第2話 崩壊

何が起きてるか一瞬わからなかった。


だって、昨日電話で声を聞いたばっかりだった。


声をかけても無反応。背中から見ても意識がないのはよくわかった。


彼氏のお母さんは首を吊っていた。


睡眠薬の大量摂取での意識の低下による、


自体重が支えられなくなっての窒息死だった。


私より混乱してる彼を、彼の妹たちのケアに回った。


葬儀までの数日間の間に何となくでも把握できたのは、


旦那さんは親戚の人から良くは思われていないということだった。


後日話を聞いたら、半分は事実だが、半分は彼氏のお母さんが


自分に都合のいいように話していた。


それは私自身も聞いたことある内容で、


それは違うんじゃないかと意見したことがあった内容だった。


死人に口なしというのはまさにこのことなんだと理解した。


遺体を前に潰れていた旦那さんを、


親戚の人は罵倒し、蹴り上げ、追い出した。


それをやめてくれと言ったのは、私だった。


遺体といえど本人の前で、また子供たちの前でやめてくれと。


部外者の私が口を挟めるのはこれぐらいしかなかった。


その時、私は娘同然のように可愛がられて気にかけられていたことで、


親戚の方には家族同然の扱いをされた。


葬儀は家族葬にするが、ぜひ出席してくれと言われた。


旦那さんが出席できるようにすることを条件に、了承した。


結果として葬儀は滞りなく進行し、分骨をして終えた。


ありがとうございましたとやつれた表情で、


旦那さんは来てくれた方全員に頭を下げていた。


その日を境にすべてが崩れていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る