第6話 漆黒の髪色 - 3 -
「失礼します、救世主様。よく眠られていました、具合はいかがですか?」
救世主が眠っている部屋へと入る。カーテンの傍に立つ救世主は私よりいくらか背が高いようだ。
「あ、はい、あの良く覚えてなくて……」
とりあえず、使用人らしく仕事をしておこうと思い、バスルームを勧めた。不必要に飾られた風呂は何もかも華奢過ぎて扱いにくい。救世主の秘密が何かあればと思って接触してみたものの、彼女自身の荷物など無く、服装も見慣れぬ衣装だが別段変わったところはない。武器はもちろんアクセサリーも腕輪のみだ。
結局使用人の代わりをしただけかと仕事は適当に済ます。
「ずっと部屋の外で待ってたの?」
好奇心旺盛な救世主様は私におずおずと尋ねた。
「使用人たるもの部屋の中の気配は敏感に察知するんです」
窓の外からね、と心の中で続けて適当に答えておく。
なんだか、ぼんやりした子……? 救世主ってくらいだから、気の強いリーダー気質なキャラクターかと思ったけど……随分と扱いやすそうだ。
バスルームで見つけたバラの形の石鹸を渡し、部屋を出ることにした。
この子の警戒心の無さから、彼女が本当に自分の立場が全く分かっていないことは察することができる。それはつまり、全てはこちらの出方次第ということだ。カイは彼女にアウトラインを説明することはあっても、彼女の意志によって方針を変えることはないだろう。であれば、私の存在を左右するのは救世主ではない。
改めて、自分の身上が定まらないことに憤りを覚え全身に力が入る。
そんなこと分かっていたのに、分かった上で今日という日を待ち焦がれて村を出てきたのに。
「シアラ」
部屋を出ると正装に着替えたフェルデナントがいた。
「なに、救世主様を覗きにきたの?」
フェルデナントは、頬を緩めてふっと溜息をついた。
「……カイと話したんだって?」
夕食まで時間があるからと、中庭に誘われた。
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