第27話 ワインを作ろう②

 私たちはぶどうでいっぱいになったカゴを持って自宅に帰宅した。


 三種類あるので、途中までマーカスに加えてケイトにも手伝ってもらうことにする。


 三種類のぶどうを三つの木桶にザラっと全部入れる。ちなみにぶどうは洗いません。

 洗うと水で糖度が下がって不味くなるのです。でも手は洗って綺麗にしましょう。


「まずは、茎みたいな部分を全部除いて……」

 ぶどうの粒と粒を繋いでいる部分を取り除いていく。


「結構細かい作業ですねえ」

 ケイトがボヤきながらも、黙々と作業をする。


 そして、ぶどうの粒を潰していく。


「うわ、いつ終わるんだ!」

 マーカスもブツブツ言い出す。


 周りがなにかブツブツ言ってはいるけれど、無事潰すのも終わって、次は発酵作業に入る。ちょっとケイトは休憩。彼女はちょっとほっとした様子で腰を下ろして眺めている。


 潰したぶどうの入った木桶の中に、干しぶどうを元に作った酵母液を入れていく。

(今はブラックベリーの収穫期も終わったので、他の果物で酵母液を作っている)

 ちなみに、マーカスも日々の酵母液作りで錬金発酵ができるようになったので、次の工程の発酵のお手伝いをしてもらうことにした。


 順番に魔力を送って発酵を促していく。


【ワイン???(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:低品質

 詳細:ぶどうを潰したもの。発酵は始まったばかり。酵母が頑張っている。


【ワイン???(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:低品質

 詳細:ぶどうを潰したもの。だいぶ発酵が進んできた。まだまだ頑張り中。


【ワイン???(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:低品質

 詳細:ぶどうを潰したもの。アルコール発酵が行われて、果皮からアントシアニンの色素とタンニンが果汁に移っている。


 これをあと二種類分行っていく。

 終わったら、大きな布の袋に入れてぎゅーっと絞って果皮と種子を取り除き、三つの樽に詰めた。

 次にもう一回発酵させる。


【ワイン??(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:低品質

 詳細:発酵したぶどう液。リンゴ酸が際立って酸っぱい。


【ワイン?(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:低品質

 詳細:発酵したぶどう液。リンゴ酸が乳酸に変わった。まろやかな味わい。でも物足りない。


 そして今度は錬金熟成を行う。魔力を送って、ワインを熟成させるのだ。


【ワイン?(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:普通ーーー

 詳細:発酵したぶどう液。樽の香りが少し液についてきた。熟成により風味も複雑になりつつある。


【ワイン(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:普通ーー

 詳細:作りたての若いワイン。酸味がきつい。味の複雑性はまだ少ない。


 これを、三種類分、濾して不純物を取り除きながら瓶に詰めていく。コルク栓を締めて、ちょうど三種類各二本、六本分の若いワインが出来上がった。


【ワイン(メロロー)】

 分類:食材・食べ物

 品質:普通ー

 詳細:作りたての若いワイン。単純なジュースって感じ。味の複雑性はまだ少ない。


【ワイン(ネッテオーロ)】

 分類:食材・食べ物

 品質:普通ーー

 詳細:作りたての若いワイン。タンニンがきつい。要は渋い。味の複雑性はまだ少ない。



 あとは、様子を見ながら、瓶詰めの状態でさらに錬金熟成を行っていく。

 そう、ここからが、私たちの国で飲まれているワインとは違うのだ。瓶の中で熟成させるということはあまり行われていなくて、ワインはできたものを若いうちに飲むのが一般的である。


 だけど、私が作ろうとしているワインは、瓶の中で熟成することによって、これからもっと味が複雑になっていく。


 まずは、ペノ・ロワールから。

【ワイン(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:普通ーー

 詳細:作りたての若いワイン。酸味がきつい。味の複雑性はまだ少ない。


【ワイン(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:普通

 詳細:少し落ち着いてきたワイン。まだ酸がたつ。味の複雑性がだんだんでてきた。


【ワイン(ペノ・ロワール)】

 分類:食材・食べ物

 品質:最高級品

 詳細:熟成し飲み頃のワイン。スミレの花のような香りと、ラズベリーなどの果物の香りに加え、僅かになめした革のような複雑な香りを持つ。開栓は余裕を持って早めにして、空気に触れさせると、酸味が落ち着くだろう。


 次にメロロー。これはそこまで熟成は要らなかった。


【ワイン(メロロー)】

 分類:食材・食べ物

 品質:普通ー

 詳細:作りたての若いワイン。単純なジュースって感じ。味の複雑性はまだ少ない。


【ワイン(メロロー)】

 分類:食材・食べ物

 品質:高級品

 詳細:ブラックカラントやプラムなどのよく熟した風味で、果実味豊かなワイン。万人受けし、飲みやすい。


 そして最後に、ネッテオーロ。

【ワイン(ネッテオーロ)】

 分類:食材・食べ物

 品質:普通ーー

 詳細:作りたての若いワイン。タンニンがきつい。要は渋い。味の複雑性はまだ少ない。


【ワイン(ネッテオーロ)】

 分類:食材・食べ物

 品質:普通

 詳細:少し落ち着いてきたワイン。それでも渋い。味の複雑性がだんだん出てきた。


【ワイン(ネッテオーロ)】

 分類:食材・食べ物

 品質:最高級品

 詳細:熟成し飲み頃のワイン。重厚で王者の風格を持った味わい。ベルベットのような滑らかさに力強さを秘めた、香り高く洗練された仕上がり。開栓は余裕を持って早めにして、空気に触れさせると、渋みが落ち着くだろう。


 これで三種類のワインが完成した。

「できたわ!」


 私の言葉に、マーカスは瓶を覗き込んで鑑定しては騒ぎ、ケイトはよく分からないといった顔をする。


 さあ、お父様とお母様に試飲してもらいましょう!(六歳には分からないしね)

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