第2話 帰城 - 2 -
城に着くと、カイが迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、サラ様。フェルデナント、それにシアラも」
頭を下げ、そして神妙な面持ちで私たち3人の顔を見る。
村での惨状は聞いているのだろう。カイ自身も出発時に言っていた、町人たちへの対応で苦労したのだろう少し憔悴したように感じた。城内にもまだその慌ただしさが感じられる。
「お疲れと思いますが、そのままフェリックス様のところへ」
すっと、踵を返し颯爽と廊下を引率する。フェルドと顔を見合わせ、同時にサラへ目をやると、彼女は小首を傾げ、口元を少しだけ引き上げにこりと笑おうとした。かなり、消耗している。
城の廊下にカイと私たち三人の足音が響く。
大きく、小さく、ゆったり、重く、軽く、響く。村で仕事をしていたときに、足音から得られる情報を学んだ。体格、年齢、職業、様々だ。
いま、同じ経験をして、さも同じものを共有しているかのような私たちも所詮違う人間なのだと、ふと冷静になった気がした。一体感、協調、共振の強さと脆さ。
「良く帰った。フェルド、御苦労だった」
謁見の間の玉座にフェリックスは堂々と座っていた。相変わらず偉そうに。今はなぜか、その態度に安心する。
「予言書の話は後だ。エクレール国のクロード国王から手紙が届いている」
エクレール国は、三国戦争後の混沌とした世界を力ずくで制圧したとされている国だ。
野心が強く野蛮に思われがちだが、決して全てにおいて武力にものを言わせているわけではない。学問を大事にし、より優れたものへの探求心と勤勉さこそがエクレールの最たる特徴であり、美点である。彼らの国の薬学、農学、数学、天文学はどの国より先進しているのだ。
エクレールが先へ先へと歩み続ける理由は、積み重ねを重んじ後世へ知識を繋ぎ続けることを信念としているからだと言われる。彼らが所有する歴史書が、延々と書き連ねられる記録の広大さと重さが、一日一日の小さく見える積み重ねの大きさを信じさせてくれるのだろう。
「カイ、読んでくれ」
「は」
カイはフェリックスから手紙を受け取り読み始めた。
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