バスバス進め
さてさて、親愛なる同級生の皆さま方。
がたごとガタゴト、バスは進みます。
ここからが本番だよ。さあさあ、お聞きなさって。
みんなの持ってきたとっておきの話たち。とっても素敵だね。
一つの停留所にそんな話があったのか!
一人の人生にそんなことがあったのか!
そんな風に感動しながら、私は今、この同窓会で話を聞いてる。
私の話は『停留所』。みんなが話してくれてるその話こそが停留所の話だよ。
そして、その停留所を繋げる道をいくのが一本のバス。
「次は◯◯ー、◯◯ー」
バスは進む。人が立つ、次の停留所に向かって。
停留所は人の数だけある。その中に、ぽつんと私の停留所があった。停留所の名前は『留華』。私の名前だよ。
留華の停留所にはもちろん私が立っている。そこに、クラクションを鳴らしてあのバスがやって来るんだ。
あのバスは、私の停留所の前に止まった。
そしてあの人は言うの。
「乗るか乗らないか、はっきりしろ」
もちろん、私の答えは「Yes.」か「はい」しかありません。私はバスに乗り込んだ。
バスが静かに動き出す。がたんと揺れて、発車した。私は車掌さんのすぐ後ろ、いつの間にか定着していた私の予約席、そこに腰を下ろすの。
そっと後ろを振り返る。さっきまで私が立っていた停留所。そこには何ものこっていなかった。
だって、『留華』という停留所は私そのものなんだもの。
がたんとバスが走り出す。私という停留所を乗せて、走り出す。
そして、いくつもいくつも停留所を通過するの。
各駅停車のそのバスは毎回止まる。止まる。止まる。
誰か乗ったかもしれないし、誰も乗らずにまた発車したかもしれない。
誰か降りたかもしれないし、誰も降りずにまた発車したかもしれない。
停留所を後ろに追いやり、バスは進む。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。
その車掌さんは何も話さないのかだって?
焦んなさんなって。今から話すからさ。
『留華』の停留所の話は私の話。バスに乗った私の話は二つ。
まずは窓から見える外の話。そう、さっきまでしていた君たちの話だよ。桜ヶ原っていう町を巡り、そこで起こったものを見る話。
そして、もう一つ。バスの中の話。これから私がする、私と車掌さんの話。
はい。前半戦終了。
みんなが語った話たちの中から七つ、私は抜粋させていただきました。七つっていうのは適当、あ、曖昧な方ね。適当で適当、これは適切な方。桜ヶ原の『七不思議』から『七』っていう数字をいただいた次第でー、ここら辺は別にいいかな。
とにかく。みんなにしてもらったたくさんの話から、桜ヶ原の中で起こった話を選んだつもりだよ。七つを、ね。
その七つの話のある停留所は、話をしてくれたそこの君たち。よく知ってると思ってた場所にそんな話があったんだね。でも、停留所っていう一人の人には話が一つでも、単なる一つの場所には話が無限に湧いてくると思うのさ。
もうわかったかな?
バスは停留所を巡った。バスに乗った私も停留所の数だけ巡った。
いわゆるスピンオフってやつ?
物語は常に派生するものなのだよ!
まあ、どっちが基の話なのかわかんないから、スピンも何もないけどね。全部の話がオリジナルだよ。
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