憤怒の帝国
アンゴラス 首都キャルツ 内務局
4本の塔に囲まれた巨大な灰色のレンガ造りの建造物。本国、植民地を含め政治を行う内務局である。その最上階の一室で内務局長リジーは書類に判子を押し続けていた。
「全く、1日休暇を取っただけなのにどれだけ書類がたまるんだ。」ため息混じりにリジーが言う。
「どちらへ行かれたのですか?」部下が問いかける。
「劇場だよ。見たい演目があると娘にねだられてね。」にこにこしながら話すリジー。さっきの不機嫌が嘘のようだ。しかし、彼の機嫌は何倍にも増幅されて悪化することとなる。
「局長、局長!大変です!」幹部がノックも無しにドアを開け入ってくる。
「ノックぐらいしたらどうだね。失礼ではないか?」リジーが眉をひそめて言う。
「サマワ王国駐留軍が壊滅!サマワ王国が、独立を宣言しました。」興奮しながら幹部が言う。
「待ちたまえ。サマワ王国の軍は解体されている。奴らにそんな力は無いはずだ!」
「情報部に寄りますと、日本という国が駐留軍を壊滅に追い込んだとのことです。」
「日本?聞いたことあるな。どこでだったか…。」
「新たな召喚地の原住民がそう名乗っております。」部下が言う。
「召喚地?魔法の使えぬ奴らが帝国軍に泥を付けるとでも?魔道生物の仕業ではなかったのか?」リジーは訝しげに幹部を見つめる。
「日本の軍の仕業で間違いはないようです。確度が高い情報です。独立記念式典には、他の衛星国の大使も招待されたようです。出席した者はおりませんが。」
「あたり前だ!軍務局にさっさと鎮圧させるよう伝えろ。帝国に反旗を翻した愚か者がどのような末路を辿るか思い知らせてやれ。」リジーは憤怒の形相を浮かべ言うのだった。
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アンゴラス帝国 軍務局
先の尖った巨大なゴシック様式の双子塔。こここそが、帝国の力の中心たる軍務局である。会議室からは壮麗な首都を一望出来るが、外を見る余裕のある者は部屋にはいない。
「サマワ王国周辺は既に戦力を抽出済みです。これ以上抽出する余裕はないでしょう。侵攻のために大陸軍を動かしては?」軍幹部が言う。
「いや、大陸軍の動員は他列強の緊張を招きかねない。それに我が国の体面もある。新たな召喚地に派遣予定の艦隊は今どうなっている?」局長が問う。
「サマワ王国で合流する予定でしたが、そうもいかなくなりましたのでアミル王国、タスラ王国、植民地ダイナに計475隻が待機しております。」
「それら全てをサマワ王国へ向かわせる。」
「過剰戦力では?」
「既に植民地制圧軍、サマワ王国駐留軍に被害が出ている。念には念をいれた方が良い。」軍務局長は頷きながら言うのだった。
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アミル王国 ルース軍港
「全砲点検完了!異常ありません。」
「風魔法、充填率100%。いつでも出航できます。」
「戦列艦、サーク出港する!」船長が叫ぶ。
船は帆に人工風を受け、ゆっくり加速する。その周辺には100を越える戦列艦が海を切り裂いている。目指すはサマワ王国。帝国に歯向かった愚か者達の国だ。
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