13話 真なる賢者
「まったく!何かわかったのかと、喜んできてみれば…そんな事で呼び出すなんて、あなたは何を考えているのですか!」
ーーーまぁまぁ、女神さま。そう言わないで、持ちつ持たれつ行きましょうよ!
「はぁ…私は暇ではないんです。他の世界もいくつか管轄しているのですから、この世界の事ばかりに構っていられないんですよ!」
ーーーちょっとだけですから!これが何か知らないかなぁっと思って!
「はぁ…その質問に答えたら、すぐに帰りますからね!で…どれですか?」
ーーーこのカメラみたいな道具なんですけどね…
「これですね…って!なっ、何でこれが、こんなところに!?」
ーーーえ?そんなに驚く物なんですか?
「驚くも何も!これは神界で使われているGoDというカメラです!」
ーーーGoD〜?
「"God of 動画"の略称で、神界で作られた動画を撮ったり、リアルタイムで撮影できる道具です!なぜここに?!」
ーーー"God of 動画"って…センスを疑うネーミング…まぁ、それは置いとこう。これは学園の生徒が持っていて、今し方、この机に取り付けようとしてたんだよ。
「学園の…生徒が…ですか。」
ーーーそうそう。しかし、女神さまの話を聞く限りだと、あいつが持ってること自体、おかしな事だと言う訳だな。
《そうだね。あの子が単独で手に入れられる物じゃないのは、確かだね!》
ーーーってことは、神界にかかわる誰かが、あいつにこれを渡したという事だろうな。何が目的なんだろう。ただ単にストーカーをさせる事が目的とは思えんな。
「スッ、ストーカーですって!?」
ーーーえぇ、おそらくですけど。取り付けようとしてたのは男子学生で、この机は女子の物ですから。本人はこの子の事が好きなんでしょうけど、その気持ちが歪んじまってるんじゃないかな。
「おっ…おっ…おっ…女の敵かぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ーーーうっ、うわ!女神さま!?急にどうしたんですか!!?かっ、髪が逆立ってますよ!!
「ぜぇっっっったいに許せません!!!ストーカーなど、下劣下賤!!!男の風上にも置けないクソ野郎!!!そんな奴を私が管理するこの世界に、置いておいてなるものかぁぁぁぁぁ!!!!!」
《ですよね!!!女神さま!!!ぜぇっっっったいに許せないDEATH!!!!》
「ん?!あなたはクリーナーの付喪神?目覚めたのですね!そうです!あなたのいう通りDEATH!!!」
「ふしゅ〜!!!!!」
《グギギギギ!!!》
ーーー怖ぁぁぁ…目が光ってる…この人たち…リーナもだけどこういうタイプの人達なのね。気をつけないと…俺まで巻き込まれそう…
「でっ!!!黒井さん!!そのストーカーとはどいつですか!?教えてください!!!?魂からやり直させてやりますから!!!!」
《やったれぇぇぇぇぇぇ!!!メガミン!!!》
ーーーちょっ…ちょっと待てって!!2人とも!!落ち着いて!!!
「いーえ!だめです!!」
《だーめ!!!》
ーーーでっ、でも…魂からってのは…
「何なら魂どころか、前世の記録を消して…」
《もうなんでもいいから、けちょんけちょんにやっちまえ!!》
ーーーくっ…お前らは……落ち着けって言ってんだろぉぉぉぉぉ!!!
「ハッ!?」
《ヒッ!?》
ーーー思い込みで何でもやるもんじゃない!!!いきなり魂からじゃ、反省すらできないじゃないですか!彼にだって更生の余地はあるはずでしょ?それに、そもそも神界の誰かにそそのかされた可能性だってあるんだ!!
「…おっしゃる通りです。」
《…ごめんなさい。》
ーーーそんなに許せないなら、女神さまは神界の方を調査してください!俺とリーナで、その学生について調べてみますから。
「わっ…わかりました。」
《りょーかいだよ!!!》
ーーーはぁ…と言っても、俺はさっきみたいに動く事までしかできないからな…調べるだけなら簡単だが、できれば誰かと意思疎通できるようになっておきたいな…
「調査をするにあたり、協力者が必要という事ですか?確かに黒板消しでは、限界がありますね。…わかりました。信用に足る人物を、後でこちらに寄越すとしましょう。」
ーーーえ?そんな都合の良い人がいるの?この世界に?
