第24話 私は清楚(設定)


 「ちょっと、衝撃的なことを言うよ」

 「うん」

 私、仁堂くんの言葉に覚悟を決める。


 「あのね、他のイカのヤツを見たんだけれど……」

 「きゃぁ、仁堂くんのえっちぃ!」

 私、腕を振り回して仁堂くんを叩いちゃったよ。


 「そういうこと言われると、話せなくなっちゃうだろっ!

 話を聞けよっ!」

 「……はい」

 素直に返事をする私。


 前回の反省もあるけれどね、それ以上に話を聞きたいと思って……。思ってなんか、いないんだからねっ。

 別に、そんなえっちをしたいとかも、思ってないんだからねっ。

 仁堂くんの前で、この姿勢は崩さないわよっ!

 私は清楚なんだからっ!


 とか、頭の中で思っているところに衝撃の一言。

 「まず、イカは交尾をしないんだ」

 「……は?」

 「……しないんだよ」

 教え諭すように、繰り返す仁堂くん。


 いや、それは納得できないぞっ。

 「だって、私、たまご生むんだよね?

 無精卵を生むの?」

 「やーめーろー。

 あおりはニワトリじゃないー」

 「どういうことよ?」

 もう、さっぱり、ぜんぜんわからないわよっ。

 「だから、話しているんだろう?

 あおり、さっきから君、話の腰を折り続けているんだけど。

 聞いてよ!」

 あ、はい、すみませんでした。


 「まずね、僕のこの足だけど……。

 これを使って、精子の入った精莢というのを、あおりの口の周りに置く。

 それで、終わりなんだよ」

 ……それって、どういうこと?


 「置くだけなの?」

 「……うん」

 「それって、気持ちいいの?

 いや、あの……」

 私、言ってしまってから、顔が真っ赤になった気分。

 「あの、気持ちとしても、満たされた感じになれたりするのかな?」

 必死で取り繕う。


 ダメだ、私。

 食い気味なんてもんじゃなく、食い付きまくっているじゃん。

 仁堂くんの前では、清楚でいるっていう姿勢が……。私の設定を、私が崩してどうするんだ。


 そんな私の、頭ん中のぐるぐるに気がつかなげに、仁堂くんは答える。

 「わからないよ。

 したことないし」

 そりゃ、そうかもしれない。


 でも、私、口の周りを撫でられて幸せを感じるかは、自分でもわからないからね。

 仁堂くんだって、「足で撫でたら終了ー」ってだけで、幸せを感じるんもんなんだろうか?


 「仁堂くん、その足、私に触らせたいと思うの?

 で、その足が気持ち良かったりするの?」

 再度聞いてみる。


 「なんかねぇ、切実に、切ないほど思うんだけど、自分でもよくわからないんだ。

 びんびん、だとか、ぎんぎん、だとかもない。足だし。

 それで気持ちいいだろうな、ってのもない。

 ただ、切実に、そうしないといけないという使命感みたいなものだけがあるんだ……」

 仁堂くん、一気に話して、腕組みをする。


 ああ、できるんだね、この身体でも腕組み。

 なんか発見だよ。

 で、表情が作れたら、憮然としているのかもしれないね。


 で、話していて、エロいんだかエロくないんだか、自分でもさっぱりわからない。

 どう清楚でいたらいいのかも、わからなくなってきたよぅ。

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