虐げられた最強の少年はヤンデレ美少女達を固有魔法で奴隷にして、まずは魔導女学園の頂点の座を奪います
三矢梨花
第一部 一ノ宮蛍子編
第1話 階段とパンチラ
少年は階段を上っていた。
延々と足を進めるだけというのもいい加減に飽きが来る。そう思い、おもむろに空を仰いだ彼の視界いっぱいに広がるのは、城塞のごとき威容を誇る巨大建築物。現代日本には似つかわしくないこしらえのそれは、人里離れた山奥にではあるが、実在する学園の校舎として屹立しているのだ。
校舎に向かって尚も歩く、学生服と思しきブレザーを着込む少年は、ふと長い階段の前方に一つの影を発見した。
紫の長い髪を高くポニーテールに結い上げた女子生徒だ。少年からは後ろ姿しか見えないものの、その出で立ちや佇まいだけで、優美さをありありと感じさせる。
学園の敷地内にいるということは、男女の差こそあれど、同じデザインのブレザーを身に纏っていることも相まって、自分と所属を共にする極東魔導女学園の生徒に他ならず――、
「――あ」
とりとめもない思案を繰り広げる最中、唐突極まりない突風が、彼の目の前を一直線に駆け抜けた。
無論、少年にとってはただ風が吹き付けて来ただけのこと。何も問題はない。問題があるのは階段の先を上っていた少女の側。
元より少年が下という位置的に、スカートの中身が見えかねない危うさはあったのだが、この強風の結果、比較的長めであったはずのスカートが盛大にまくれ上がり、隠されていた下着が少年の目に届いてしまうのだ。
清楚な風貌には似つかわしくない、黒と紐とレースの危ういヒラヒラが開帳される。
「あらあら」
眉をハの字に、困ったような笑顔で振り向いた、女子生徒。彼女はとりたて怒ることもなく、あくまで穏やかな語りでこう言った。
「お見苦しいものを一方的に叩きつけるような無礼をお許しください。せめてものお詫びに……そうですね、下のみならず、上の下着もじっくりとご覧になりますか?」
「意味が分からないっ!!」
初対面の相手に思わず鋭いツッコミをいれてしまった少年――
「わたくしの下着程度では、やはりお詫びにはならない――と」
笑顔から一転、女子生徒は瞳を潤ませ、上目遣いに月都を見上げた。女性にしてはかなり長身だが、それでも男である月都よりは幾らか背丈は低かった。
(あれ……この人)
左眼を長い前髪で覆い隠し、右眼は露出されているも、何やら目の動きがおかしく、光が入っているようにも見えない。もしかするとこの女子生徒は、目に何らかの欠陥があるのかもしれないと考えつつ、月都は会話を続けていく。
「そうじゃなくて。不可抗力であるとはいえ、俺があんたの下着を勝手に見たんだから、詫びるべきは俺の方だろ」
「そんなことはありません! 見苦しいものを見せてしまったわたくしに! 全ての責任がありますので!」
あまりの圧に月都は仰け反ってしまう。女子生徒の側がどこまでも真剣なのが、よりタチが悪い。
「ですから、どうぞ上もご覧になってくださいまし。遠慮なんてなさらずともよろしいのですよ」
「ご覧にならないから! 服を脱ぐな! しかも外で! もし誰かに見られたらどうする!?」
慌てて止めようとするも、意外にも彼女の腕力は強い。ブレザーを脱ぎ捨て、ネクタイを外し、ワイシャツのボタンを徐々に、それでいて躊躇いなく外していく一連の動きを止める手立てはなかった。
「いつ人目につくか分からない外の方が、俄然燃えませんか?」
「変態だぁ! 変態がいる!?」
「当たり前のことを言われたところで堪えるような身ではありません。ささ、階段ど真ん中というのは流石に味気がありませんし、そちらの雰囲気抜群な茂みにでも参りましょう」
誰に見られようともどのような言い訳も出来そうにない、シャツの前を派手にはだけさせた女子生徒に腕を引かれるが、
「……悪いが、俺には姉がいてな」
「はい」
「いきなり下着を見せてくる相手には、そう簡単についていくなと言われたんだ」
「あら、あら、あら」
鋭い眼光でもって月都が彼女を見据えると、怯んだ様子はないにしても、手を離させることには何とか成功したのだ。
「それはそれは。素敵なお姉様ですね」
クスクスと口に手を当てて微笑む。彼女はこれといった未練もなさそうに、ワイシャツのボタンを元に戻し、脱ぎ捨てたネクタイやブレザーを着用していった。
「ご主人様ー!!」
すると階段の下の方から、あどけない少女の声が聞こえ、徐々にソレは月都達の元に迫りつつあったのだ。
「お連れの方ですか?」
「従者というか……俺のメイドだ」
「なるほど。これ以上のお邪魔は無粋でしょうね。お詫びはまた別の形ということで」
とっくに着直した制服、そのプリーツスカートの端を掴んだ上で淑やかな一礼をなす。
「申し遅れましたが、わたくしは
女子生徒――否、蛍子はゆったりとした動作で伏せていた顔を上げ、
「それではまた校舎でお会いしましょう。転校生にして、歴史上二番目に男性で魔人になる資格を得たと話題の、乙葉月都君? 喜ばしいことにわたくし達は同学年、二年生であるようですしね」
「おう、よろしく頼む」
ドタバタとした足音が近付いて来る前に、簡単な挨拶だけを言い残して、颯爽と校舎の方角へと去っていった。
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