第10話 変な動き1
今日、4人はいつもとは違う公園に集まっている。
この街に二つある公園の内、大きいほうの公園だ。昨日まで遊んでいた森の手前の公園から見ると「まっすぐ道路」を超えた先のあたりで、ちょっと離れている。
ラグレンが一番早く到着していて、自転車を公園の芝に倒している。この公園は家からちょっと離れているので、他の3人も自転車でやってきた。
「今日はボールで遊ぼうよ」
ラグレンはボールを持ってきたようだ。自転車のかごからボールを取ると、エルネクの方に投げる。
エルネクはボールを両手で受け取るとラグレンの方に投げ返す。ボールをキャッチしたラグレンは、今度はカルラの方に投げる。
「取れなーい」
ボールはカルラの右側に飛んでいき、手が届かなったようだ。
「ちゃんと投げてよ」
転がるボールを追いかけるカルラ。
「ごめーん。こっちから投げるとまっすぐ飛んでかないんだった」
ボールを拾ったカルラはラグレンの方にボールを投げる。
ワンバウンドしたボールをキャッチしたラグレンはエルネクの方にボールを投げる。今度はまっすぐエルネクの正面に飛んでいく。
「四人だから四角の形になるのがいいんじゃないかな」
エルネクが提案する。
「そうだね。ボールはひとつだし」
ラグレンも賛成する。
4人は四角の形に広がる。
「いくよー」
そういうとエルネクは対角線上にいるカルラに向かってボールを投げる。
「こっち?」
カルラは慌ててボールのキャッチ体勢に入る。ちょっと左側にきたボールをキャッチする。
「隣に投げるのかと思ったよ」
ボールをキャッチしたカルラがエルネクに向かっていう。
「誰に投げてもいいようにしようよ」
「その方がいつボールが来るかわからないからおもしろそうだね」
エレナも同意する。
「投げるよー」
カルラはエレナの方に投げようとして、直前に体を横に向けてラグレンの方に投げる。ボールが横にそれる。
「あれ? ごめーん」
キャッチできなかったラグレンがボールを追いかける。
「だいじょうぶ」
ボールを拾ったラグレンが、対角線上のエレナの方に投げる。
左に一歩動いてボールをキャッチしたエレナがエルネクに投げる。
エルネクは右に移動してボールをキャッチすると、誰に投げようかちょっと考えてからラグレンの方に投げる。
ラグレンは体の正面でボールをキャッチすると、すぐにカルラの方に投げる。ボールはカルラの左の方に曲がる。
「また横だよ」
「あれー? おかしいな」
ラグレンが不満そうにいう。
「そこからそっちの方に投げるときはちょっと左の方に投げないとだめだよ」
エルネクがラグレンに向かっていう。
「そう。投げる方向によってボールがまっすぐ進まないから」
エレナもボールの飛びかたを説明する。
「さっきラグレンの方に投げた時、正面に投げたはずなのにこっちに曲がったよ」
カルラがラグレンの右側の方を指さす。
「ぼくがカルラに投げた時もそうだよ。ぜったいに正面に向けて投げたのに」
「うん。ボールを投げたらこっちの方に曲がるんだよ」
エルネクはそういうと曲がった方向を指さす。
「ぼくからだと、ラグレンに投げるときはまっすぐだけどエレナに投げると曲がる」
「試してみようか」
エルネクがラグレンが立っているところに移動する。
「じゃあ、カルラ、こっちにボールを投げて」
「ちょっと待って」
エレナもカルラの後ろに移動する。
「投げるよ」
カルラはそういうと、ラグレンに向かってボールを投げる。
ボールはラグレンの正面に向かうが、少しずつラグレンの右側に曲がっていく。
「ほら。まっすぐ飛んでいかない」
「こっちから見ると左の方に曲がったよ」
エレナがいう。
「今度はこっちから投げるよ」
そういうと、ラグレンがカルラの方にボールを投げる。ボールはカルラの左側、投げたほうから見ると右に曲がる。
「こっちから投げるとそっちに曲がる」
「今度はこっちに投げて」
そういうとエルネクは、さっきまでエレナがいた位置に移動する。ラグレンもエルネクについていく。
「投げるよ」
カルラがいう
「うん」
カルラがボールを投げると、今度は右にも左にも曲がらずにまっすぐ飛んで、頭の上に飛んでいく。
「まっすぐに進むね。強く投げた?」
「さっきと同じように投げたよ」
「次はこっちから投げるよ」
エルネクがカルラに向かってボールを投げる。ボールはカルラの膝のあたりに飛んでいく。
「まっすぐ飛ぶね」
「うん。さっきまでと同じ強さで投げてるのに下に落ちるのが早かったな」
「さっきの対角線で投げるとどうなるかな」
「やってみようか」
エルネクはさっきまでいた位置に移動する。
「いくよー」
カルラがエルネクにボールを投げる。
「ちょっと曲がるね」
「たぶんこっちから投げると、ちょっと左に曲がるはず」
そういうとエルネクはカルラの方にボールを投げる。カルラは右手側に来たボールをキャッチする。
「やっぱりそうだ」
「こっちのほうに曲がるね」
エルネクはボールが曲がる方向を指さす。
「そっちは”東”だね」
「ひがし?」
「うん。太陽の壁の方が"南"で、反対側の丸壁が"北"、南に向かって左の方向が東で右の方向が西っていうんだって」
「へー」
「なんで東の方に曲がるんだろう」
「風はないよね」
「うん。扇風機ないし」
「でも、ボールを地面においてもこっちのほうに転がったりしないよね」
「そうだよね」
「なんでかな」
考え込む4人。
「ちょっと早いけど、そろそろお昼にしようか」
エレナがみんなに提案する。
「そうだね」
エルネクも賛成する。
「じゃあ、昼ごはん食べてからまた集まろうか」
「時間は30分後でいいよね」
「うん。いまは11時40分だから12時10分に集合」
「じゃあまた公園で」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます