のために民を屍兵にしようとしている。」自重気味に王は言う。


「そんなことはありません。陛下は、陛下は…」感極まり宰相は泣き出す。


「この子を頼む。王の血筋を引くものが必要だというのなら、私でなくこの子こそ相応しい。よろしく頼んだぞ。」サマワ・ラマタワは赤子を宰相に渡す。


「かしこまりました。命に代えてもお守りいたします。どうかご無事で。」宰相は秘密通路に向かい走っていく。


「かっこをつけてみたのはいいが、やはり恐いな。」遠くの空に見える百を越える白い点。王の手が恐怖で微かに震える。


「情けない物だ。一国の王たる者が。」サマワ・ラ・マタワは苦笑するのだった。




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「あれは、まさか船なのか?なんて巨大な…」新人竜騎士のジラートが驚愕する。


「あの巨大な筒は、まさか魔道砲なのか?此方を向くぞ!」


「落ち着け!たとえ蛮族が魔道砲を持っていたとしても竜に当たるもの…」隊長が混乱を沈めようと声を張り上げるも言い終わらない内に爆音が響く。


「敵艦発砲!」


「カルヴァがやられた!」


「そんな、飛んでいる物に魔道砲があたるなんて!」


「帝国は最強なんじゃなかったのか!」


「強行突撃態勢をとれ!敵はたった2隻だ。竜の射程距離に届くまで接近する。突撃!」この混乱に加え臨時編成の混成軍であることが、統制を不完全にする。しかしながら、隊列を乱しながらも140騎あまりの白竜は護衛艦に突撃を開始するのだった。

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