第95話 賢者の塔攻略②

 茨の蔦でぐるぐる簀巻き状態のノーライフキングをマルクが足蹴にしたり、レティアが剣でぺちぺちしたり、相手が何も出来ないのをいいことに、とりあえず、彼を囲んで作戦会議をすることにした。

 で、まず決定したのは、哀れな犠牲者の浄化。


「冒険者さんたちは可哀想だから早く浄化してあげましょうよ」

「それはそうね」

 私がアリエルにお願いすると、アリエル含めて全員で同意してくれた。

「……私は司祭とかじゃないから魂まで救えるかは分からないけれど……どうか、安らかに眠ってね。主の憐れみをキリエエレイソン

 すると、アリエルを中心として神々しい浄化の光が広がりフロアを満たす。哀れな冒険者の成れの果ての者達は、その光に溶けるように消えていった。


 ……次は、幸せに人生を全うしてね。


 私は両手を組んで目を瞑り、彼らの安らぎを祈った。

 床には、彼らの残した装備品などが散らばっている。

「……俺、これ持って帰って冒険者ギルドに引き渡すわ。遺族が見つかれば、大切な遺品になるだろうし」

 マルクはそう言って、フロア中を駆けてマジックバッグに残された遺品をしまって回った。


「私のコレクションが!」

 浄化の様子を見て、簀巻き状態で何も出来ないノーライフキングが何とか口の拘束からは逃れて叫んだが、レティアの踵でグリグリされていた。

「ああ?この外道が。なんか文句あるのか?」

 上から見下ろすレティアがノーライフキングを睨めつける。

「はん!かと言って殺すこともできまい!いつまでこうしている気だ?」

 ノーライフキングがニヤニヤと笑って余裕を見せるので、レティアに最後にもう一蹴りくらっていた。


 ……うーん、絶対なにか仕掛けがあるはずよね?だってアンデッドが聖魔法効かないなんておかしいわ。


 私は、ノーライフキングを観察するために、少し距離を置いて全方向から彼を観察する。勿論、【鑑定】の目で。


【ノーライフキング】

 分類:魔物

 品質:ー

 レア:A

 詳細:ヴァンパイア達の王。聖属性や光攻撃、火炎攻撃に弱い。

 気持ち:早く離しやがれ!


 ……ほら、やっぱり弱点はあるのよ。そうすると装備?


 じーっとネックレスのありそうな首や手首、そして、指を見た時だった。


「あった!この指輪だわ!」

 それは、ノーライフキングの薬指にはめられた虹色の石を台座に置いた指輪だった。

「なっ!違う!それじゃない!」

 ノーライフキングが喚く。図星ね。

「もういいわ蔦さん。うるさいから口を塞いじゃって」

 再びノーライフキングの口は塞がれた。


【神々の加護の指輪】

 分類:装備品

 品質:最高品質

 レア:SSS

 詳細:物理無効化、魔法無効化(聖、闇、光、邪、火、水、土、風)

 気持ち:この外道から外してくれない?ちなみに加護は石によるものだからね!


「指輪の加護か。とんでもないものを手に入れたもんだな。で、どうやって外そうか?」

 レティアは、仲間である『冒険者たち』を冒涜したノーライフキングが気に食わないのか、まだ靴でグリグリしている。


 ……ん〜、触って抜くのもなんか嫌よね。爪とか長くて怖いし、何かされたら危ないし。


「指輪のリングの部分を『溶かしてみるわ』」

 私の発言に、ノーライフキングが目を向いてぎょっとした顔をする。

「蔦さん、上手く手のひら側を向けさせてくれるかな?」

 すると、グリグリと強引に手の向きが変えられる。

「じゃあ、行くわ」

 魔力を極狭い範囲に絞って熱を加えていく。当然、『錬金術』に対しての加護なんてないので、ノーライフキングはその熱さに喚いて暴れる。やがて、指輪の一部が熔けてコトンと床に落ちた。


 ……うん、指輪自体の効果はなくなってないわね。


不浄者消滅バニッシュ!」

 アリエルが唱えると、傲慢極まりない下劣なこの階の主であるノーライフキングは消え去った。


 指輪は水魔法で冷やして、リィンに預けることにした。修復がいるからね。


 そして、私たちは階段を上って行った。


 三十六階〜三十九階。

 バジリスクという石化毒を持つ巨大なトカゲが沢山いた。きっと、石化対策をしていないパーティーなら真っ青だろう。

「アリエルは耐性ないから、奴らからは距離を取れよ!」

 マルクの指示に従って、アリエルはトカゲ達から距離をとりながら弓で彼らの眉間を貫いてゆく。そして、そのほかのメンバーは思い思いに動く。……だって、状態異常完全無効化だからね……。


 四十階。

 コカトリスという石化毒を持った巨大なニワトリがいた。……いたけど、すぐに片付いた。


 四十一階〜四十四階。

 ワイバーンが飛んでいた。いわゆる翼竜といわれるドラゴンの亜種にあたるが、そんなに強くない(当パーティー比)。

「でもさあ、こいつらがここにいるってことはここのボスって……」

 マルクが、ワイバーンたちを撃ち落としながらぼやく。


 四十五階。

「うわっ!」

 先頭を歩いていたマルクが、フロアに上がった途端、炎が叩きつけられた!

 当然マルクは『アレ』がいる可能性を考慮していたので、すぐに体をのけぞって避けて、片手と片足に軽い火傷を負う程度で済み、その傷は私がポーションで回復する。


 対峙するのはドレイク。

 亜種で小型とはいえ、立派なドラゴンの仲間だった。

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