「はい。今から神託を授けてきます。」
ーーーいっ、今から?神託って…大丈夫なの?黒板消しに意思があるとかバレても…俺、消されちゃわない?
「その辺は大丈夫でしょう。この世界で最も私に信仰が厚く、神界からの評価も非常に高い人物ですので…」
ーーーわっ…わかりました。女神さまがそこまで仰るなら…
「では、神託が降りた後は、彼はすぐこちらに来ると思います。黒井さんは念話はできますか?」
《まだだよ!タケシはまだ視力と動力だけしかマスターしてないよ!》
「そうですか。ならば特別に念話ができるようスキルを一つ授けます。それで簡単な意思疎通ならすぐできますよ。ただ、あくまで黒井さんの念話をサポートする物ですので、続けて鍛錬はしてくださいね。」
女神はそう言って、光の粉をタケシへと振りかけた。
「これで彼が来ても話が通じます。では、私は神界の調査に向かいます。こちらのことは頼みましたよ。」
ーーーは〜い!任せてくださぁい!!
「…少々不安はありますが、彼がいるから大丈夫でしょう。では…」
そう告げて、女神は消えていった。
《協力者って誰が来るのかな?》
さぁ、誰だろうな。
ワイド…ではなさそうだし。神託を授けるって言ってたから、この世界の人間なんだろうけど…まぁ、少し待ってみるか!
《そうだね!来ればわかるし!待ってみよう!!》
◆
講義室の前に、1人の人影がある。
「まさか…女神さまから神託がくだるとは…内容は俄かに信じ難いものではあるが…とにかく、入ればわかるか…」
男はそう言ってドアを開けた。
ーーーおっ!?来たみたいだぞ。
《だね!暗くてよく見えないなぁ。もう少し近くに…あっ、こっちに歩いてくるね!》
ーーーおう。女神さまが、席の場所まで正確に伝えてくれたんだろ!来た来た!誰なんだろうなぁ!
「ふむ…ここのはずだが…あるのは黒板消しのみ…神託通りではあるが…」
ーーーこの人は…学園長じゃん!あれ!?どうやって念話するの?!やべっ!!練習してなかった!!リーナ!どう話せばいいの?!
《えっとね!とりあえず…念じて…みたら?》
ーーーみたら…っておい!何だよそれ!!リーナも知らないの!?あぁ〜もう…とりあえず念じてみるか?
「ほう…本当に黒板消しが喋りおる!神託通りだな。ハハハ…念話したいなら、話したい事を頭に浮かべて、わしに飛ばすイメージを持てばよい。」
ーーーえっ!?俺の声がきこえてるのか?そっ、そうか…なら、飛ばすイメージ飛ばすイメージ…こっ…こんにちは…
「ホッホッホッ!今までいろんな精霊と話してきたが、まさか黒板消しの精とはな!愉快愉快!改めまして、ブック=ライブラリと申します。よろしく。」
ーーーよっ…よろしく。まっ、まさか女神さまが信用している人が、学園長だったとは…
「わしも驚いたわい。学園に黒板消しの精がおるから、話を聞いて協力せよと神託がおりてのぉ。無機物の精など聞いたことがなかったが、神託じゃからな。慌てて来てみたら本当におったわ。」
ーーーこっ、黒板消しの精って…女神さまもけっこう適当な説明というか…神託をするんだな…
「ぬ?お主…まるで女神さまと話をしたかのような口振りだのぉ?」
ーーーそりゃまぁ…あなたが来るちょっと前まで、話してましたからね…ちょっと…学園長近い…
「なっ!!!…なんと!?女神さまご本人と直接話ができるのか?!!」
ーーーえっ…えぇ…だから近いって…
「グハァァァァァッ!!!こっ…これはまさに幸運!!まさに好機であるな!!!」
ーーーがっ…学園長…?!大丈夫ですか?!鼻血…鼻血が出てますって!!!
「じっ…人生を賭けて信を捧げてきた…めっ、女神さまと…おっ、お話が…でっできるやもしっ、しれん!!!ついに…ついにわしの願いが…」
ーーーおーい、おーいってば!!…やべ…全然聞こえちゃいねぇ…。なんかすんごく興奮してるし…もしかしてこの人、女神さま相手にエッチな事を考えてるんじゃ…そうなるとなんかもう、○仙人に見えてきたな…
《タケシ〜僕、このお爺ちゃん…ちょっ、ちょっと怖い…》
ーーーはぁ…もう…話を進めたいのに。学園長!!!おーい!!学園長ってばぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
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