BRAIN of IDEA~ブレインズ オブ イデア〜
四季巡
プロローグ~現実と虚構が交わる世界~
中世の街。周りの建物はレンガ造りで藁の屋根が貼っていた。
その中で多くの人々が平和に生活をしている。新鮮な魚を買ったり、焼きたてのパンの匂いに釣られたり、そして楽しく広場で踊り子が踊っていたり·····。
幸せが満開の中で明らかに異質な1人の少年が座っていた。
彼は噴水近くのベンチに座っており、チェック柄の青いパーカーに黒のスキニーパンツを履いていた。顔はフードによって隠されていたが周りの人とは異質なくらい目立っている。
「はぁ·····。やっぱり慣れないな·····」
フードを被っている少年は自身の手を見ている。一瞬だがホログラムのように砂嵐が少し走っていた。
ここはネットと似たような世界だ。なぜなら、ここにいる人達は身体を失っている。
もちろん。僅かながら生きてる人もいるが、この世界の全体の8割は1度は死んでいる人達だ·····。
その中に彼が含まれていた。そして目線を合わせないように周りを見渡している。
「イデア界に居て1ヶ月。そろそろ慣れないといけないのに、何が不満なんだろうか·····」
彼は周りにいる人々が羨ましく感じていた。そう思っていると10歳差も離れた弟と遊んだ記憶が僅かに脳裏が走っていた。
それは幸せと言うものを手にしているからだ。
何も満たせない少年はずっと悩んでいた。明らかに作られた世界の中で過ごしているため、生きた心地はしていなかった。
それは幸せと呼ぶ名の形を心の中でずっと探している·····。彼は異世界と言う鳥かごに閉じ込められている·····。
すると脳内から───
「アオイ。起きてる?」
少女が少年の脳に通じて、話をかけに来る。
「ん? トウコか? 何かあった?」
何かしらの問題があると思い、聞き返してみる。
「そろそろ作戦時間だよ。
「もうか·····」
ベンチに勢いよく立ち上がったあと、尻を手で叩く。
首を上に向けたあと、目蓋をゆっくりと閉じる。顔が黒く塗りつぶされた弟の背を思い出し、心の中で誓い始める·····。
『絶対に帰る』それは大切な人のために───
「よし。救いに行くか!」
拳を手のひらに当てるとアオイの周りには黒い空間に包まれていく。飛ばされた先は彼が眠っている場所だ。
そして目の前には機械の起動のコードが流れていく。
マルスコアの起動──── 異常なし
人工神経の接続──── シンクロ率 80%
アロンダイト起動完了─── 出撃可
「カメラの接続開始!」
周りが映像を映し出すように視界が広がる。
そして自身の手が
そして目の前には出撃用のデッキに立っていく。
「おし! トウコ。いつでも行けるぞ!」
アオイはテレパシーを通じて、コックピットに向けて声をかけ始める。だが、トウコから不安を募らせる感情が流れ込み始めた。
「アオイ·····。それでいいの?」
「え?」
「弟のこと。ニホンに戻りたいよね?」
それを聞いたアオイは下唇を噛み始める。だが、今の世界の現状は危険に近い。
アオイが居た虚構の世界。そして現実世界に侵食をしてしまえば大混乱が起きる。
ただの一般人であるアオイにとってはあまりにも大きなことだ。
「大丈夫·····。アイツなら大丈夫さ」
「アオイ·····」
「本当にニホンがあるかわからない。だけど本当にあったら、守らないとなぁ·····」
アオイは脚を少し震えていた。覚悟は完璧にとまでいかないが、その世界がないとしてもこの世界を守るために意志を固めていた。
それは自身と同じ思いをさせたくない。世界が滅ぶ前に戦いを終わらせたいの願っていた。
「ふふふ·····。ありがとう。その気持ちだけでも嬉しいよ」
本心を無理やり開かないようにするため、トウコは苦笑いをしていた。
「あれ? バレてた? まぁいいや·····」
あまり見られたくない本音を覗かれ気分だったのか、失笑していた。
「そろそろ行こうか。トウコ。行けるよな?」
「ええ! いつでも!」
2人はテレパシーでお互いに頷いたことを確認するとカタパルトデッキに向かった。
そしてアオイは脚を固定すると発進体勢をする。
「発進準備を始めます!」
脳内でオペレーターの女性が通達するとカウントが始まる。
3·····。2·····。1!
「発進どうぞ!」
オペレーターの掛け声の後────
「
カタパルトが急速に前進して、蒼き騎士アロンダイトが飛ぶ。
そして地面を着地の衝撃を抑えるために、足の裏で魔法陣を浮かべ、水ジェットのように射出していた。
大地を踏み入れ、上手い具合に止まると長柄の斧を持った中世の白い騎士のようなロボット達が10機ほど、立ちはだかっていた。
「アオイ! ハルバートが居るわ!」
「うん。わかってる!」
アオイは背中に背負っているロングソードを抜いた。
そしてトウコの構える体勢を合わせるように、アロンダイトも真似ている。
「相変わらず·····。敵は多いね」
唾を飲み込むようにアオイは心臓の鼓動が上がっていく。
テレパシーから伝わるようにトウコは────
「大丈夫。私が居るから!」
アオイの背中を押すように活気を送る。
「へへ。それは頼もしい·····。じゃあ! 行こうか!」
「ええ!」
2人はアロンダイトを前進させ、不利と思われる戦場へと向かった·····。
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