男女逆転世界なのに追放された天才癒しマネージャー ~今さら野球部に戻ってくださいとギャン泣きされてももう遅い。ぼくにメロメロな最強爆乳美少女たちが、お前らを絶対許さないってマジブチ切れてるんですが?~

ラマンおいどん

第1話 男女逆転世界なのに男マネ追放だなんて

「西神田、お前は今日でマネージャー追放ね。もう野球部に来なくていいから」


 練習が始まる前のミーティングで、西神田敬士はキャプテンから予想だにしない通告を出された。


「え、え、なんでですか? これから夏の甲子園も始まるのに──!?」

「だからよ。お前はマネージャーとして役に立たない。むしろ有害だから」


 三年のキャプテンがマネージャーたちを見回して告げる。


「西神田が癒しマッサージを熱心にしてることは知ってる。けどね、男子にマッサージされるなんてのは選手の体調管理こそ役に立っても、それで強くなるわけじゃないの」


 西神田以外の10人いる男子マネージャーが一斉に頷いた。

 私立聖鷺沼学園高校野球部は、去年の夏、今年の春と甲子園を連覇した高校野球界の超新星だ。

 去年は西神田しかいなかった男マネは、現在11人にまで増えていた。


「西神田が癒しマッサージしている時間、わたしたちの練習時間は奪われてる。しかもお前は主力選手のマッサージばかりする。時には何時間も掛けて入念にな」

「それは、無茶な練習で全身が凝り固まってるから……」

「お前に揉まれた分だけ練習時間が減る。あのなお前、渚の練習時間がどれだけ食われてると思ってるの? 渚を潰されたら、ウチはお終いなんだよ」


 篠宮渚は二年生ながら不動の4番、すでに超高校級スラッガーとして全国に名を轟かせている選手。

 甲子園の連覇も篠宮がいたこそからだと言われている。

 渚は過酷な練習を繰り返し、自分を追い詰めることで成長するタイプの選手だ。


「幸いにして、ウチはもう男子マネージャーも大勢いる。もうすぐ夏の予選も始まる。癒しマッサージしか能のないマネージャーなんかいらない」

「……一つだけ聞かせてください、キャプテン。渚さんたちも今回のことは……」

「当然でしょ。ああ言っておくけど、退部したら二度と渚のことを名前で呼ぶんじゃないぞ? お前はもう野球部の仲間でもなんでもない部外者なんだから」

「…………はい」


 西神田はうちひしがれて部室を出た。

 とぼとぼと去って行く元マネージャーの背中を窓越しに確認して、キャプテンは声のトーンを一段落とす。


「言っておくが西神田を追放したことは、今ここにいない一軍選手には内緒だからな。とくに渚には口が裂けても漏らすんじゃないぞ。おかしな動きをしたヤツも西神田と同じくクビだ」


 監督やキャプテンら首脳陣は知っている。

 聖鷺沼高校野球部には、追放されたマネージャーを強力に擁護する派閥が存在することを。

 しかもそいつらが揃いも揃って、一、二年の、戦力として絶対に必要不可欠な中核メンバーなのだ。


 超高校級スラッガーの篠宮は別格にしても、二年のエース橘、同じく二年で抑えの切り札小石川、二年キャッチャー六郷、それに新進気鋭の一年ショート暁烏……

 どれをとっても超高校級、将来ドラフト上位指名間違いなしの人材だ。

 機嫌を損ねるわけにはいかない。


 そして激しい練習をした彼女らを、マッサージで優しく癒す西神田の存在は、三年や監督たちにとってまさに目の敵だった。

 平等に選手を揉めと言ったキャプテンに、練習量に比例して平等に揉んでいますと返したマネージャーのことが許せなかった。マネージャーにどんどん依存する渚たちを見て腹が立った。

 その結果、後輩にレギュラーを取られた三年を中心にして暗躍した結果が、今回の追放劇である。


 渚たちは今日、新しく学校が作った室内練習場の見学に向かわせている。

 甲子園連覇のおかげで新築された、建設費数億円の最新鋭設備の練習場だ。

 学校側の野球部への期待はとてつもなく重い。

 甲子園の更なる連覇に邪魔な要素は、どんなに小さくても排除しなくてはいけないのだ。



 そしてこの日こそ、私立聖鷺沼学園高校野球部の、終わりの始まりだった──

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