冗談半分に考えるのがおすすめ。
各部が部員集めに奔走する中、デジタルゲーム部の部長、一条は部室に戻って冷静に考えをまとめていた。
「部長、どうします!? さっき帰ったやつら急いで呼んできますか!?」
「いや……待て。むしろそれは罠だ」
はやる後輩をなだめる。
「罠?」
「5分という短い時間、部員を集めることに意識を割かせるのが目的だろう」
何人でも参加可能ということは部員数が多い部活が有利。そう考えるのが普通だろう。
しかし、泉ちゃんじゃんけんの本質は彼らが出す条件だ。その条件に上手く対策を立てないと勝ち目はない。
それに一発で勝負が決まるというヒントが引っかかる。
「ここは視点を変えてみよう。条件を自由に出せるなら、お前はどう出す?」
「そうですね……俺たちの勝ちにする、とかは反則ですかね?」
「それはあいつらが出さないと宣言した無茶な条件に該当するだろう。まあどこから無茶でどこまでが無茶じゃないのかがは判然としないが」
「た、確かに、そうですね……」
さすがにそんな反則的な条件を提示することはないだろう。何となくそんな予感がある。
「それに、あいつらは結局俺の質問に答えていない。負ける可能性があるのかについてな」
「え……ああっ!? そういえばそうっすね! その後のヒントのインパクトが大きすぎてつい忘れてました……」
「しかも、畳みかけるように人数無制限という情報を与えられたせいで、上手くあの場をやり過ごされてしまった。なかなか策士だぞ」
「結局どんな条件が出るんでしょうか? 全く予想が……」
「いや、条件自体は予想がつく」
「えっ!? ほんとですか!? さすが部長!」
後輩はお世辞でもなく本気で驚いているようだ。
「あいつら言ってただろう? 一発で勝負がつくと」
「言ってましたね」
「つまりあいこは起きずに、何かしらの形で勝敗が決まるということだ。つまり──条件はグー、チョキ、パーのいずれかを出せなくする、または出すと不利な状況になるような条件を提示するはずだ」
「な、なるほど……!」
「ここまではおそらく合っているはずだ。しかしどう考えても確実に一回で一人勝ちできる方法は存在しないように思える」
「ですよね……」
様々な可能性を検証してみる。
しかし、解答を導けない。
必ず一人勝ちできる方法がどこかに隠れているはずなのだが……。
「部長、もう時間ありません。どうします?」
部室の時計を見る。確かにもう時間がない。
「そもそもこの泉ちゃんじゃんけん、一見こちらが不利のように思えるが、じゃんけんに則った以上、取れる手段は限られてくる」
「そうっすよね、結局じゃんけんならカードゲーム部のやつらと同じ手を出せば良くないですか? 3人であらかじめグー、チョキ、パーの出す手を決めておけば……」
「そうなんだよな。結局人数のパワーゲームなのか……? だとすればあまりにも芸がないが……」
「でも、なんかこういう頭使うゲームって面白いっすよね!」
「そうだな。正直こたつよりも、どんな抜け道でカードゲーム部が勝とうとしているのかが気になって仕方ないな」
「そうっすよね!」
さすがに誰もが薄々気付いているはずだ。
この泉ちゃんじゃんけん、おそらく勝ち目はないと。
しかし、それ以上にどうやってカードゲーム部の奴らが自分たちの期待に応える、いや期待を超える何かを見せてくれるんじゃないかと思っている。
マジックの種明かしを見せてくれるような、そんな気分だ。
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