第2話

友達が欲しいと思ったのはいいが、今までに経験がないからどうすればいいのかわからない、どうせ友達を作るなら最初は気の合う人がいい


とはいっても、「気になる人を見つけて友達になってください」とでも頼んでみればいいだろうだめなら他を当たるし、うまく行くまで何度でもやればいいだろう


というわけで、今日から仲良く出来そうな人を探してみることにした



ーーーーーーーーーーーーーー


昼休み、授業も終わったので、いろいろと校舎を歩き回ってみたがどうもピンと来る人は見つからない


一朝一夕で見つかるものではないと思っていたが、先行きが不安にならないといえば嘘になる


というわけで普段はあまり行かないような場所にも行ってみることにした、骨董品じゃないけど掘り出し物的な逸材がいるかもしれないし


そんなこんなで旧校舎や体育倉庫なんかにも行ってみたが、誰も見つからなかった


そろそろ昼休みもおわるので体育倉庫から帰ろうとしていたら何やら声が聞こえてきた


「・・す・・した・つき・・って・・だい」


なにを言ってるかは聞き取れなかったが考えたらここは体育館と校舎の間から少し外れたところで死角になっている。こんなところで聞こえてくるのは脅しか告白のどっちかだろう。校舎裏の告白なんて物語の中だけだと思うし、十中八九脅しだろう


さすがに脅しは見過ごせないのでちょっと怖いけど声の聞こえた方へダッシュ


「ごめんなさい、わたし誰かと付き合う気はないんでs・・あ」


ごめんなさい、予想はずれました

告白でした

本当にいるんだこんなところで告白する人


というか告白の邪魔しちゃった


「え?

どうしたn・・あ」


ごめんなさい本当にごめんなさい

告白していたのは前クラスメートの飯田くんだった


こっちを見るや否や焦りの表示を浮かべ、走ってどっか行ってしまった


「お前のせいで、振られただろうが!」


謎の捨てぜりふを残して


お前俺が来たときには既に振られてたじゃん

まあ誰かのせいにしたい気持ちもわかるので寛大な俺はなにも言い返さない


残されたのは俺と告白を受けていた女子


そして待ち受けるのは沈黙


それを断ちきったのは彼女の方だった


「誰だか知らないけど、なかなか度胸のある人だね

こんなところに突っ込んでくるなんて」


「は、はは、実は脅しかなんかと思って

今時の告白はLINEとかかと思ってた」


「いやいや、脅しなんて、そっちの方がないでしょ

ところでなんでこんなところに?

うちの学校風紀委員とかないし

見回りって訳でもないでしょ?」


「いや、実は友達を探してて」


「友達?

変な友達だね

いつもこんなところにいるの?」


「ああ、そうじゃなくて

新しく友達が作りたくて、気の合いそうな人を探してたんだよ

掘り出し物的な逸材はいないかなって」


「へー、なかなか変な方法だね

もしかしてクラスでぼっちなの?」


「ああ、そんなことはないよ

クラスメートは仲は悪くないけど、なんか学校にいるときしか仲良くしないって言うか、うまく言えないけど、クラスが変わればほぼ他人じゃん?

そうじゃなくて友情で繋がる友達が欲しいんだよね

気があって一緒にいて楽しい友達」


「あーそういうことか

プライベートでも会ったり、

LINEでくだらない雑談ができるような友達ってことでしょ」


そうそうこんな風に俺の言いたいことわかってくれるような感性の似た人


「そうそう、あ、そうだ、良かったら俺と友達になってくれない?

この気持ち理解してもらえてすごく嬉しいんだ」


「おーそう来るかー

じゃあひとつ聞くけど男女の友情って信じる?

あ、友情がいつのまにか恋心に変わっちゃうとかそういう話ね

わたし高校卒業するまでは恋愛したくないんだよね

親に知られると恥ずかしすぎて死ぬ気しかしないから

勉強もおろそかにしたくないし」


うーん、友達って男も女も関係ないと思ってたけどそういうの考えたこともなかったな


でもあの人とは是非友達になりたいから多少強引にでも


「いや、俺は友情には男も女も関係ないと思うよ

俺はいわゆる彼女とかいたことないけど恋愛と友情は別だと思う」


「ふーん、じゃあ友達になってもいいよ

その代わり条件がひとつ」


「え、条件?」


え?

友達に条件ってどう言うこと?


「えっとね、それはわたしに惚れるの禁止!

友達は友達、恋人は恋人ちゃんと区別すること!」


そんなあたりまえじゃないか

俺が欲しいのは恋人じゃなくて友達なんだ


「なんだー、そんなのあたりまえじゃん

友達に恋愛感情なんて持ち出すもんじゃないでしょ」


「じゃあ言質はとったからね

破ったらわたしの発言に対する拒否権を永久に剥奪するからね」


「つまり俺は君の言いなりになるってこと?

まあそれならなおさら恋愛感情なんて持ち込まないね」


「ふふふー、なかなかいい発想でしょ

あ、もしものときは覚悟してね

死ねとかは言わないけど、使いっぱしりぐらいには平気でするから

まあそういうわけでわたしたちは友達ね」


「うん、ありがとう

というわけで早速だけど名前聞いていい?」


「はは、なんか順番がおかしい気がするけど、まあいっか

わたしは萩原遥

そっちは?」


「俺は平井陸人

これからよろs」


『キーンコーンカーンコーン』


おっともうこんな時間か


「ははは、もうこんな時間だね

じゃあLINEだけ交換しようよ

つづきはLINEで」


「そうだね

じゃあ、えっと、ほい」


お互いスマホを出してLINEを交換した


彼女のアイコンは夕焼けで名前は『はるか♪』と表示されていた


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