3-2 雷の精霊を求めて
シンキングタイム
――人間よ。血に飢え、力に飢え、時に権力に飢える者よ。
どこからともなく声がする。そんな気がした。
コレカラキメルノは目を開き、辺りを見回した。一面真っ白。
地面はなく、ただこの空間の中で漂っているだけだ。
彼は目をつぶった。
ここが天国か……。余は召されてしまったのだな……。
――人間よ。聞こえているか? 人間よ。
ああ……。余があの時にいち早く彼の胸を刺しておればよかったものを
刺さなかったが故に、勝敗もつかずに終わってしまったのだ……。
――人間よ。私はこの世界の全てを知る女神……。
それにしても余を吹き飛ばしたあの女は誰だ? 暴風を操っていたのは確かだ。
魔法を使えるというのか? 魔法を使える人間は今ではほとんど見当たらなくなったはずだ。ということは強い魔力を持っていたというメラマリィー家の者か?
――人間よ。力を欲しているのか?ならばいいことを教えてやろう。
ちょっと待てよ。メラマリィー家は父が勝利した際に皆殺しに合ったはず……。
生き残りがいたというのか? まさか偉大な父がそんな過失を起こすわけがない。父に聞いてみたい。だが今父はいない……。
――人間よ。聞こえているのか?力ではなく父親を欲しているのか?
父上、今あなたはどこにおられるのですか?私が迷っているときはいつもあなたが道しるべを示してくれた。あなたのおかげでここまでこれたのです。あなたがいなくなった今……。私はなんとか自分の考えを早くまとめることができるよう頑張ってきました。ですが、やはりあなたのようには上手くいかない。それを改めて痛感しているのです。
――人間よ。独白していられると困るのだが。とりあえず私の話を聞いておくれ。
ああ、なんという恥なのでしょう。私は何も達成できなかった。
祖父、父と受け継がれてきた大帝国を守ることができなかった……。
――人間よ。ちょっと。泣かないで。ねえお願い。返事して。
私は……。私は……。
――人間よ。わかった。味方共々湖に転送するからそこで再起を図りなさい。
お父さんはきっと見つかるからね。ヨシヨシ。
あと力は欲しいの?
ううう……。ううう……。死にたくない。死にたくないよう……。
――人間よ。死なないからね。安心して。あんまり来場者には言わないんだけど
ここ天国じゃないからね。
……。
――全然返事してくれないからもう帰すよ。
話聞かずに泣いたのあんたが初めてだからね。一応私女神だからあんた無礼なことしてるのだけど。今日の担当が私で良かったよ。昨日の担当者だったら即地獄行きだろうね。あの神、なぜかイケメンに恨み持ってるからね。何があったんだろうね?
「誰ですか?」ふと彼が顔を上げた。
――あっ。えっ。ああ、うん……。
咳払いする声が聞こえた。
――人間よ。私はこの世界の全てを知る女神。さっきの話は聞いておったか?
「味方共々湖に帰すだとか……。ですかね?」
――なんだ。聞こえていたのなら返事をしなさい。あ、時間だ。
眩い光に照らされ彼の足元が消えていく。
「これからどうすればいいのですか?」
足の付け根まで消えているのを見て慌てふためいた。
――人間よ。近くに精霊がいる祠があるはずだ。それを探しなさい若き皇帝よ。
「わかりました。ありがとうございました!」
彼がお辞儀をした時には胸元まで消えていた。
――人間よ。いやコレカラキメルノよ。私は応援するからね。あの神と違って……。
やがて彼の顔も消え去っていった。
再び皇帝は意識を失った。
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