第127話 ドラゴンの解体・・・。出来ませんでした。
ギルド長の執務室から出ると、オーロラが言ったようにドアの外でレアナが待機していた。
「ずっとここで待っていたのかい」
「はい、昨日コウさん達が帰ってきたことを伝えた時に、コウさん達を執務室まで案内したらそのまま待機しておくように言われましたから。今回はどういう用件なんでしょう」
レアナは待機するようには言われたものの、訳までは聞かされてなかったらしい。
「ランクアップの手続きをしてほしいんだ。書類は貰ってる」
「おめでとうございます!これで、コウさん達もBランクって、ええっ!全員Aランクですか!」
なんとなくランクアップの依頼を受けていたとは思っていたようだが、まさか全員がAランクに上がるとは思ってなかったらしく、書類を受け取って見たとたんレアナはびっくりする。
「全員Aランクってことはプラチナランクパーティー……。このギルドの中だけじゃなく、リューミナ王国でもギルドマスターがリーダーだった“暁の星”以来ですよ。しかも、Cランクになって1年も経ってないですよね」
「まあ、色々あったんだよ」
レアナの驚く言葉に対して、コウはそう答えるしかなく、少し肩をすくめる。
「すみません。ちょっとAランクですとカードの作成にお時間が掛かりますので、下の酒場か応接室で待っていてもらえますか」
まあ、滅多に作らないカードだろうし、信用度も段違いだから、偽造の面から言っても時間が掛かるのは仕方が無い事だろう。ある程度予想していたことなので、下の酒場で待つことにする。モンスターの換金と言うか解体も頼みたい。
下に降りて、交換所へと行く。
「ほほっ、久し振りじゃな。色々うわさは聞いておるよ。フモウルに卸したように、ドラゴンでも卸してもらえると嬉しいがのう」
そう言って、交換所の初老の男性は期待に目を輝かせてコウ達を見る。
「良いですよ。しかし、取り出せるところがありません。どこか広い場所は無いですかね」
「なんと、本当にドラゴンを倒したのかね。では、裏の倉庫をあけるとしよう」
男は驚くが、直ぐに立ち上がり、裏の倉庫に向かおうとする。それをコウが止める。
「すみません。裏の倉庫でも入りそうにないですね。少なくともどこかである程度解体しない限りは無理だと思います。フモウルの時のドラゴンと比べても10倍以上はありますから」
「はあ?」
交換所の男がポカンとしている。裏の倉庫の大きさはかなりのものだ。リューミナ王国のギルドの中でも最大級を誇る。勿論、余裕をもって作られている。記録にある限りジクスのギルドの倉庫に入りきれないモンスターなど居なかった。
「胴体だけでも50mぐらいあるんですよ。頭から尻尾までだと100mぐらいですかね。まあ、首を切り落としてるんでちょっとは小さくなってますけど。それでも3つに割ってもちょっと厳しいでしょうし……。尻尾は折り曲げるにしても、胴体は半分にする必要がありますね。でも、血の一滴でも貴重なんでしょう?魔石も取り出してないですし、まあ、魔石ぐらいでしたら、場所さえ用意してもらえたら取り出せますけど」
まあ、切った端から切り口をコーティングをしていけば何とかなるかもしれないが、それだと解体時に自分たちが拘束されてしまう。それは面倒くさいという思いがあった。
「そりゃそうじゃが……。すまん。わしの判断ではどうにもならんな。ちょっとギルドマスターに判断を仰ぐからそこの酒場で待っておいてもらえんか」
交換所の男はそう言って心なしか、ふらふらしながら階段を上っていく。
酒場の方で果実水を飲んでいると、レアナがやってきて新しいカードを渡してくれる。
「はあ。正直プラチナランクのカードを、私が渡す事が出来るなんて夢みたいです」
レアナは熱っぽい視線をカードとコウ達に向ける。実際、Aランクの冒険者カードを受付嬢が渡すなんてことはほとんどない。大々的に式典が行われて、ギルドマスターが直々に渡すのが普通だ。こんな酒場でポンと渡すことなんて事は異常だった。ただもう、コウ達の存在自体が異常なので、何か理由があるのだろうと、深く考えないことにしていた。
実際、Aランクにするのは良いものの、ギルドとしてはコウ達は例外措置を多くしているので、あまり公にすると、収拾がつかなくなる恐れがあったため、式典とかをしなかったという訳がある。
要するにあいつらが出来たんなら俺たちも、という者が殺到する恐れがあるのだ。特に身の程知らずな低ランクのものが、一つでもランクを上げようとギルドに陳情する可能性は高い。まだ、コウ達の事を知らない冒険者も多いのだ。
そうこうしていると、オーロラと交換所の男が下に降りてくる。オーロラはそのまま外に出ていった。
「待たせてしまってすまないのう。とりあえず魔石だけ預からせてもらえんか。どうしても無理なら仕方がないが……。場合によっては倉庫を増築する事になるからのう。お前さん方を疑うような感じになるので申し訳ないんじゃが、何も証拠品無しで予算を捻出するのは難しいんじゃよ」
交換所の初老の男性は、そう言って頭を下げてくる。
「別に構いませんよ。ただ、魔石を取り出すにしても、場所が必要ですね。それは用意していただけるんですか」
何も資料もなしに予算を申請することなど、組織としてできないことはコウは重々承知しているので快く承諾する。寧ろギルドマスターの権限で、そういうことも行われることがある、という方がビックリしただろう。
「ああ、勿論じゃとも。兵士たちの演習場を借りるつもりじゃ。ギルドマスターが今話に行っておる。いやとは言わんじゃろう」
男は簡単に魔石が借りられた事に驚く。正直さっきまでは、大変な交渉事をなんで自分に任せるのか、とオーロラを恨んでいたほどだ。最初は自分には絶対無理だと言ったのだが、オーロラは、コウ達は魔石を貸すことなんて気にもしないでしょうから大丈夫、もし失敗したら今度は自分が交渉するわ、と言って男に任せて兵士との交渉に行ってしまった。
自分としては信じられない事に、オーロラの言う通りあっさりとコウ達は承諾した。まるで大して価値が無い物としか思っていないようだった。
実際、男の推測は間違っていない。コウ達は魔石に対して何ら価値を見出してなかったのだから。
後書き
本日初の外伝の方に設定を投稿しました。もし何か疑問があるのでしたら一度見ていただければと思います。ただ、詳細な設定ではありませんので疑問が解決するかどうかは分かりません。もしかしたら、読まない方が面白く感じる事もあるかもしれません。
作者のページからも飛べますが、外伝のアドレスはhttps://kakuyomu.jp/works/16816452220745099981
です。
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