賢者、モンスター討伐をしてエルフを拾う
「そういえばマギは普通の攻撃魔法は使わないんですか?」
「簡単な火初級魔法の【ファイアーボール】ぐらいなら使えます。ですが、弱いモンスターならともかくグリフォンやワイバーンなんかには通用しませんから」
「マギの魔法なら初級でも全然通じそうな気がしますけどね......」
そういえば勇者パーティーにいた頃は試したこともなかったな。今度機会があったら試してみよう。
2人で談笑していると突然ノアさんの部屋の扉が勢いよく開かれた。
「剣にしか興味のなかったノアが近衛を選んだって本当か!?」
「メイお姉様本当ですよ。ここにいるのが私の近衛マギです」
「ノアお前男の趣味も変わってるな」
お姉様ということは帝国の皇位継承者1位か2位の方か。
「初めましてメイ様。マギと申します。以後お見知り置きを」
「挨拶はきちんとできるみたいで安心したよ。私がノアの姉で皇位継承権第2位メイ•アカリア•アーデストだ」
「挨拶はいいとしてメイお姉様男の趣味が変わってるってどういうことですか」
「いやなぁお前ならもっと剣士です!みたいな男を連れてくると思ってたからな」
「剣なら私が振れますので剣士は要らないんですよね」
「帝国内だとお前に勝つ剣士なんていないし言われてみるとそうかもな」
ノアさんって強いのは知っていたけどそんなに強いのか。それだけ言うとメイさんは出て行った。
後で聞いた話だがメイさん皇帝陛下の内政を手伝うぐらい優秀らしい。
「さてメイお姉様も出て行かれたことですし今日はデートに行きませんか?」
「デートって好き合う男女が一緒に出かけると言うアレですか?」
「そうそれです!少し行ってみたいところがあったんですよね。付き合ってください」
「わかりました」
「では私は着替えて参りますので少し外で待っていてください」
わかりましたとは言ったものの一国のお姫様と平民の俺がデートっていいのか?
俺達はとある森に来ていた。
「あのノアさんデートって街とかに買い物に行くものじゃないんですか?」
「マギはなぜこんな森まで連れてこられてまだデートだと思ってるんですか?あれを倒しに来たんですよ」
少し遠目に巨大な黒い蛇が見える。
「あれは虹蛇ですか?」
「よく知ってますね」
「勇者パーティーの時に一度だけ見たことがあったんですよ」
虹蛇は気まぐれに雨を降らせる巨大な蛇だ。降った雨の後に巨大な虹ができるから虹蛇と呼ばれている。これだけ聞くと一見無害そうに聞こえるが降らせる雨の量が並ではない。それこそ雨だけで村1つを滅ぼすほどだ。
「ノアさんは虹蛇の弱点とかわかりますか?」
「昔の文献では光魔法の【ライジング】を用いて倒したという記録は残っていました」
「光魔法ですか......」
「もしかして苦手でしたか?」
「いえそういうわけでは。ただ少し聖女を思い出してあまりいい気分にはなりません」
「聖女、聖王国の姫ですか。噂によると強力な光属性の治癒系統を使えると聞いたことがあります」
「一度見た【ハイヒール】はちぎれかけた腕を治していました。ノアさんに雇ってもらった俺にはもう関係のない話ですけどね」
「そう言っていただけると嬉しいです。さてサクッとやってしまいましょう」
俺はその言葉を皮切りにノアさんにバフをかけていく。
【プロテクション】
【アンチマジック】
【身体能力強化】
【属性付与光】
【リジェネーション】
「ノアさん付与終わりました!」
「わかりました。今回はマギも少し戦ってみませんか?」
「前にも言いましたが付与以外は本当に使えませんよ」
「そうですか?私の目にはそうは見えませんけど」
「わかりました。ノアさんがそこまでいうなら使ってみます」
そんな話をしていたのも束の間、唐突に女の子の悲鳴が聞こえる。
『きゃぁぁぁぁ』
「人の声!?ここって周りに村があるんですか?」
「いえそんなはずは......。とりあえず急ぎましょう!」
虹蛇の口元に人間らしきものが見えた。
「ノアさんすぐに助けましょう!」
「当たり前です!行きます【裂帛剣】!」
『シュー』という威嚇の声が聞こえる。少しは効いているらしい。
俺も光属性初級魔法で微力ながら援護する。
【ホーリーブレス】
光の柱が虹蛇に向かって降り注ぐ。あれ?昔、勇者パーティーで使った時より光の柱の大きさがおかしいような気がする。
【ホーリーブレス】に当たった虹蛇の巨体が地面に沈む。
「流石マギ。望んだ通りの結果を出してくれますね」
「俺の魔法で倒したんですか......」
俺はにわかには信じがたい光景に唖然とする。
「そんなことより女の子は!?」
「無事ですよ。しかしエルフですね」
エルフか。本来はこんな浅い森の中にいる種族ではないはずなんだけどな。
「とりあえず城まで連れて帰りましょう。目を覚ませば事情もわかるはずです」
「そうですね。虹蛇はどこの部位を持って帰るんですか?」
「確か鱗で大丈夫だったかと」
俺達はエルフと虹蛇の鱗を持って城へ帰ってきたのだった。
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