第66話 久々の家族の再会
マーカスにお使いに走ってもらって、実家と王室ご一家宛にしたためた手紙を届けてもらった。
するとまず、次の安息日にレームスお兄様が帰省するので、その時に家族で集まりましょうと言う話になった。
安息日当日。
マーカスは実家に顔を出すといい、ミィナは私と一緒にプレスラリア家にお供したいと言うので、一緒に帰省した。
自宅に帰ると、レームスお兄様が、私の事を今か今かと玄関で待ち構えていた。だって、まだかまだかって言いながら玄関をウロウロしているんだもの。かなりびっくりしたわ。
……え?久しぶりと言っても大袈裟じゃない?
そう告げる間も与えられず、私は玄関に入るなり駆け寄ってきたお兄様にぎゅっと抱きしめられた。
「聞いてよデイジー!君のおかげで凄いんだよ!」
割と穏やかな気性のお兄様にしては興奮度がすごい。どうしちゃったのかしら?
「えっと、お兄様、興奮してどうしたの?」
ハグをお返しして、お兄様の顔を見上げる。なんて言うか、ちょっと背が伸びた気がする……。
「魔力量だよ!デイジーが気づいたとおり、魔力を使い切って寝るっていうのちゃんとこなしてんだけどね。そのおかげで学院の入学試験の能力検査で、魔力量で前代未聞の最高値更新しちゃったんだよ、僕!それで先生たちがみんなして、将来の賢者かって大騒ぎさ!」
ありがとう!って叫んで、またお兄様にぎゅっとされた。
……ふふ。よっぽど嬉しくて言いたくて仕方なかったみたい。私もお兄様のお役に立てて嬉しいわ!
「お役に立てて嬉しいわ、お兄様!たくさんお勉強して立派な魔導師になって、お父様のお力になってね!」
「勿論さ!」
そういうと、お兄様はやっと抱きしめる腕の力を緩めて、ニコリと笑って片手を差し出す。
私はその手を取ると、仲良く手を繋いで並んで居間に移動したのだった。
居間に着くと、もう既に家族全員が揃っていた。
「あらあら、賑やかだと思ったらやっぱりレームスに捕まっていたのね」
お母様が手を繋いでやってきた私たちを見て、微笑ましげに笑みを浮かべる。
「私も来年入学だから、お兄様の結果を聞いたら、今から入学試験の結果が楽しみになってきたわ!」
ちょっと気が早いお姉様。でもなあ、単純な計算だと、お姉様の方が入学まで一年長い分、お兄様の記録をさらに上書きするんじゃないかしら……。
「デイジーの洗礼式の時は本当にどうなるかと思ったが、結局デイジーは幼くして陛下の覚えもめでたい錬金術師として既に頭角を現しつつあるし、レームスとダリアも魔導師としての将来が非常に楽しみだ。我が家の子供たちはまるで神に祝福されているようだね」
「まあまあ、貴方。確かに素晴らしい子供たちに恵まれましたけど、親バカがすぎますよ」
そう言って、お父様は久しぶりに揃った子供たちの成長ぶりに目を細めている。そしてお母様は、そんなお父様を微笑ましそうに見ていた。
「そうそう、今日集まっていただきたいって言ったのにはね、みんなにプレゼントがあるのよ!」
そう言って一人ずつ、『守護の指輪』を手渡していく。
「……これは、随分力を感じますけど……魔法具かしら?」
お姉様が真っ先にその力に反応したらしい。魔導師としての勘が一番鋭いのはお姉様なのかしら。
「はい、これは『守護の指輪』と言って、あらゆる状態異常を防ぎ、装備者の体力を徐々に回復する魔法の指輪です。ただし、内側の特殊な文字で、悪人にはその効果を発揮しないように制御しています。お父様、そして、お兄様お姉様もゆくゆくは国のために魔獣退治などの戦場に赴かれるでしょう。そしてお母様は、私の大事なお母様だから、身につけていて欲しいんです」
「ちょっと待てデイジー、あっさり説明するけれど、説明が正しければこれは国宝級じゃないのか?えっと……デイジーが作った……のか?」
お父様は話を聞いて冷や汗をかいている。そして、指輪を持つ手が震えている。それは当然かもしれない。結局私たちは値を付けなかったけれど、つけたとすれば大変な代物だ。
「とある方のご好意でいただいた守護石と銀を混ぜて、私と、師匠になってくださった方と一緒に合金にしました。そして、お姉さんのように優しくしてくださる鍛冶師の方に依頼して、指輪の形に作っていただいたものです」
私は、『精霊王様』のところは伏せて、指輪ができた経緯を説明した。
「……お父様、僕たち家族だけという訳にも……ここまでの品、まずは陛下方に献上するのが筋じゃないかと思うのですが……」
お兄様もさすがに国宝級の代物を「はい、付けて」と言われても困惑するといった様子だ。
「デイジーのことだから、そこはしっかり陛下御一家の分は確保していそうですけど。どうなの?」
お姉様はやっぱり勘がいいな。というか、私のしそうなことがわかっているのかしら?
「お姉様のご推察のとおりです。陛下には、献上したい旨をお手紙にてお伝え済みです」
そう、ちょうど今、日程を調整してもらっているところだ。
「それだったら、私たち一家が娘の好意に甘えてもいいんじゃないかしら。それにデイジーがこれを私達に身につけて欲しいと願うのは、私達を大切に思ってくれているからじゃないかしら。それに私は、ヘンリー、貴方が仕事で傷つかないかいつも不安でおりますから、貴方が、そして、将来レームスやダリアもこの指輪の加護を受けられるのでしたらとても安心ですわ。あ、デイジー、ご好意で貴重な品をくださった方や手伝ってくださった方たちにもこれを受け取っていただいたか、相応のお礼はしたんですよね?」
お母様が、お父様に向かって、身につけて欲しいことを告げてから、今度は私の方に向き直って確認を取ってくる。
「手伝ってくださった方たちにもちゃんとお渡ししていますから、大丈夫です……あ。でも、守護石をくださった方にはご好意に甘えっぱなしです……」
ふっと、あまりに精霊王様達が遊びにいらっしゃってからかっていかれるから、きちんとお礼をしていないことに気が付かなかったわ……。お母様の言葉で、初めて気づくことが出来た。
「じゃあ、その方が喜んでくださるようなお礼をしなくちゃね、デイジー」
「はい!」
私はお母様ににっこり笑って頷いた。
結局、お父様もお兄様も納得してくださって、家族みんなで同じ指輪をはめることになった。
その夜は、ミィナ特製チーズづくしなお夕飯を披露した。
あっつあつのチーズがけじゃがいもグラタン、ホロホロチーズのサラダ、まんまるチーズのスライスのトマトバジル乗せ、チーズケーキ。
家族にも大好評!
楽しくっていい夜だった!やっぱり家族は最高!
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