第123話 リリーのハイポーション作り②

 物理障壁も展開できたことだし、リリーに始めるよう促すと、リリーは、加熱器のスイッチを入れて加熱し始めた。

 ビーカーの周りに気泡ができて、小さな気泡が付き始める。鑑定さんの言葉は、私が見えたものよ。


【ハイポーション?】

 分類:薬品

 品質:低品質

 レア:B

 詳細:有効成分はほとんど抽出されていない。

 気持ち:全然だね。


「なにもでてないわ」

 もう少したつと、気泡が大きくなってきた。


【ハイポーション】

 分類:薬品

 品質:低品質++

 レア:B

 詳細:有効成分は薄い。

 気持ち:まだまだだね。


 さらに経つと、時々ポコポコし始めた。


【ハイポーション】

 分類:薬品

 品質:普通ー

 レア:B

 詳細:葉の有効成分の抽出が不十分。

 気持ち:足りないもの、わかる?


 そして沸騰前に魔道具の出力を下げてっと……。

「まりょくそうのせいぶんは、でているのよ」


【ハイポーション】

 分類:薬品

 品質:普通ー

 レア:B

 詳細:葉の有効成分の抽出はまだ可能。

 気持ち:あれ、わかるんだ?じゃあどうする?


「だから、まりょくで、やくそうのせいぶんがでるように……!」

 そう言って、リリーが魔力を流し込むと……。

 リリーの手のひらから、かなり強い金色の魔力が流れ込み、物理障壁の中でビーカーの中の物質が爆発した。


「きゃあ!」


【産業廃棄物】

 分類:ごみ

 品質:役立たず

 レア:なんとも言えない。

 詳細:捨てるしかない。

 気持ち:残念賞!


「うわあ!ゴミになったわ!うーん、いろいろとごちゃごちゃね」

 ガッカリするのかと思ったら、それはそれで、初めて見る現象に興奮するリリー。

「じゃあ、私がガラスゴミを片付けましょう」

 ケイトが申し出てくれたので、お言葉に甘えて掃除はお願いし、私はやり直すための素材を畑に取りに行く。

 そして、下処理をもう一度やって、ビーカーに栄養剤と素材のみじん切りを入れる。


 ……と、再開前に、リリーの反省会ね。

「リリー」

「はい」

 椅子に座るリリーと、しゃがみこんで目の高さを合わせる。

「まず、片付けてくれたケイトにお礼を言ったかしら?」

「あっ!」

 リリーが口元に手のひらを当てて慌てる。ストンと椅子から降りると、ケイトの傍に行って、ぺコンと頭を下げる。

「ケイト、わたしのしっぱいの、あとかたづけをしてくれて、ありがとう」

「はい、リリーお嬢様」

 ケイトが嬉しそうに笑った。

 ケイトはリリー付きの使用人だから、本来礼などいらないのかもしれないけれど、彼らも人間だ。ちゃんと感謝の心を持つことは大切だと思う。


「じゃあ、次は反省会ね。どうしてさっきは爆発しちゃったと思う?」

 そう問いかけると、リリーは自分でノートに書いたメモに目を落とす。

「まりょくが、おおすぎました。すこしキラキラするくらいでよかったのに、きんちょうして、ちからいっぱい、やっちゃったの」

「そうなのね。じゃあ、リリーは、少しづつ魔力を注ぐことは出来るかしら?」

 私に問いかけられると、リリーは、じっと自分の手のひらを見つめる。

「きをつけて、やってみます」

 私は、リリーの頭を撫でる。

「じゃあ、やり直しましょう。物理障壁はまた張りなおしてね」

「はい!」


 失敗した問題のところから……。

「すこぉしずつ、やさーしく」


【ハイポーション】

 分類:薬品

 品質:普通

 レア:B

 詳細:葉の有効成分の抽出はまだ可能。

 気持ち:お、わかってきた感じ?


「うん、やくそうから、せいぶんがでてきたわ」


【ハイポーション】

 分類:薬品

 品質:普通+

 レア:B

 詳細:葉の有効成分の抽出はまだ可能。だが一般的なものより品質はいい。

 気持ち:そうそう、無理せず焦らないでね。


「ゆっくり、ゆっくりよ……」

 リリーは、今度はゆっくりでもいいから少しづつ進めるつもりらしい。


【ハイポーション】

 分類:薬品

 品質:良品

 レア:B

 詳細:葉の有効成分の抽出はまだ可能。それでもそんじょそこらのものよりいい。

 気持ち:あとちょっと!頑張れ!


「まだ、やくそうのなかに、かくれているこがいるわ!でてらっしゃい!」


【ハイポーション】

 分類:薬品

 品質:高級品

 レア:B

 詳細:普通品質のものより2.0倍の回復量を誇る逸品。上品な甘味があって飲みやすい。

 気持ち:よく出来ました!


「やったあ!おねえさまといっしょのが、できたわ!」

「よくできたわ、リリー!合格よ!じゃあ、瓶に詰めるところまで最後までやりましょうね」

「はい!」と素直に頷いて、布で薬を漉しながら、瓶に詰めていく。


 よし、これでリリー作の三種類のポーションが完成したわ。前に作ったものは、きちんと別に分けて保管してある。

 あとは計画を実行するばかりね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る