八丈島上陸作戦 下

八丈島


「司令!異様な形をした物体、多数を発見。」猛烈な速さで近づく鉄の馬車のようなものを認めて言う。


「使える者はファイアーボールを、できぬ者は爆裂魔法を撃ち込め!」


「全隊員に告ぐ。魔方陣展開、一斉射。敵を攻撃せよ。」


赤い炎の玉と衝撃波が敵を襲う。敵の居た場所には砂埃が立ち込め姿が見えなくなった。


「我がアンゴラス帝国の力を思い知ったか、蛮地の異形ども!」


「帝国万歳!」


「帝国万歳!」


司令の言葉に追随するように声が響く。


味方に置いていかれたこともあり、崩壊しかけていた士気が、目の前の敵を片付けたことにより、少し回復し始めたように見えたが…


「土埃の中から敵出現!ダメージがあるように見えません。」


「敵、発砲!」


 敵は信じられないような連射速度で味方を凪ぎ払う。そして、司令は異形の馬車の中に、人が乗っていることに気付く。


「まさか、蛮族がこのような魔法生物を手懐けているのか!くっ!一体どうすれば…」司令が自問している間にも仲間は減っていく。しかし、前進基地とは言え司令に任命されるような人物である。すぐに次の命令を出す。


「属性変更。撃てる奴はサンダーストームを撃て!」


「全軍に伝達。攻撃方法をファイアーボールからサンダーストームへ」


迸る幾筋もの光が車列へと吸い込まれていく。再び土煙に包まれる。


一度目の失敗もあり、歓喜の声は響かず、静寂が辺りを支配する。そして…


「敵健在です。」煙が晴れ、現れた傷一つない敵に部隊は絶望に陥ると思われたが…


「敵、動きません。停止したままです。」


「やったのか?」


「そうだ。俺たちはやったんだ!」


響く部下の声に、司令は自身の策がうまくいったことを実感する。


鋼鉄の装甲は衝撃をも無効化するだろう。しかし電気は通すはず。ならば中にいる敵兵には有効だ。


先頭車が止まったことで、後続車まで動けなくなっているようだ。


「敵の動けん今がチャンスだ!敵に集中攻撃せよ。」


再び幾筋もの光が車列へ向かう。今回は観測のために射撃を中断することなく、光は絶え間なく放たれる。


「後続の敵兵が鉄の馬車より降車し、こちらへ向かってきております。」


「目標を馬車より敵兵へ変更。我々に土を塗ったことを後悔させてやれ!」


「敵兵発砲!我が方の連射性能を遥かに凌駕しています。」


先程と変わらず次々と倒されていく友軍。馬車さえなんとかすればいいと思っていたが、そうも甘くはないようだ。900ほど居た兵はもう200も残っていない。


「後続の敵兵が何か細い筒をこちらへ向けています。司令、念のため退避を!」前方から何か飛んできたかと思うと、次の瞬間、爆音と衝撃波に襲われ、司令の意識は失われたのだった。


司令を失ったアンゴラス帝国軍は、とうとう戦意を喪失し、降伏した。そして137人の兵が捕虜となった。


自衛隊側の死者は陸上、海上併せて243人。


 山に避難した住民1956人の生存は確認されたが、捕虜となった住民は慰み者となった後、殺されていた。その事が反アンゴラス帝国感情に、さらに油を注ぐことになった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る