第14話 回転2

「ボールはぜったい曲がりながら進んでるよね」

ラグレンが主張する。

「うん」

カルラも同意する。


「ボールはまっすぐ進んでるけど、曲がってるように見えるっていってたよね」

エレナがルラサさんの説明を思い出す。

「ここの回転が関係してるって」

地面を指さす。


「さっきの図だと、長方形の対角線をボールが進んでることになるよね」

エルネクはルラサさんが描いた長方形を両手の人差し指で描く。


「まっすぐには飛んでないよね」

エレナがいう。

「うん。だって真上に投げて下に落ちてくるんだから、向きを変える時に曲がってる」

エルネクはボールを軽く上に投げる。


「自転車からボールを真横に投げたときに、ここから見ると斜め前に進んでるように見えたけど、自転車からだと真横に進むように見えたよね。見る場所が違うと飛び方が違って見えるのかな」

自転車の方を示すエレナ。


「地面と一緒に動いているからボールは曲がって見えてるってこと?」

エルネクがエレナの方を見ていう。


「自転車の動きにあたるのはここの回転かな。絵を描いて考えた方がいいかも」

考え込むエレナ。


「タブレット持ってきてるよ」

カルラが鞄からタブレットを取り出す。

エルネクはタブレットを受け取ると、さっきルラサさんが描いたのと同じ図を描く。

まず丸を書き、中心から手前に半径の線を引く。そして円周と半径の線が重なるところに、半径の線に対し直角に交わる真横の線を引く。更に半径の真ん中あたりに中心を向いた矢印を描き、矢印の先から左の向けて横線を引く。半径の線が円周と交差するところに引いた横線と平行の線だ。


「さっきの話だと、この長方形の対角線にそってボールが進むってことだったよね」

平行に引いた二本の線に、半径の線に平行の縦線を引く。できあがった長方形に、半径と円周が交わるところから対角線を引く。


「回転が関係しているっていってたけど、それってこういうことかな」

エレナはそういうとタブレットに描いた図を指さす。

「ボールを上に投げた後、投げた方もこっちに動くよね」


「そうだね」

エルネクもタブレットを見ながらいう。


「もしかして、この対角線が円周と交わるところがボールが落ちてくるところかな」

エレナが対角線と円周が交わるところを指さす。


「この図だと、ボールを投げるところからずいぶん離れたところに落ちるね」

エレナが指さすところを見ながらカルラがいう。


「そうだよね。頭の高さまで放り投げるくらいだと、東にずれるのは5センチほどだよ」

ラグレンが指摘する。


「5センチだと、斜めじゃなくて真横に線をひくことになる」

カルラがいう。

「たしかに。横線になる」

タブレットの絵を眺める4人。


「上に投げたボールが落ちてくるまでの間に、この対角線が地面にかさなるところまで地面が動いてるんだよ」

エレナがいう。

「え?」

エルネクがエレナの方を見る。

「どういうこと?」

ラグレンがいう。


「真上にボールを投げた後、地面はこっちに動くよね」

エレナが円周に沿って回転する方向指を動かす。

「ボールを頭の高さまで放り投げて落ちてくるまでって1秒くらいかな。たぶん1秒でこの斜線が地面に重なるところまで動くんだよ」


「でも、ボールと地面が同じ方向に動くなら、ボールは同じところに落ちてくるんじゃないの?」

カルラが質問する。


「ルラサさんは、いっしょじゃないっていってた」

ラグレンがルラサさんがいってたことを思い出す。


「違うところは、斜線は直線だけど地面は曲がってることかな」

図を見ていたエルネクがいう。


「あ、そうか。いっしょに動いても距離が違えば近いほうが先に到着するんだ」

エレナはそういうと3人の方を見る。


「そうなのかも。地面の方が遠回りになるからボールよりも遅れるんだ」

エルネクも同意する。


「そのずれが5センチ?」

ラグレンが質問する。

「そうなんじゃないかな」

エルネクがこたえる。


「でも、ボールがまっすぐ飛んでるようには見えないよ」

カルラがいう。

「上に上がってこうやって落ちてくるし」

カルラはボールの軌跡を指で表す。


「ボールと同じ方向に動いているからそう見えないんだよ」

エレナが説明する。


「そうか。例えばこの対角線の真ん中、ボールがいちばん地面から離れているところがボールが頭の高さに来ているところだ。地面といっしょにぼくらもここまで動いてるからボールが上がってように見えるんだ」

エルネクも自分たちが地面と一緒に動いていることで、ボールがどう見えるかに思い当たる。


「ここがボールが一番高いところまであがったところで、その後だんだん地面に近づくのがボールが落ちてくるところ。一緒に動いている私たちから見ると、ボールが上にあがって落ちてくるように見える」

エレナが説明を引き継ぐ。


「うん。で、ボールが地面に落ちるここのところでは、ぼくらは円の形で曲線で動いていて遠回りしているからちょっと手前にいる。だからボールがこっち側にずれるんだ」

エルネクが嬉しそうに話す。


「そういうことか。なんかわかったような気がする」

カルラがいう。


「ボール貸して」

ラグレンがボールを持ってるエルネクに手を出す。

「このボールがまっすぐ動いてるなんて不思議」

ラグレンはボールを上に放り投げながらいう。


「そうだよね」

ラグレンが投げるボールが上に上がってちょっと弧を描いて落下するようすをみながらエレナもいう。


「ルラサさんがボールがずれる理由がわかったら教えてっていってたね」

エレナがさっきいわれたことを思い出す。


「たぶんこの説明で合ってると思う」

まっすぐ進んでるボールが曲がって見えるのは不思議な感じがするのは確かだけど。そんなことを考えながらエルネクがいう。

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