《9》朝のスズメ
【これって本番の描写を18禁で投稿しても需要はあるんでしょうか?】
空が明るくなりカーテン越しに部屋に青さが増していく。
朝の雀の声で彼は目を覚ました。
「起きた?」
隣を見ると詩織がじっとこちらを見つめている。
「そっちこそ、起きてたの」
「眠れなかったのよ。あんなに激しくするから」
そして布団に潜り込むと何やら体の匂いを嗅いでるようだった。
「全く。口のつけられたところは全部あなたの臭いで一杯だわ。特に胸とか両方とも乾いた唾液が臭っててまだとれないのよ」
自分の体を両手でさぐりながら身体を竦める。
「もうこれでいいだろ」
彼は詩織に背を向けて言う。
「何もいいことなんてない」
あれだけ夜を共にしておきながら彼は全てにおいて南詩織の方が勝っていると初めてでのたうつ泉詩織に言い聞かせ続けた。
にもかかわらず彼女は彼から離れようとはしなかった。
もし声に跡形が残るのであればきっとそこら中に昨夜の熱気が散らばっていることだろう。
「でももしこれで私にも赤ちゃんが出来たらきっとあなたは思い悩んでくれるでしょ?」
この夜は詩織にとって記念すべき夜だ。だから当然避妊具も使っていない。そして彼女は片時も彼を離さなかった。そしてそれは一度や二度では勿論ない。
「それが狙いなのか……」
彼の呟きに詩織は頷く。
「そうよ。だって赤ちゃんができても心の痛まない男の血統なんてこっちから願い下げだもの」
それが恐らく男は要らないが子供は欲しいという女たちの本音だろう。
「でももう一人の私には感謝しなくちゃね。知ってるのよ。あの子があなたのサインの入った婚姻届けのほかにもう一つあなたのサイン入りの離婚届も持ってるっていうこと」
その言葉を聞いて振り向いた彼は彼女を凝視する。
「きっとあなたとあの子が結婚できる年になった時に婚姻届と同時に離婚届も出すつもりだったんでしょう?未成年のあなたがあの子にしてあげられる責任の取り方なんて自分の戸籍に傷をつけることと自分の姓を彼女にあげること。そして今までやこれから得る自分のお年玉やお小遣い、アルバイトで得た収入を全て自分の子供に注ぎ込むことぐらい」
詩織はため息を吐く。
「涙ぐましいわね。高校生の楽しみを全て犠牲にした上であえてその高校生活を選択したあなたって。」
「俊哉たちのためにはどうしても高校だけは卒業しておきたかった」
「もう一人の詩織さんも本当はアルバイトとかして助けたかったみたいね」
「あいつまでそれをすると子育てに余裕がなくなるからね。行動は規格外にズレてるけど先の事はそれなりに考えてるんだよ。詩織は」
「ねえ」
たおやかな腕が首に伸びる。
「私のことも詩織って呼んで」
「姉さんと呼べって言ったのはそっちだよ」
「訂正するわ。詩織って呼びなさい」
彼は黙っている。痺れを切らしたように彼女は彼の顔引き寄せて自分の胸に埋めこんだ。
「続きをしましょ。まだ朝までには時間があるもの」
青い朝に赤い日差しの色が差し込んだ。
―次回―
青いヘアピンは彼女たちの心の証。
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