お兄さんとの想い出
勝利だギューちゃん
第1話
子供の頃、近所に不思議なお兄さんが住んでいた。
僕も、よく遊んでもらった。
何をしているか、わからなかった。
「お兄さん、仕事は何?」
「検査員だよ」
そう、答えていた。
まだ、スマホやネットなど、無い時代。
ビデオすら、珍しかった。
ただ、どことなく僕に似ていた・・・
「ねえ、お兄さん。ノストラダムスの予言って、当たるのかな?」
「当たらないよ」
「未来はわかるの?」
「少しね」
「どんなの?」
僕は、興味全部で尋ねた。
「昭和は64年で終わる」
「ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一する」
「ソ連が無くなる」
その時は冗談と思っていたが・・・
いつしか僕も、中学生になり、そのころにはお兄さんは、見かけなくなった。
「また、会えるよ」
最後の言葉がそれだった。
そして、2001年。
21世紀に入る。
ノストラダムスの大予言で、騒がれていたあれば、何だったのか?
第3次世界大戦も起きなかった。
でも、銃声は響いている。
嘆かわしい・・・
そして、僕も歳を重ねる。
僕も、25歳となった。
僕の住んでいたあの場所も、変わり果て面影がない。
お兄さんの住んでいたアパートも、新しく建て替えられた。
人間
過去は美化するもの。
時に、あの時間、あの時に、戻りたくなる。
しかし、現実には実現不可能とされていたものが、発明された。
「タイムマシン」
世間は、こぞって注目した。
これにより、歴史が明らかになった。
しかし、庶民ところか、どんな大富豪でも、買えない値段だ。
やはり、普及するのは、生きている間は無理か・・・
そんな折、僕に仕事の依頼が来る。
「タイムマシンに乗って、昔へ行け」
「いつですか?」
「お前が、子供の頃に住んでいた場所だ」
「どうしてですか?」
「そこで、今のお前が、不自由なく生活できるが、試してこい」
そう言われて旅立った。
過去の自分に会いに・・・
懐かしい光景が、広がっている。
スポーツ新聞が、飛ばされてきた。
一面には、この文字が踊る。
『近鉄バファローズ。30年目で初優勝。西本監督宙に舞う』
1979年だ。
間違いない。
僕は戻ってきたんだ。
「話はつけてある」
上司は言う。
こうして、あの時お兄さんが住んでいたアパートで、暮らすことになる。
「不自由だと思うけど」
大家さんは言った。
生活費の事か?
一応社会人だ。
それとも、このアパートか?
トキワ壮みたいなものだが、やってみたかったんだ。
広場を見ると、子供たちが楽しく遊んでいる。
その中に僕もいる。
つい、懐かしくなり、僕は子供たちのところへ行く。
こうして、遊ぶ中になった。
「お兄さんの、仕事は何?」
子供の頃の僕に問われる。
「検査員だよ」
「検査員?」
「この町の事を、いろいろと調べて報告するんだ」
「大変なんだね」
昔の僕は、目をキラキラさせている。
こんな時代もあったんだな。
「お兄さん、未来はわかる?」
「うん。少しなら予想できるよ」
「教えて」
本来、未来人が過去人に教えてはいけないが、
自分だから、いいだとう。
「国鉄が民営化する」
「南海ホークスと、阪急ブレーブスが、身売りする」
「ドラえもんの道具のいくつかが、現実となる」
昔の僕は、頷いていたが、信用はしていないみたいだ・
そう大変だ。
でも、本当に大変なのはここからだった。
この時代、スマホもネットもない。
ビデオすら、珍しい。
子供の頃、見せてもらえなかった、番組が見れるのは利点。
でも・・・
「大家さんが言った、不自由とは、この事だったのか・・・」
今更ながらに知る。
「せっかくだ、その時代の風俗でも、勉強してこい」
風俗とは、いかがわしい意味ではなく、風習とかの意味だと思うが・・・
この時代に若くても、僕の時代には、おばさん。
それを考えると、行かないが・・・
確かに懐かしくは、あった。
それを、楽しんだ。
僕の子供の時代の方が、生き生きしている気もする。
でも・・・
『すみません。便利な生活に慣れた、自分にはここでの生活は、もう無理です』
お兄さんとの想い出 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます