第60話 ダンジョン攻略(最下層ボス戦)
ダンジョンに潜って30日目、遂にコウ達はこのダンジョンのボスのリッチロードがいる部屋の扉の前まで到達した。両開きの巨大な扉だ。表面には意匠の凝らされたレリーフが彫られている。
扉をじっと見ているコウにユキが声をかける。
「遂にこれで終わりですね。感慨深いですか?」
「いや、部屋にボスがいる時間とかが扉に書いてないかな、と思って」
「??」
ユキがコウの言葉の意味が分からず戸惑っている。まあ分からないだろうな。かなりマイナーな都市伝説だし。ユキに教えた覚えもない。
「なんでもない。これまでのデータからリッチロードの戦闘力を算出してくれ」
「戦闘力は推定0.04~0.06。どの魔法を使うかにより大分違いますね」
さすがに最終ボスだけあって、他のモンスターとは桁違いだ。
「まあ、今回は魔法を使わせるつもりはないさ。今まで検証したことの総決算として、最大効力が見込める攻撃で相手をしよう」
一応作戦は事前に練ってある。多分一回目の攻撃で大丈夫だと思うが、予備のプランも打ち合わせ済みである。
サラが扉を開ける。正面にはリッチと違い、豪華なローブをまとい、王冠を頭にのせた骸骨が、豪奢な椅子に座っている。
「よくぞここまで来たとほめてやがががが……」
何か話しかけているようだが、無視して強力な磁場のフィールドを発生させる。そしてそこに、多数の核融合閃光弾を投げ込んだ。
閃光バイザーが眼球を保護するが、それでも目の前が真っ白になり、チリチリするような感覚がある。直ぐにマリーが前面に立ち、その巨大な盾で光の奔流を防ぐ。
10秒後、光が収まった後、玉座のような豪奢な椅子の上に、美しい大きな魔石がポツンと残っていた。
「あたいがいうのもなんだけど、コウって身も蓋もない攻撃をするよな。なんかセリフを言いたかったみたいだけど……」
サラが少し敵に同情したように言う。
「どうせ、復活する敵だ。セリフが聞きたければ、もっと魔法に関して研究が進んでからくればいいじゃないか」
コウとしては不安要因が多く出てきた以上、余計な危険は冒したくなかった。しかもリッチロードは魔法の得意なモンスターなのである。一々前口上を聞く趣味もない。
椅子の後ろには祭壇のようなものがあり、その上に金細工や宝石が散りばめられた豪華な宝箱がある。鍵はかかっているが罠はないようだ。いつもの通りマリーに開けてもらう。
中には宝剣ともいうべき大きな宝石がちりばめられた剣や美しい装飾品、宝石、パッと見何枚かわからないほどの金貨が入っていた。流石はダンジョンボスである。
これから考えると、オーロラはかなりのお金持ちなのだろう。なんで働いてるんだろう?と思ってしまう。
転移の魔法陣に乗って、外へ出る。ほぼ1ヶ月ぶりの地上だ。といっても、大半を宇宙で過ごしてきたコウ達にとっては、何の感慨も湧かない。ただ、魔法陣の近くにいた案内人が驚いた顔をして、どこかへ走っていく。
「確認しましたが、ダンジョン内での時間経過と地上での時間経過、念のために宇宙空間での時間経過に差異は見られませんでした」
ユキがコウ自身も言ったことを忘れていた伝説の検証結果を報告してくる。
「そういや、そういう事も言ったっけ」
「はい、転送に関しての伝説が当たってましたので……」
まあ、他は当たらなかったが、一番致命的な事を避けられたので馬鹿にはできない。もしかしたら岩の中に挟まって抜け出せなくなっていた可能性もあるのだから。
先ほど、どこかへ走っていた案内人が、息を切らせて戻ってくる。
「“幸運の羽”の皆さんで間違いないですよね。直ぐにジクスの冒険者ギルドに来てほしいそうです」
どこかで通信でもしたのか、案内人はそうコウ達に伝える。
「何か起きたのですかね?」
そうコウが案内人に尋ねると。
「何を言っているんですか。“幸運の羽“の皆さんがダンジョンに潜ったまま地上に上がってこないってことで、大騒ぎになってたんですよ。他のパーティーに聞いても地下20階以降の足取りが追えませんでしたし」
「ん? 仮に死んでたとしても自己責任なのでは?」
案内人の説明に疑問を覚えたコウはそう聞く。
「そりゃあ、Dランク以下のパーティーだとそうですよ。それでも、どうなったのかぐらいは気にされますよ。それがCランク、しかもジクスで注目を集めてるパーティーだと、流石に騒がれますよ」
何をのんきなことを言ってるんだという風に案内人は答える。
自分のパーティーは自分で思っている以上に注目されていたらしい。しかし、たかが1ヶ月ほど地上に上がってこなかったぐらいで騒がれるとは思わなかった。
案内人にお礼を言うとお昼過ぎという、今日中にはジクスにはたどり着けない中途半端な時間であったが、直ぐにジクスへ向かってコウ達は出発した。
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