第14話 魔法を学ぶにはまずコントロールから。
学園に入学してから、インフェリア皇国は魔法大国である為、魔法の授業時間は圧倒的に他の授業よりも大幅に多い。
魔術も勿論授業として組み込まれているけれど、術式展開が基本の為、ほぼ術式を読み解き、トレースする授業な為、ずっと座って書いてるだけな事もあり授業風景だけはとても地味だ。
皆無言でカリカリと文字や記号を書く音だけがしている。
魔力が多い傾向にある貴族は魔術を殆ど使用しないし、使う機会も少ない。
使うとしても転移陣くらいかもしれない。
転移陣は膨大な魔力を魔法だと消費する為、陣を描いて使用する魔力を軽減させた方がいいからだ。
転移魔法を何回も使える程に魔力が多いのは一握りという事もある。
一度だけ転移魔法を発動させられても、戻る時に転移魔法を発動出来ないなら困るからだ。
転移陣を描いて発動するだけで、魔法を唱える時の三分の一程の魔力使用で済むのだから陣は便利だ。
私は魔法も魔術もどちらも極めたいタイプなので、片方だけに偏るのは損だと思う。
お風呂の熱いお湯や冷たい水が出る装置だって、魔石の中に魔術の陣を組み込んであり、僅かな魔力で正確な温度のお湯や水を出させているのだから。
魔術は生活には欠かせない物だと思うんだけどな。
でも、平民と違って大きな魔力を持つほとんどの貴族は、魔法で済ませられる事を、魔法陣を描いて発動させる魔術のテンポの悪さが苛々するらしい。
色々とめんどくさがり過ぎである。
家庭教師に習っていた時とは格段に違うレベルを学園では学べるらしい。
魔法に造形がより深くなるよう専門的な事や、まだ使った事ないような新しい魔法が学べる。
魔力が溢れんばかりにある私は、魔法が大好きだ。
だから、皇子に半ば無理やり入学させられたけれど、さらに高度な魔法を学べ放題のこの環境に嬉しすぎて、一年早く入学させられた事を皇子に感謝している
魔術のように術式を組まない分、魔法はコントロールするのが大変なので、座学で学ぶ以外にもコントロール力を最初の一年間でみっちりと学ばされた。
魔力暴走を起こさないようにする為にも、コントロールは基本中の基本という事でとても大切な授業の為、一年間はコントロール力だけを鍛える為だけのカリキュラムを延々と学ばされる。
二年目の今日からは、魔法コントロールを引き続き学びつつも、座学としての魔法を学ぶらしい。
新しい魔法や、様々な魔法を知れる事が嬉しくて今からワクワクしているのだ。
明日から座学が始まるという時、その前日に少しでもコントロール力を上げたくてクロード殿下ことクロと、学園内にある皇族専用の貴賓室で居残りして、何度か教えて貰ったけど未だ要領を得ないコツというものをクロに教えて貰う事にした。
クロード皇子ことクロはやっぱり存在がチートなだけあって、コントロールは一寸のくるいなく完璧だった。
クロは魔力を細い針状に放出して細い穴すら通せる。
神はクロに才能を与えすぎだと思う。
私は魔力だけは膨大だけれど、コントロールはなかなか上手く出来ない。
始めの頃よりは全然成長したけれど、気を抜くと失敗する。
常に気を張り続ける事は出来ないから、集中と緩和を交互に続けながらコントロールの安定化を目指している。
少し疲れたでしょ? 根詰めるの良くないよ。休憩しようねってクロに諭されて、それもそうかと、今は美味しいお茶とお菓子を頂きながら休憩している。
「クロード殿…クロみたいに出来ないなぁ。毎日毎日常に魔力循環させて滞らせないように過ごして、魔力の練り方だって頑張ってるのになぁ。
これを放出する先が、たまに思った所にいかないのは何が原因なんだろう…」
話す途中クロード殿下と癖でいいそうになったのを言い直したら、それだけで頬を染めて喜ぶクロード殿下ことクロ。
二人の時はクロって呼ぶ事と、口調も砕けるようにお願いされている。
クロって呼ぶのはいいけど口調は他の人がいる時にうっかりがあったら怖いと思って抵抗していたけれど、クロは全く引かずしつこいから私が折れた。
こういう親密さを感じるやりとりを拒むと、クロはたまに怖い微笑みを浮かべるので、
ある程度拒否して駄目だったらサッサと折れることにしている。
「サフィはね、魔力の器が大きいうえに、魔力量が物凄く多いんだよ。
幼いころに計測していた量でも多かったけれど、今計測し直したら何倍にもなってるはず。
たまにサフィが熱を出す時があるでしょう?
あれは、作られる魔力の量と排出の量が上手くかみ合ってない時に出してるんだよ。だから、僕がサフィにキスして魔力を―――」
「ちょ、ちょっと!」
慌ててクロの口を手で塞ぐ。
もごもご言ってるけど、知らないんだから。
クロが静かになったと思ったら私の手のひらをペロリと舐めた。
「――――っ!?」
パッと手を離して、ソファの一番端まで距離を取る。
「な、な、なにしてくれてんですかーー!?」
「サフィの柔らかい手がずっと僕の唇に触れてるから我慢出来なくてごめんね。」
ふふっと笑って少し開いた距離を詰めるクロ。
「キスはもう何度だってしてるのに、まだ単語が出てくるくらいで恥ずかしがるんだから…もう、本当にサフィは可愛いね。
僕のキスで出口を求めて溢れそうなサフィの魔力を吸い上げて、一度僕の体内に入れたサフィの魔力を指令が出せるように僕の魔力と練り合わせて、それからサフィの中に入れ直して、僕の魔力で強引に循環させて放出させてるんだし。
サフィの魔力量は年々凄い勢いで増えてるよ。
サフィの甘い魔力を吸っても吸っても循環出来る程の魔力の隙間を作るまで時間が掛かるようになったから。」
「うー…なんか言い方がいやらしい…。最近、魔力過多で寝込む度に、キ、キスがどんどん長くなる…って思ってたけど、アレは流し込める程に量を吸うまで時間が掛かってたからなんだね。てっきり…」
「てっきり…?」
サフィへと更に身体を近づけながら、金色の瞳をとろりとさせてクロが囁く。
「……ち、ちかいっ!」
サフィの真っ赤に染まった頬にクロは指をするりと滑らせると、妖艶に微笑んだ。
「サフィの果実のように甘くて蜂蜜のようにとろりとした魔力をたっぷり吸い上げないと魔力を入れ直すことが出来ないのは事実だけど、それを吸う時間が長ければ長い程、僕はいつもたまらない気持ちにさせられてるよ。
ああ、早くサフィを僕のものに、僕だけのサフィにしたい…って。
わざと長くしてる訳ではないけれど、もっと長くなればいいと思ってる。」
くらくらするような美貌が目の前にあって、心臓が痛い程に鳴っている。
クロは私の親友で、共に国の為に力を合わせる戦友で――――
どくんどくんと身体を揺さぶりそうな程に激しい鼓動は、これは親友に対する気持ちで正解なの…?
クロが私へ向ける気持ちと同じ・・・なの?
わからない…
私の顔が異常な程に真っ赤で、そろそろ限界をむかえそうだと判断されたのか、
「今日はここまでにしてあげる。サフィ、首まで真っ赤になってる。
ああ、サフィが可愛すぎて、僕が先におかしくなりそう……。
早く追い付いてね、サフィ?」
頭から湯気が出そうな程に熱くなった私は、コクコクと黙って頷くのだった。
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