超克戦記ランスロット~異世界転生したけど無難に一兵卒から人生始めてみました~

業野一生

≪第一部≫一兵卒編

第1話 冒険のはじまり

俺は死んだのか?



目覚めた場所は俺が元いた世界とは全く違う雰囲気の場所だった。



「はて?だが………」



身なりも此方の世界のモノらしい。


派手すぎない雰囲気のピシッとした制服のような代物。


だけど学ランみたいな青春感はないし、かといってスーツのようなノルマへの脅迫観念を迫られる様な雰囲気ではない。


黒い長靴は如何にも蒸せそうな為、乾燥必須だろう。


まぁ非常に生前の俺とは縁の遠い仕事ではありそうなんだがな。


おまけに見た目も10代後半~20代前半位の容姿だ。


しかし子どもの頃の記憶が無い!



「部分的な記憶喪失ですな」



思わず駆け込んでみた町医者にはそう言われた。



「そうなのか………」


「おーい、三等!」



町のど真ん中にある病院の外に出ると軍服っぽい制服着た同年代の男に呼び止められた。



「誰だ、君は?」


「君!?俺は伍長、一応これでも階級上なんだぞ?」


「なっ!?すみません伍長殿!」



流れで俺は深々一礼した。



「まぁ誤差みたいなもんだけどさ……というかその余所余所しい態度一体どうしたんだ?何時ものお前はもう少し図々しい感じだってのに……」



伍長曰く今の俺は余所余所しいそうだ。


そして、気付いた奴等も多いかもしれないが……





\どうやら俺は兵隊らしい/




なら折角だ……ちょっとらしくやってみよう……



「実は記憶喪失であります!」


「な、なんだって!!ッ!ブハハハハ!!!」



伍長は突拍子の無い流れで笑いだした。



(よし……とりあえず掴みは悪くない感じだな)



この流れで俺はとりあえず事情を説明する。



「詰まる所、それで兵舎への帰宅が遅れたと?」


「誠にごめんなさい!」


「まぁ仕方ないさ。でもその様子じゃ手ぶらかぁ……とはいえ待たせ過ぎは皆を心配させる。兵舎に戻ることにしよう」


「了解!」


「処で診断書は貰ったか三等?」


「頂きました!それもあって所持金カッツカツです!」


「まぁ使いの金で診断書だからなぁ……まぁ無いと軍曹の怒りの修正が二発増えちまう」


「必ず一発は頂くんですね」


「診断書のお釣りって思うんだね」


「了解」



どうやら伍長という人物は割りと話が分かるタイプらしい。


逆に軍曹が俺の上司らしいがかなり厳しい人のようだ。


その厳しさを俺は兵舎に戻ってすぐ知ることになる。



バンッ!




「あべしっ!」





ねっとり伝わる拳の重み。


右頬がとっても痛いんだ……



「ふざけた理由で俺達の手間をかけさせやがって!とんだお騒がせ虫だな貴様は!」


「軍曹落ち着いてください!医師がそういってるなら確かかと……」


「事件や魔法が絡んでる可能性もあるんだぞ!落ち着いていられるか!」


「一応一通り上には報告済みです。まぁ町のど真ん中の医者に自分で行ける位なんですし、どっかで頭打った位でしょう」


「ったく!」



兵長なる人物が俺をフォローした。


やたら落ち着いた雰囲気のある女性だ。


逆に軍曹は大体予想通りの筋肉質な中年男性だった。



「平和ボケだな……三族間戦争最大の敵国ギョクザとは停戦してるだけで終わっていないんだぞ!!俺達は他二族に比べれば力もないし、魔力も乏しい!ふとした油断が命取りになるんだからな!」


「誠に申し訳ありません!」


「このッ!」



バンッ!



軍曹は俺を再び殴った。


今度は左頬が痛い。



「両頬が赤くなるまでに支度をしろ!次の任務が来たからな」


「久々に忙しくなるなぁ」



伍長が言った。


彼的には嬉しそうな雰囲気だった。


どうやらこれまで相当暇だったと言うことか。


先程から色々この世界に関する情報も出てるし、一旦はこの流れを大切にしないとな!



「獣人領との国境を守る部隊への補給と変態の護送だ」


「へ……変態?要人じゃなくて?」



立ち上がりながら俺は尋ねた。



「会えば分かる」



軍曹は苦虫を噛み潰したような顔でそう吐き捨てた。


かくして俺の異世界での一兵卒ライフが幕を開けたのだった……


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る