最終話 再出発
身内の逮捕劇、それは四神商事という会社そのものを揺るがす事件へと発展する。
都市開発本部長の逮捕をきっかけとした四神外し。
あらゆる企業がデベロッパー業を基本とした四神を避けるようになり、また、テナント各社も蜘蛛の子を散らす勢いで四神の名の付くショッピングセンターから撤退を選択していく。
残ったのはファシリティや警備と言った、管理側の人間のみ。言い換えれば、四神商事が金を払う側の企業だけが、残り汁を啜るように残っていたのだった。
若草家は不動産業に手を出していた訳では無い。
家電や造船、テクノロジー関係を主にした企業ではあったのだが、この度の四神の瓦解を見て、新しい事業に船出するのに好機だと先読みをした男が一人いた。
若草清春、現若草製作所社長、その人である。
清春は没落していく四神商事に対して
ナイアガラの滝の様に降下していたチャートはTOBにより歯止めがかかり、そこから四神商事株は僅かながら回復するも、清春は徹底した購入を実施。
結果、四神商事株の三分の二を取得するに至る。
清春は知っていた、弟の事件を。
その結果次第で、四神商事の乗っ取りをも可能であると睨んでいた。
四神一族の雁首を揃えた会議室で、清春は言い放つ。
「愚弟とはいえ、私の弟の顔に泥を塗ってくれたんだ。それ相応の復讐はさせていただく。貴様達は蔑んだ私の弟の指示で、今後を生きるのだ……しっかりと成果を出すよう、期待している」
友好的TOBは、実は敵対TOBだった。
全てが終わった後、四神一族へと言い放った清春の言葉。
これを聞き、四神社長はこれが全て仕組まれたことだと気付く。
現に新たに代表取締役として四神商事……現若草商事へと就任した若草彰人になってからというもの、撤退したテナントは我先へとショッピングセンターへと戻り、売り上げは急上昇し続けている。
世の中には、触れてはいけない人種がいる。
親族である隆三が踏んでしまったのは、とてつもない巨大な龍の尻尾だったと、全てが終わったあと、思い知る事になるのであった。
「はい、社長、珈琲が入りましたよ」
「……ん、ありがとう。泉さんが秘書をやってくれるとは思わなかったよ。これでまた美味しいコーヒーが飲めるってもんだ」
「ふふ、私が秘書検定とか持ってて良かったですね。午後はイゾン社長との商談、明日は若草グループ合同会議となっておりますから。体調の方を整えて於いて下さいね」
「OK、あっちはどうなってるかな?」
俺はパソコンモニターから視線を逸らし、泉さんを見る。
彼女は半眼だった、ハの字の眉で俺を見下すようにしていた。
「……また惚気ですか?」
「ふふ、良いんだよ。彼女が企画して興した会社なんだから。現に清春兄さん達も了承している。旦那としては、全力で応援しないと」
雫は自分の経験を元に、DV被害者への援助を可能な限りするNPO法人を設立した。厳密に言えば既にあったものを買い取っての運営となるのだが、最近の雫はとてもやりがいのある仕事だと俺に笑顔で話掛けてくる。
小さい子供が育つまでの長期シェルターや、緊急時の受け入れ先の増加。
世の中に自分と同じ思いをしている女性がいる以上、私は力になりたい。
そういっていた彼女を、俺は支えていきたいと思う。
「あの頃の雫さんとは雲泥の差だな。というか、昔に戻ったと言うべきか」
「そうだな、夢桜が苦手だった、あの雫に戻ったんだよ」
肩を竦めながらも微笑む夢桜は、俺と共に四神商事で働く事となった。
顧問弁護士として、柏上崎法律事務所の後ろ盾は無くなってしまったが、代わりに若草家の抱えている最強法務軍団が彼の後ろ盾となり、俺の補佐をしてくれている。
数か月前からは想像も出来なかった毎日が、いま目の前にある。
だけど、俺の社長業としての日々はまだまだこれから……始まったばかり。
雫との結婚式だって挙げたいし、子供だって欲しい。
やりたいこと、出来なかったこと、その一つ一つをこなしていく日々は、とても眩しくて。
「よし、行くか、俺の会社、もっともっと大きくしてやるぜ!」
愛する人と共に、幸せな毎日がある事を夢見て。
俺はこれからも全力で生きていく。
馬鹿なりに、正直に、せめて後悔の無いように。
《幼馴染だった人妻と同棲することになりました。》
FIN ――Thank you for reading――
――あとがき――
私の弱さから一度は非公開にしてしまった事をまずはお詫びいたします。
作品を心待ちにしていただいている読者様からの温かいお言葉は、私の胸を打ち貫くものでした。
一度非公開にしてしまった以上、今回のコンテストへの参加は事実上不可能となります。
ですが、私には読者様がいる、これがどんなに温かく気持ちの良いものか。
その気持ちにお応えすべく、今回全話一挙公開にいたしました。
今回の投稿した内容に関しても「間違っている」という思いを持つ読者様もいらっしゃることでしょう、私の作中に書くべきだった言葉を、ここに綴らさせて頂きます。
【この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。】
・補足
辛辣な言葉をコメントとして送ったにも関わらず、作品を非公開にした後にコメントを削除した方へ。応援コメントは全てメール通知で届きます、なのでカクヨム上から削除したとしても私の手元には誰が、いつ、どの内容を書いたのか全て把握可能となっております。
申し訳ありませんが該当の方はカクヨム上から全員ブロックさせて頂きました。
苛立つ内容を読む必要はないでしょう? 互いに接しないこと、これこそがwin-winですよ。
ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。
私の執筆活動に終わりはありません、また、次の新作でお会いできることを心から望んで。
書峰颯
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