接触
サマワ王国 より北 25km
曇り空の中を羽ばたく白い竜。暴雨に曝されても危なげなく飛び続ける。その竜に騎乗する竜騎士、トルスは一人愚痴る。
「何で俺の哨戒の当番の日はいつも雨なんだ。」
いつも通りの雨模様と風景。
「んっ?」雨のせいで見にくいが、光が雲の隙間に見えたような気がする。そしてトルスは、兵士の間で流行っている噂を思い出す。白竜より遥かに速く大きい、植民地制圧軍を壊滅させた竜の噂を。その次の瞬間、トルスの意識は絶ち切れた。
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サマワ王国 駐留軍 司令部
駐留軍司令部内は、友軍を迎えるため人が忙しなく行き来している。
「司令、哨戒中の白竜の反応が、魔導探知機より消えたとのことです。」そんな忙しい時に、さらに仕事が増える。
「本当なのか!よりにもよって、こんな時に故障とはに…。また頭痛の種が増える。」
「魔導探知機の故障ならば良いのですが、例の異形の竜と関わりがある可能性も…。」副官が答える。
「念のためだ。戦列艦35、竜母5を反応の消失した海域へ向かわせろ。」
「サマワ王国に残る船が少なすぎるのでは?」
「いや、制圧軍の前例がある。油断せず事にあたる」司令は意を決したように命令を出す。
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サマワ王国より北 25km
「竜だな。」
「竜ですね。」護衛艦いずもの艦橋にて司令と幕僚達は、今さっき、戦闘機の撮った動画を見て囁き合う。帰港し、すぐに出撃となったため、司令の辞表は受理されなかった。
数刻前、未確認の飛行物体の接近が確認された。中国軍の戦闘機かと思われたが、それは白い竜だった。
「どうなっているんだ?」司令が問う。
「さっぱりです。」普段、優秀な幕僚達も今回は首を捻るのだった。
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サマワ王国 トランスト軍港
幾つもの帆船が並ぶ巨大な港。何人もの海兵が出航の用意をしている。
「魔導生物ですって。怖いですね。昔の母が読んでくれた童話を思い出しますよ。」新兵が言う。
「アンゴラス帝国兵がそんなんでどうする。気合いを入れんかっ!気合いを。」上官が喝を入れる。
港から見えるのは、灰色の海と黒い雲だけであった。
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