ぼーっと奴隷してたら、最強になってた?

BoshiBosh

第1話










.....






...............








「....」



暑くなる季節になんとなく部屋の壁に刻んだ傷も8本目。



人生二週目が十数年経ったということか。



剣の稽古やら肉体訓練やってばかりの今生だな。

別にやりたい事も無いし、いいんだが。



.....








............








「今日は選別の日だ!!今までの訓練の成果を見せつけるときデュァァッ!!死力を尽くせェェ!!」

 中年の男が少年たちに向かって叫ぶ。



「「「「ゥァアイッ!!!!」」」」

 まだ下の毛も生え揃っていないようなあどけなさを残した少年達は全力で返事をする。


「.........」


「おいッ!何を見ているッ!!さっさと行けェェ!!」パシッ、パシッパシッ




...見つめすぎてしまったようだ。



「返事はドゥシタ!!返事しやがれぇ!!」パシパシパシッ


「......」


何でか、声が出せない。





....








...........








「生き残っても腕、脚もげたやつ、障害が残りそうなやつは全員殺すぅ!!忘れるヌァァッ!!枠は20ッ!!やれぇぇッ!!」



「「「「ゥァアイッ!!!!」」」」


 

「........」




そうか。選別ってそういうことか。



殺し合いか。





...







...........







「ッそこまでだッ!!......いい戦いだった!!」

 中年の男はニヤニヤしながら辺りを見渡す。



「......」

 地面の砂は血を吸い赤黒く染まり、何人もの少年が横たわり息を引き取っていた。




結構死んでるが、どうでもいいな。





「残ったものは、死体の片付けだ!!それからとど…」


「...」





...ここの生活は楽でいい。

言われた通りにやっていれば、何も考えずに済んで、あっという間に時が経つ。




ところで、何も考えず生きることは果たして生きていると言えるのか?



...まぁいい。




「...」




....






............







「……ろッ!!……らァ起きろォ!!」パシッパシッ

 男は寝ている少年達を鞭で叩き起こす。



「…んだ…なに…」

「…は、やすみのは…」


「.......」



「選別だァァッ!!広場に来ォイッ!」



「「「!!ゥァアイッ!!!」」」



壁の傷からして16,17歳になった辺りか。


何も考えずにいると、あっという間だな。




「...」




......







............








「ここで残ったものが表舞台コロッセオに出る!!枠は10ッ!!やれぇぇえ!!!」



「「「「「ゥァアイッ!!!」」」」」


「.....」




.....







..............






「......」


「ッッそこまでッ!!!........明日からお前らは表舞台コロッセオに向かう!!」


「「「ゥァアイッ!!!」」」


「......」




適当に戦って、死なずに生き残ったか。





「ッゥまぁだ終わりではないッ!死体の片付けだァッ!中途半端に生き残った奴はこ…」


「...」




...所詮この世界も前のと同じで日々同じことを繰り返すだけか。実につまらん。センスの欠片も無い。


まぁ、やることが単純化されている分、何も考えずに過ごしたい俺にはうってつけの環境か。




「─ゥオらあ!さっさと息の根を止め…」

「...」



...前世では、金さえあれば楽しく幸せに暮らせると信じて、若くして起業して、懸命に働き、成功した。


莫大な資産を手に入れ、後は有り余る余生を好き勝手に生きて、楽しく過ごすはずだった。


広大な庭園付きの城みたいにデカい家に住み、おもちゃみたいに高級車を何台もガレージに並べ、厳選した可愛らしいメイド達を従い、毎日うまい飯を食い、好き勝手旅行に行き、数々の絶世の美女の股を札束で開かせ、日替わりで犯した。


だが、そんな日々も楽しいのは最初だけで、すぐに飽きてしまった。



気がついてしまったのだ。

何をやっても所詮人間は、世界は、同じ事を日々繰り返しているだけなんだと。



飯食って糞して寝る。



順番、過程、形はどうであれ、結局やっていることは皆一緒。

質、量が違うだけでやっていることは貧乏も金持ちも同じ。

各々日々同じ事を繰り返していることに気付かないフリ、または都合のいいように解釈して、ただ毎日、意味も無く存在し生きているだけ。



そんな変な悟りを開いてしまった頃、どうせなら人と違うことをやってみたいと思った。今思えば、この世の理から逸れたことをやらねば、抜け出さなければ、という潜在意識があったのだろう。


潜水艦や空母を買ってみたり、ネットで抽選でお金をばら撒いて注目を集めてみたり、大金を払ってゴミみたいな絵画を買ってみたり、宇宙へ行ってみたり、貧困国に行き学校立てたりして偽善活動したり、見知らぬ通行人に自分のケツの穴を広げ、ヒクヒクさせて見せたり、いきなり女子大生の臀部をあらわにし、舐めてみたり、自分のケツの穴の臭いを指に擦り付け、世界一高価なフレグランスの匂いだと言って、見知らぬ綺麗な女性に嗅がせてみせたりと、結局、色々と挑戦してやってみたが、何をやっても満足するどころか虚無感に襲われ、空虚感に苛まれた。人生の彩り、充足感というものに満たされる事はなかった。

......あ、そうそう。自分のケツの穴が放つ臭いを主成分とした世界的な香水ブランドを立ち上げてそれが世界中の女性にヒットした時はちょっとだけにやけたかな。



そんなこんなで有人ドローンに乗り、いつものようにコミケでぎゅうぎゅうに並んで身動き取れない人たちに放尿してたら墜落させれて死んで、何故か違う世界で記憶を残したまま赤子からやり直していた。




だが、生まれ変わった先のこの世界も飯食って糞して寝るだけの同じ仕組みの世界だった。


なぜ似たような世界で生き返らせた?神よ。お前は筋金入り無能だな?


お前は飯食って、糞して寝るだけのシステムの世界しか作れんのか?神ならもっと他の仕組み考えろ。ほんと無能だな。



俺を生き返らせて自己満足に浸ってんだか知らんけど、記憶を消すくらいのことしとけ。無能が。


というか、転生したから初めてまともに思考が働いた。


はぁ...これ以上考えるのもバカバカしい。考えるのはよそう。





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