第174話 氷結攻略②
アイスサイクロプスが、巨大な咆哮を上げた。
氷穴の最奥は開けていて、高さ広さとも余裕があるので、ティリオンに乗ったアリエルが先手を打って、炎の矢をアイスサイクロプスに射かけて挑発する。
アイスサイクロプスがその挑発に乗ってアリエルをターゲットに冷却光線を発射する。
だが、アリエルを乗せたティリオンは、器用にその光線をひらりひらりとかわしていく。その合間にも、アリエルは挑発のために矢をどんどん射かけていく。
マルクとレティアと、レオンに乗ったリィンが、アリエルの挑発に乗って発射される光線を避けながら、アイスサイクロプスとの距離を詰める。
私は、マルクに言われたとおり、待機中。ただし、万が一にターゲットになった時に、回避行動をしなければならないので、機動力のあるリーフの背に乗せてもらっている。
「レオン、飛べ!」
リィンの指示に従い、レオンが凍りついた地面と横壁を蹴って、アイスサイクロプスの頭部に肉薄する。
「うおりゃあーー!」
リィンが大きな声をあげてハンマーを振るい、渾身の力を込めてアイスサイクロプスの頭部に叩きつける。
ミシッと骨が軋む音がして、打たれた頭部に手を添えてぐらりとよろめくアイスサイクロプス。
やっぱり、流石のリィンでも一発とはいかず、頑丈なようだ。
でも、骨の軋む音がしたということは、絶対に潰せないわけではないと判断したのだろう。
「リィン、今打ったところを徹底的に狙っていけ! 他はなるべく、目を狙って行くぞ!」
マルクから指示が飛ぶ。
よろめいて下を向いていたサイクロプスが顔を上げたタイミングで、右からレティアが地面を蹴って跳躍し、目を斬りつけようとし、左からマルクが凍った岩を駆け上がった勢いでサイクロプスに向かって飛び、槍斧の斧で目を叩き潰そうと試みる。
が、それは、頑丈なアイスサイクロプスの両腕に、それぞれ阻止され、その返礼とばかりに、二人に向かって拳が振り下ろされる。
マルクは槍斧の柄で、レティアは剣で抵抗して直撃を免れた。
「ちっ、でかい図体の割に、反応はいいときてる」
マルクが忌々しげに眉間に皺を寄せながら呟いた。
前線の二人にアイスサイクロプスのヘイトが向かったので、ティリオンで飛び回りながらアリエルが大量の火の矢を射かけて、再度挑発する。
案外あっさりとアリエルにターゲットが切り替わる。
マルクの二倍はありそうな体格の割に、反応は良いけれど、知性はそこまでは高くはないようだ。
そして、再度跳躍したレオンの上から、リィンがハンマーを振り回し、アイスサイクロプスのさっき打ちつけた頭部の部分に、その巨大な得物で叩きつける。
ミシ、ギシッと音がして、打ちつけられた部分が若干凹み、また、首を支点に頭部が若干傾いた。
「アアアア!」
アイスサイクロプスが怒りで咆哮し、もうすでに飛び去ったレオンのいた場所に拳を振り下ろす。
「
敵の怒りがリィンに向き、自分に注意を向けていないのを見計らって、アリエルが片手を天井に向けて掲げて叫ぶと。すると、ファイアーボールでも上位の青い火の玉が、無数に彼女の手の周りに浮かび上がった。
「行けっ!」
アリエルは叫ぶと共に、アイスサイクロプスの目を目標にして振り下ろすと、青い炎の火弾が勢いよく飛んでいく。
「ギャアアアアア!」
アイスサイクロプスの目は、顔全体を占めるかという程大きい。その大きな的は弓が得意なアリエルにとって、当てるに容易い的だった。
ジュウジュウとアイスサイクロプスの大きな目から、水分が蒸発する音がする。
無数の高温度の火弾をまともに目に食らい、アイスサイクロプスの目が潰れた。
「よし! アリエル、よくやった!」
これで、厄介だった冷却光線という攻撃手段を失い、目の見えなくなった巨大なサイクロプスを潰すだけになった。それにほっとしたのか、マルクの表情に喜色が浮かぶ。
潰れた目を両手で覆って、顔を伏せるアイスサイクロプスに、今度はレオンとリィンが肉薄する。
「そおれっ!」
三度、リィンの巨大ハンマーを叩きつけられた頭部のその一点は、とうとう凹み、アイスサイクロプスが大きな地響きををあげて凍った床に倒れ込んだ。
頭部に損傷を受けたアイスサイクロプスは、もう動かない。
後は、リィンが動かない相手に何度もハンマーを打ちつけて、完全に頭部を潰して、想定外の敵との戦闘は終了した。
一気に緊張が解け、マルクとレティアが冷たい床に腰を下ろし、リィンはレオンにもたれかかるようにして、体を預け、ティリオンが床に脚をつける。
私は、負傷者がいないかどうか確認するために、みんなの元へ駆け寄ったのだった。
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