異世界
日本国 首相官邸
「哨戒結果に関する異常事態の報告を開始いたします。」プロジェクターが唯一の光源の暗い部屋の中。防衛省幹部が報告を行う。
「作戦は成功したんだろ?戦死者もゼロ。異常なんてどこにもないではないかっ!」環境相が問い詰める。
「自衛隊は軍隊ではないですので戦死者でなく殉職者ですね。」
「細かいことはどうでもいいっ!さっさと続けんか!」
お前が止めたんだろと言いたくなるのを飲み込み、報告を続ける。
「電波障害は取り敢えず船舶、航空機の航行に重大な影響を及ぼさないということが暫定的に確認できたため、哨戒を再開したのですが、以前はただ海のあったところに島が突如として出現しているというところが5ヵ所も見つかりました。」
「何だとっ!それは軍事施設なのか?」総理が訪ねる。
「いえ、民間人が生活しているようなのです。」
「東南アジアに似たような事をされている国があったな。魔手がとうとう日本に来たのか。」と防衛相。
「そういう訳ではないかと。次の報告と関連性があるかと。食料、及び化石燃料の不足のため大型貨物船に限定し航海の再開が始まった件についてです。全ての貨物船より寄港する港がないと報告がありました」
「どういうことだ?」
「結論から申し上げますと、ユーラシア大陸、オセアニア大陸、その他東南アジア諸国が地理的に消失した可能性があります。他の地域については不明です」
「馬鹿な!」ざわめきが広がる。
「文部科学省からも天体の見え方、僅かながらも重力の変化、そして月の海の地理的変化が報告されています。」
「何が言いたいんだ!」環境相が怒鳴る。
「ここは、地球ではないかもしれません。」
「寝言は寝てから言えっ!」
「ふざけているのか!」
「しかし、月の地形や天体の見え方まで変わるとなると…。」それぞれが落ち着きを取り戻すのに、しばし時間がかかった。荒唐無稽と切り捨てた捕虜の証言の洗い直し。そして、GPSが使えないため哨戒機がうっかり国境線を越えることが決まった。
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日本国 首相官邸 プレスルーム
「総理、ここが地球でないということは、にわかに信じられないのですがもしかして国民を馬鹿にしておられますか。それとも季節外れのエイプリルフールでしょうか?」
「いいえ、科学的根拠及び観測結果に裏付けられた事実です。」
「観測にあたって国境侵犯があったようですが?」
「この星にない国の国境を気にする意味が分かりません。」
「それは結果であって調査の段階で確定していないはずです。」
「GPSの不調により、誤って国境侵犯した結果、元々あった国が確認できなかったということです」
「国境を気にする意味が分からないとおっしゃったではないですか。」
「食料、資源の輸入に関しては、いかがなさるつもりですか?」
「周辺国と接触し輸入いたします。」
「総理、今回自衛隊が攻撃したのは武装勢力ではなく、国なのではないですか?」
「我が国はこちらの住民の集団を国家として承認しておりません。いずれにしても今回攻撃したのは彼らです。」
「定刻になりました。これにて記者会見を終了とさせていただきます。」司会が言う。翌日の朝刊を待たず号外で発表され、一部パニックに陥った集団が警察に逮捕された。しかし、多くの日本国民はなんとかなるだろうと考え、翌日も今日と変わらず会社へ行くのいだった。
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