15日目

 この付近の魔物は、ほとんど金を落とさないことが分かった。

 

「船代どうすんのよ?」

「ここは俺の現代知識が活躍する場面だな」


 俺は船長と交渉を始めた。


「長い船旅をしてると、船員が病気になるだろ。壊血病ってやつ。治療法を教えてやるから船に乗せてくれ」


 ビタミン欠乏症だろう、野菜を食えばいい事くらい知ってる、と船長は言った。


「長期間腐らない保存食の作り方を教えてやる」


 缶詰の作り方くらい知ってる、と船長は言った。


「えっと、あとは……」


 蒸気船の熱効率を上げたいんだがタービンの設計はできるか、と聞かれた。


「いや……」


 航空機、自動車、ダイナマイト、抗生物質、電気……お前の世界にはそういうのがあるんだろ、作り方教えてくれ、と言われた。


「どれも知らない」


 お前その歳まで何やってきたんだ、と呆れられた。

 涙目になる俺の後ろで、クソ女神は爆笑していた。

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