きみの物語になりたい

新吉

第1話 きみの物語をかきたい

 春風ひとつ、想いを揺らして

 午前3時の小さな冒険

 春風ひとつ、小さな冒険

 午前3時の想いを揺らして



 私、春本ねねは女子高生だ。また出会いと別れの季節がやってきた。高校最後の春、つまり卒業。いったい何を卒業するのだろう。この先も続いていくのに。自由なんてどこにでもあってどこにもないのに。なんてね。


 私は運動部には入らない。走るのが好きだけど走り続けたくない。部活として強制されるのは嫌。文芸部で小説を書いている。趣味は本を読むこと、図書館でいちゃつく先輩を横目に見ながら青春したかったなあと思う日々だった。


 お花見の季節が来るとなんでも動き出す。花も虫ももちろん人も、なぜならあったかくなるからだ。不審者情報が入るの。ききたくない話だ。まあでもあたたかい春風に吹かれればどこかへ冒険したくなるのかもしれない。ゆらゆらと。


 深夜目が覚めた私はコンビニに行こうとしてやめた。午前3時の春風はまだ冷たい。ネタ帳を開く。今月の同題異話のタイトルは「きみの物語になりたい」だ。君のことを思い出すタイトルだった。夜中3時にメッセを送る。絶対寝てるだろうと思っていたのに電話がかかってきた。


「ねねちゃん、電話しようぜ」


「ポンさんそれ、一回返信しなよ」


「へーんしん!!」


「違う違う」


「いいじゃん、電話出たんだし…何の用事だい?」


 綿貫春香は私の友達。ちょっとちゃらんぽらんな彼女の物語を書きたい。


「ポンさん、物語の主役にならない?」

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